#23 孫、二人
遠くへ。遠くへ。ただひたすらに逃げる。
逃げ始めてから一週間ほど経つと、そこそこ売れている画家だというロンバートさんに出会った。静かなところで、静かに暮らしている。ただ依頼された絵画を描いている。妻だったアリサさんはもう五年ほど前に亡くなり、今は独り身。
「ふむ、二人はまだ十五歳くらいか」
「なんで分かるのですか?」
「はっはっは、人間や風景を描くのがわしの仕事じゃ。それを描くために、若い頃は随分特徴を捉える修業を積んだからのぉ」
そう言いながら、アリサさんの映っている写真立てを手に取る。
「若い頃のアリサは名家で、ここら辺じゃ幅の利かせている画商の娘じゃった。アリサの目は厳しくてのぉ……少しでも影の書き方や、人体のパーツの大きさが間違っていると、すぐに書いたものを返されたものじゃ。じゃから、わしは修行も頑張ったのじゃ」
そして、何で逃げてきたのかを尋ねた。僕は正直に話した。
「ふむ、あの画家……ラング・アルバートじゃな」
初めてあの人の名前を知った。ラング・アルバート……。
「元からわしよりも才能のある絵を描いておった。若い頃、あの物好きな王様の城に出向いて、あの画家の絵を見たことがある。ただ……画家としての矜持がわしにもある。若い頃はどうしても、わしより才能のあるラングを認めとぉなくての。ラングの絵画を飾る王様の城に出向くたび、よく目に焼き付けておったよ。進化していくラングの『最高の絵画』を。でも、ある時から、その進化は止まった。きっと、進化の限界が来たんじゃろうな」
「……その限界を超えるために、ルーンの力を使った?」
「そうじゃろうな。しかし、よく逃げてこられたの。街は人の目が多いから、大変じゃったじゃろう。ほれ、そこに座るんじゃ。日に当たっているといい。二人はわしが引き取ろうかの」
「いいんですか?」
「かわいい孫が一気に二人も増えたようなもんじゃ」
「思ったより早く見つかりましたね」
「別にいいんじゃない。街の人たちだって、さすがにここまで来れない」
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