#3 用事
「おぉ、ライカとルラか」
「この子たちは?」
綺麗な布を身にまとった人。この人が『画家さん』か。
「ここの子供です」
「初めまして、ルラと申します」
「ライカです! あの画家さん、お願いがあるんです!」
「こ、これ! すみませんなぁ、まだライカは――」
「いいえ、構いませんよ。それで、お願いというのは何だい?」
「あの、こいつの絵を見てくれませんか?」
「はっ⁉」
思わず声が出てしまった。急いで口を閉じて、ライカの言葉を待つが、それ以上は何も言わなかった。
「ライカ!」
画家さんは、叱りつけようとした村長を止めて、僕に向きなおった。品定めをするようにじっと僕を見る。
「ほぉ、綺麗な目だね。絵にしたらとても美しいだろう」
「あ、あの……」
「おっと、申し訳ない。そうだな……私のキャンバスを使って絵を描いてみてくれないかい? ……そういえば、今日は満月の日らしい。僕は子供が好きだから『子供と月』を描いてみてくれ。もし、良いと感じる絵を描いたら、弟子色するのはどうだろう?」
「――ッ⁉」
ただでさえ苦しいのに、お母さんが許してくれるだろうか。でも、やってみるだけなら。
「分かりました」
「ふむ……これは……う~む……」
画家さんは、唸りながら考えこんだ。
でも、全然考えている雰囲気は感じられない。考えているフリをしているように見えた。画家さんは優しいようだ。『終わりの地』生きてきた僕を、地位の高い画家さんが認めるわけがない。でも、気を遣って、考えていることを装っているみたい。
「ルラ、君のご両親は今いらっしゃるかい?」
僕は少し考えた。リングさんの家へ、野菜は届け終えたことだろう。
「はい。僕の家にいると思います」
「それなら、案内してくれないかい? 村長さん、スケッチはまた後日ということでよろしいでしょうか?」
「え、でも、今日しか空いていないと……」
「はい。少し用事が出来てしまったようです」
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