#8 リコの行方
画家さんから預かったお金を持って、外に行くとアトリエの近くにいたおばさんが話していた。
「リコちゃん、彼のお母様に自立するって連絡入れてから、一切連絡がないらしいわね」
「芸術は孤独なものですわ」
「収入が入ってくるまでは連絡しないつもりなのかもしれないわね」
リコ? そういえば、マシロがそんな名前の人のこと言ってたな。最近アトリエから出てった人だって。
「あの、すみません。僕、画家様のアトリエで修業をしている者です」
「あら、何かしら?」
「リコさんという方について教えていただけませんか?」
「いいわよ。それで、何を知りたいの?」
「最近自立したと聞いたのですが、どんな方だったのでしょう?」
「んー、そうねぇ……身長はあなたと同じくらいで、綺麗な顔をしている子だったわ。男の子なんだけど、かわいい顔をしていたから、みんな彼のことは『リコちゃん』って呼んでいたわ。王様の城にリコちゃんの書いた作品が飾られているから、観てみるのはどうかしら? ごめんなさいね、あまり教えられなくて」
「いえ、ありがとうございました」
頭を下げて、画材屋へ向かった。「――芸術家人生は勝ったも同然」か。
「毎度!」
「ふぅ……話し込みすぎたな。ギリギリだ」
急いで階段を下りて、ドアの前まで向かった。
「ここに置くんだよな」
絵具を置いた。お使いが終わると、かなりギリギリだったこともあり、落ちついたからか、急に息が切れてきた。
壁にもたれて息を整える。
すると、壁の向こう側から誰かの声が聞こえた。少女だろうか。息を殺して泣いている。それと、金属の鎖がこすれ合うような、ジャラジャラとした音も。
「って、気のせいか。こんなところに誰かいるわけないし。ましてや、もう寒いこの季節に」
……呼吸も落ち着いたし、さっさと上に戻ろう。
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