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第11話 Vチューバーの神から連絡が来た件

 カフェでゆめちゃんと会った後、二人はかなり仲良く話していたが、ゆめちゃんの用事があるから、ということでお別れになった。


 最後に連絡先の交換をしており、家に帰り、夜ご飯を食べている最中も詩は嬉しそうにスマホを眺めていた。同年代の初めての友達ができて嬉しかったのだろう。


「よかったな」

「うん。えへへ」


 経緯はどうあれ、ゆめちゃんには後でお礼を言っとかなければならない。


 洗い物をしていると、いつの間にか詩がリビングから消えていた。風呂入るにはまだ早いから、部屋に戻ってゆめちゃんと連絡を取り合ったりしているのかもしれない。


 手拭きで水気をきって素早くリビングの掃除機掛けをする。


 ちなみにだが、我が家で最も難易度の高い家事は掃除である。


 掃除機をかけようにも、音がうるさく配信中だと部屋に音が漏れてしまうため、詩の配信をしている時間に掃除機をかけることはできなかった。加えて、俺は学生である。日中は学校、夜は炊事や洗濯をしていると、なかなか掃除まで手が回らないのだ。


 そのため、空いた時間を見つけてササっとやるのが我が家の掃除のコツとなっている。


 いつも通り、パパっと掃除機をかけ、それでも尚落ちている髪の毛を拾ってゴミ箱に捨て、手を洗ってから自室へと戻る。勉強用のチェアに座って、ここ最近、デスクを占有するようになってしまったパソコンを立ち上げる。


 スペックがいいせいか、学校のパソコンより早く立ち上がることに感動しながら通知の溜まったメールボックスを開く。そこには、おじさんを通して送られてくる企業からの案件と、見るのも恐ろしい一通のメールが並んでいた。


 カップ麺など、食料品の販促、男性用のコスメ、ファッション、ゲーム。


 新人なのになんでこんなに来てるの? おじさんの圧力のおかげだろうか。ナイスおじさん。


 食料品はいいと思う。初めてやるにしては無難じゃなかろうか。食リポみたいなもんでしょ? 多分できる気がする。真冬の新作料理の感想を毎回500字以内で述べさせられているから。


 コスメ…………正直そこまで自信ないなぁ。女性用なら自信あるんだけど。俺、メイクとかしたことないからなぁ。女性のよりお手軽ならできる。そこは要相談だな。


 ファッション。最高。これ、タダで服貰えるんでしょ? 全力で売り上げに貢献させていただく所存です。


 ゲーム。うーん、これはなぁ。そこまでゲーム上手いわけでもないし、人気作しかやってないからな。何もせずに足を突っ込めば痛い目を見る気がする。


 うん、後でおじさんに相談してみるか。


 …………本題はメールだ。


 差出人の名前を見て、軽く戦慄した。


 この業界にそこまで詳しくない俺でも知っている名前だ。


『天満 マリア』


 通称、聖女。


 あまたいるVチューバーの中で、最も有名で、最も登録者数が多い。Vチューバーの中で唯一チャンネル登録者数400万人越えの化け物。『四天王』のさらに上、王たる存在である。


 そんなヤバい人が俺にいったい何の用…………と言いたいところだが、知らないふりができるほど鈍感でもない。


 大方、昨日の配信に関してだ。


 昨日の配信の俺のワンフレーズ。


『Vチューバーで一番の登録者数をつかみ取る!』に文句を言いたいのだろう。


「貴様ごとき若造に譲ってやるほど甘い称号じゃねぇんだよあ゛あ゛あ゛!?」 と!


 数回深呼吸し、意を決してクリック。


 メールを開いてみると、そこには読む気が失せるような長文が書かれていた。仕方なく目を通すと、予想通り、とても聖女とは思えないような字面が広がっていた。案外予想外だった。配信外じゃここまでヤンキー感丸出しなのね。


 俺はカタカタとキーボードを叩いて

『ちっす! 憧れの大先輩に声かけて頂けるとか感謝感激雨あられっす! ご指摘真摯に受け止め、これからも励んでいくっす! よろしゃーす! あ、今度コラボどうっすか!?』

的な煽りメールを返すことにする。


 まぁ、普段じゃこんな喧嘩売るような真似は絶対しないんだけどな。


 登録者数300万人越え。


 一年間でこれを達成するには並のやり方じゃ不可能だ。


 超高クオリティの配信を毎日する、ならばいけないこともないかもしれないが、高校生である俺には無理だ。成績も維持しなきゃいけないし。


 故に、爆発的に登録者数を増やすのだ。


 この焚き付けはそのための一手。くふふ、見えるわ! 将棋界の新星のごとく、この局面のその先が見えるわ! …………一手間違えたら詰みなんだけど。


 名ばかりの聖女ことマリアさんは、この喧嘩を見過ごす真似はしないだろう。おそらく、コラボ配信に乗ってきて、配信で俺をボコボコにするつもりのはずだ。…………物理的にだったらヤバい。勝ち目ない気がする。


 乗ってこなくても、餌は撒いてある。


「ま、後は様子見だな。こっちは着実に地盤を固めていかないとな」


 そう、一人で呟いて、俺は昨日の反省をするためにアーカイブを見ながらおじさんに連絡を取った。


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