夢を見るのは何故かしら
夢を見るのは何故かしら。
くまさんに聞いたら、美味しいものをいっぱいいっぱい食べられるから、と教えてくれた。
昨日はいっぱいドーナツを食べたんだとほっぺたを、ぎゅっと両手で触ってた。
とっても美味しいドーナツだったのね、私も食べてみたかったな。
一昨日は何を食べたのと聞いたら、くまさんは首をかしげて、おぼえてないなと言った。
でも、美味しかったよと笑っていた。
夢を見るのは何故かしら。
小鳥さんに聞いたら、歌をいっぱいいっぱい歌えるから、と教えてくれた。
昨日は冬の歌を歌ったのよと、綺麗な声で歌ってくれた。
なんて素敵な歌声かしら、ひらひら雪が降る中で聞いてみたかったな。
一昨日は何を歌ったのと聞いたら、小鳥さんは首をかしげて、おぼえていないわと言った。
でも、とても歌ったわと笑っていた。
夢を見るのは何故かしら。
ねこさんに聞いたら、いっぱいいっぱいお昼寝出来るから、と教えてくれた。
昨日はお日様がよくあたる気持ちいい場所で寝てたのよと、ごろんと横になった。
きっとぽかぽかして良い場所だったのね、私もお昼寝してみたかったな。
一昨日はどこで寝ていたのと聞いたら、ねこさんは首をかしげて、おぼえてないと言った。
でも、とても気持ち良かったと笑っていた。
夢を見るのは何故かしら。
いぬさんに聞いたら、いっぱいいっぱいお散歩出来るから、と教えてくれた。
昨日はお花の匂いがする道を歩いたんだよと、鼻をクンクンさせた。
きっと綺麗な道だったのね、私も歩いてみたかったな。
一昨日はどこをお散歩したのと聞いたら、いぬさんは首をかしげて、おぼえてないよと言った。
でも、とてもお散歩したよと笑っていた。
夢を見るのは何故かしら。
お友達に聞いたら、いっぱいいっぱい遊べるから、と教えてくれた。
昨日は公園でジャングルジムに登ったよと、両手で大きな円を描いた。
きっと大きなジャングルジムだったのね、私も登ってみたかったな。
一昨日はどこで遊んだのと聞いたら、お友達は首をかしげて、覚えてないと言った。
でも、たくさん遊んだよと笑っていた。
夢を見るのは何故かしら。
おかあさんに聞いてみたら、昨日の夢をおぼえてないと言った。
夢を見てないの?と聞いたら、覚えてないだけよと笑っていた。
でも私は知ってるの、おかあさんの寝顔が笑顔だったこと。
おとうさんに聞いてみたら、夢は見ないんだよと言った。
夢を見てないのと聞いたら、何も見ないよと困ったように笑っていた。
でも私は知ってるの、楽しそうな笑い声が聞こえたこと。
夢を見るのは何故かしら。
でも、私も夢を覚えてないの。
毎朝、ねこさんといぬさんが、私の布団へ起こしに来る。
もっともっと寝ていたいのに。
お布団を被って寝たふりしても、ねこさんもいぬさんもお布団の中にもぐってきて、私の顔をペロペロするの。
おとうさんが、起きなさいと笑う声がする。
おかあさんが、ごはんよと笑う声がする。
私は、はーいと大きな声で返事をした。
ねこさんもいぬさんも、やっと起きたという顔で私を見ていた。
私がなかなか起きられないのは、きっと素敵な夢を見ているからね。
だからいつも起きられないのと言ったら、みんなは思い出したら教えてねと言った。
夢を見るのは何故かしら。
それは、素敵な人達にあいさつするためじゃないかしら。
夢からさめたら、みんなに会える。
そのためにきっと、私は、夢を見ているの。
だから、とっても、素敵な夢ね。