なろう系主人公とは何ぞや
さて今回は、私の連載エッセイに、読者さんから「なろう主人公の定義が分からない」との、ご意見を頂きましたので、それについて考察していきたいと思います。
このご意見を読んだ時には、とっくに誰かが定義付けしていると思っていましたが、調べてみると、あら不思議。なろう系主人公についての、明確な定義は見つけられませんでした。
(/・ω・)/意外ですね。
一種の共通認識かと思っていました。
私も以前に「なろう系主人公」ついての考察エッセイは書きましたが、そのものずばり「なろう系主人公とはなんぞや」という考察はしていませんでした。
これは、完全なる片手落ち。
根本を抑えていないと、議論がとっ散らかっちゃいます。
いい機会ですので、まとめてみましょう。
毎度のことですが、今回も私の独断と偏見によって監修されておりますので、生暖かい眼差しでお付き合いください。
( ̄▽ ̄)//それでは、なろう系主人公を探す旅の始まり始まり。
① 小説家になろうで投稿されている主人公の総称ではない。
基本的なことから押さえていきましょう。
まず、「なろう系主人公」とは、「小説家になろう」に投稿されている作品の、全ての主人公に当てはまる用語ではないということです。
百万近い作品数が投稿されているフォーマットを、一括りに述べることはできません。
「なろう系主人公」とは、ある種の分類です。
では、「なろう系主人公」は、どのようなグループ分けをされているのか。
② 「なろう系主人公」とは、蔑称である。
なろう系主人公とは、分類ではありますが、同時に蔑称です。悪口です。
馬鹿にして表現するときに使われる用語です。
ここは、非常に重要な点でしょう。
分類を指す言葉でもありますが、同時にレッテル貼りの要素が強い言葉なのです。
今回はその正否については問いません。
そのような認識が強い、ということだけをおさえてください。
③ 「小説からなろう」のコンテンツから発生した主人公群の一形態。
「なろう系主人公」は、「小説家になろう」に代表される小説の投稿サイトから生み出された、独自発生の主人公像です。
なろう以前にも、似たような主人公像はあったとは思いますが、直接的な関連はないと考えます。それらの文脈からは切り離され、独自に発生、進化した形態の一つでしょう。
なろう以前はライトノベルという文化がありましたが、これとは明白に一線を画しています。
ライトノベルには出版社という第三者によるフィルターが存在しましたが、投稿サイトにはそれがありません。
このフィルターの有無も大きな影響を与えているでしょう。
④ ゲーム文化の中から生まれてきた主人公像
なろう系主人公とゲームは、切っても切り離せない存在と考えます。
なろう以前の、ライトノベル文化からの主人公像からではなく、ゲーム、しかも「ソシャゲ」の文脈から登場した主人公ではないでしょうか。
⑤ ノイズキャンセラー全開
ノイズキャンセルとはオーディオ用語ですが、お判りいただけますよね。
機器から音を流すときに、周りの雑音を排除する技術のことです。
「なろう系主人公」には、これが全開で掛けられてあります。
では雑音とは何か。
次に行きましょう。
⑥ 人間性はオミットされている。
人間性、これが雑音です。
なろう系主人公の最大の特徴は、人間性の欠如でしょう。
彼らには普通の人間が持つであろう情緒というものが、極端に廃されています。
もちろん、わざとです。
情緒はノイズに変換されるからです。
人間性は実際には雑音とは呼べませんが、その受け取り方は百人百様です。
そのような明確でないファクターは、作品への理解を難しくするのでオミットします。
「なろう系主人公」は、裏表のない分かりやすい存在でなくてはなりません。当然ですが、裏表のない人間など存在しません。
⑦ 役割に特化されている
登場人物から人間性が排除されている作品は、珍しくもありませんし、名作も数え切れません。
そのような登場人物を、ここでは「キャラ」と呼びましょう。
キャラとは人間ではなく、作品においての「役割」です。
お話の展開に必要な、狂言回しとしての存在です。それ以上でもそれ以下でもありません。
「なろう系主人公」は、この役割に特化されています。これは以前エッセイで書きました。
( ̄▽ ̄)//読んでね。
⑧ 脇役の転化である
「なろう系主人公」に、脇役という補助線を引いてやると、理解がしやすくなると思います。
彼らは主人公ですが、主人公ではありません。
本来であれば役割だけしかない脇役キャラに、スポットライトが当たっている状態が「なろう系主人公」です。
脇役ですので、特に細かい設定や人間性が搭載されておりません。
必要ないからです。
そんなものがあると、狂言回しとしての役割に支障がでますからね。
