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#29 あの時と一緒。

「おはようございます、ルラさん」


「ああ、うん……おはよう。ルーンは起きるの早いね」


「ええ、母がいなくなった日から……少し目が覚めるのが早くなったんです。それと……少し胸騒ぎがして。母とまた会える夢を見たんです」


「ルーンは会いたがっているのかもね。ルーンの母親に」


「――ッ⁉ そ、そうかもしれません。目を隠しているとはいえ、何をしてしまうか分かりませんから」


「へえ……」


「あの、この話……忘れてください。また寂しくなっちゃうので」


「分かった」


「お~い、二人とも! 今日は儀式なんだから、三食分置いておくよ!」


「私が住んでいたところの近くの町でも、一日中家にいるという儀式でしたから、地域差があるのではないでしょうか?」


「ふうん……じゃあ、家から出るのは辞めよう。食べようか」


 アメリさんの作った食事は、母さんの味に似ていた。懐かしい。


「あの、ルラさんってあんまり表情変わりませんよね」


「みんなから見れば、そうかもしれない。小さな頃から、驚くことも、悲しむことも、あんまりなかったから」


「羨ましいです。私は顔に出すぎだと母によく言われていましたから」


「ふうん」


 確かに、ルーンは目が隠れているのに、はっきり感情は感じ取れる。「顔に出すぎる」というせいなんだろう。


 何もしないというのは、ルーンはあまり好きじゃないらしく、本を読んでいた。だからこそ思う。アトリエにいたときはどれほど苦痛だったろうか。


 それと、画家のラングの石像を見つけて、今頃弟子たちは何をしているだろう。僕みたいにその眼で見ないと、理解できないだろうから何が起きたのか、ルーンを隠すために使っていた黒い布の裏に、白い絵の具で書いておけばよかったな。


「あのルラさん、もう一つ……いいですか?」


「何?」


「母から聞いたのですが、この国の王様は珍しいものが好きらしいので、何か珍しいものを持って行けば王様から仕事やお金がもらえるそうです」


「ふうん、珍しいものか。例えば?」


「何でもいいらしいですよ。絵画、彫刻……ずっとの昔の金貨でも」


「物好きな王様の目は節穴だよ。ラングはルーンの能力で生まれた石像に踊らされて、と認め異性をほしいままにしたくせに、今度は自分で固まった。そのラングの絵画を買って飾ってるんだから」


 物好きね……。金のある奴は、何をしても気に入ったものが手に入るんだろうな。


 そんなことを考えていると、もう夜になった。

 森の木々がざわざわと音を立てている。


「おやすみ、ルナ」


 ……返事はない。ルーンは目を閉じて布団の中にいる。布団の中に手を突っ込んで、ルーンの手を握ってみたが、初めて会った時と同様冷たかった。ピクリとも動かないその姿は、生気すら失っているように感じる。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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