#1 いつも通り
ティーア王国の郊外、城の近くに住んでいる人間は『終わりの地』と呼んでいる砂漠地帯に、僕は住んでいる。いや、正確に言うと……ここしか住むところがないのだ。
高い位の者は、何不自由ない環境で大切に育てられ、両親の役職をそのまま受け継いでいく。しかし、身分の低いものは城の近くへ出向くことすら許されず、作物の栽培などを延々とやらされ、奴隷のように扱われる。
こんなところに住んでいるのが僕。父は、僕が三歳の頃に王国の外へ行ったきり、帰ってこない。もう顔も覚えていない。それで、お母さんが言うには、僕には五人の弟がいたらしい。でも、みんな飢餓で死んでしまった。
――残ったのは僕とお母さんだけだ。だから、お母さんだけは死んでほしくない。
「あら、ルラはまた絵を描いているの?」
「うん。どうしたの?」
「野菜を少しとってきて欲しいの。それでお昼ご飯を作りましょう」
「分かった」
僕は壊れかけの籠を持って畑へ向かった。
絵を描くのが好きが、絵具もキャンバスもない。
指で線を書き、水をもってきてそこに濃淡をつける。お金もかからないから、小さな頃からこうやって描いてきた。
野菜をとってきて、家の中に入る。
「ありがとう、ルラ」
いつだって粗末なご飯。でも、これが最高においしいんだ。
最後まで読んでくださりありがとうございます。