⑨ これまでの主人公像に対してのカウンターカルチャー
「リア充」という言葉が市民権を得ていますが、なろう以前の主人公たちを仮に、仮にですよ「リア充」とするのであれば、「なろう系主人公」は「陰キャ」に分類されると考えます。
リア充が世の中を仕切っているように見えるので、それに対する鬱屈や反感から生まれてきた存在ではないでしょうか。
えぐく言うと、社会的弱者(と思い込んでいる人)の心の叫びの現れなのかもしれません。
「ざまぁ」の隆盛もこの文脈から理解できるでしょう。
⑩ チートスキルは生命線
これを持っているか、いないかでも分類できるでしょう。
努力や天性の才能を磨いた結果ではなく、何かの拍子に簡単にゲットした能力を頼りに活動するのが、「なろう系主人公」でしょう。
努力や才能は、リア充や雑音に繋がります。持つ必要はありません。
⑪ 常に余裕綽々でなければならない
困難な状況に直面したとしても、苦悩したりしないのが「なろう系主人公」です。
苦悩しないのではなく、してはならないのです。
ここがポイントです。
どんな難問も、軽々と乗り越えることが求められているのです。
敵とのバトルも、いい勝負ではなく、圧勝が求められています。敗北なんてもっての外です。
「陰キャ」が「リア充」に敗れるのを見たいわけではないのです。
ヽ(`Д´)ノそんなもん、リアルで毎日みとるわ。
⑫ 分かりやすい勝利者像
「なろう系主人公」は非常にわかりやすい成功を収めなければなりません。
地位。名誉。財産。そして美しい女たち。
チートスキルでど派手に活躍して、最終的にはこれらの幾つかをゲットすることが必須です。
ほのぼのスローライフ系でも、何かしらの承認欲求を満たさなくてはなりません。
たとえば
「世に出たら世界を動かす力は持っているけど、あえて田舎で穏やかに暮らしている私。最高」
みたいなことです。
これにはプライドを満足させる効用があります。
⑬ ソシャゲとの親和性
皆さんはソシャゲをやられるでしょうか。
「艦これ」や「ウマ娘」が代表的なゲームですよね。
私も中国発のソシャゲ「原神」に大はまり致しておりまして、微課金勢ながら「雷電将軍」を三凸いたしました。( ̄▽ ̄)//(自慢)
世の中に広まったソシャゲという文化。
ソシャゲの特徴は何といっても「ガチャ」でしょう。
お金を払ってくじを引き、強い「キャラ」や「武器」「アイテム」などをゲットいたします。
課金システムによって、資金のあるユーザーは、楽をして(?)最強になれます。これは、それ以前のゲームでは見られないフォーマットです。
この視点から観察すると、「なろう系主人公」は廃課金勢のゲームユーザーに近いでしょう。
彼らは自身の周りに、物語性もなく、必然性もなく、魅力的な「キャラ」や「武器」「アイテム」を並べます。
その姿はまるでソシャゲの廃課金ユーザーのようです。
( ̄▽ ̄)//私も今月こそは「ここみん」が欲しいです。ガチャ石貯めないと。
まとめてみます。
・小説家になろうに登場する主人公の総称ではない。
・ある種の蔑称である。
・小説投稿サイトから発生した独特の文化形態。
・ゲーム文化から大きな影響を受けている。
・情緒は不要。
・裏表のない分かりやすいキャラであること。
・役割に特化している。
・脇役の逆襲。
・それまでの小説に対してのカウンターカルチャー。
・理屈不要の強大な力。
・常勝不敗。苦戦もNG。
・社会的勝利者である。
・ソシャゲから多くのインスピレーションを受けている。
これらの要素が多量に含まれている主人公が「なろう系主人公」ではないでしょうか。
以上でございます。
終わり
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ご意見、ご感想などございましたら、お気軽にどうぞ。基本的に返信いたしております。
評価、いいねなどしていただけましたら喜びます。
なろう主人公について、偉そうに書いては見たんですけど、私ってなろう小説を読まないんですよね。
いや、以前は読んでいたんですよ。
「淡海乃海」とか「転スラ」とか「破めフラ」とか。
しかし、自分で小説を投稿するようになってからは、読まなくなりましたね。偶に読者さんから紹介される作品に目を通す程度です。
読むのはなろうエッセイだけになってしまいました。
本作はそんな奴の、無責任な言い草の一つとしてお願いします。
なろう小説どころか、普通の小説も読まなくなりました。
追いかけていた小説の続きが出ても買うだけで読まない感じです。
買ったはいいけど、全く読んでいない小説が四冊ほど自宅に転がっております。
不思議なことです。
まぁ。私の連載小説が面白いだけなんですけどね。こちらは何度も読み返してます。
( ̄▽ ̄)//ニャハハ。