すごもりまおう
うむ、よく来たなワシの下僕よ。
というか2週間振りではないか。
いきなり漢坂登ってくみたいな打ち切りENDかと思われるじゃろが。まったく。
もっと頻繁にワシを映しに来い。いいな?
コホン、さてだな。
仄暗い空間でワシの美貌だけがほんのり輝いている映像であるのには、ちょっとした訳がある。
他のやつは何処に行ったかじゃと?
まあ聞け、慌てる乞食は貰いが少ないとかいう遠い国の諺もあるではないか。
でな、結論から言うと、ワシらは───
「まおーさまーーー!今日のごはんはマダラオオモグラとチャグロドロミミズですよーーー!」
…この生きにくいダンジョンの中で暮らしておるのだ…!!(悲涙)
何が悲しくて魔王であるワシが、こんな得体の知れないクソマズダンジョン飯で食い継がねばならんのだぁ!
何もかも我欲にまみれた俗物の人間たちのせいだ、うむそうに違いない…!
「魔王様、洞窟内の調査は概ね完了致しました。
12層程度の中級ダンジョンが、誰の目にもつかず放置されていたというのが、わたくしの見解ではあります。当面のねぐらとしては及第点かと。」
執事悪魔であるサイモンはこう報告してくるが、実際にいま使っている居間や寝室代わりの空洞は、決して心地いいものでは無いのだ。
当たり前じゃろ、ふかふかのベッドも何もない、ゴツゴツした岩肌に横たわって寝起きするだけだぞ?
生半可な屋外モンスターとかなら発狂しとるわ。
故に、出来るだけ早く他の集落なり探して、お風呂入ってベッドで寝たい。とてもつらい。
ちなみに食材調達はリリスが、知識豊富にして手先の器用さにちょっとだけ自信のある魔王のワシが飯炊きをしている。
不平不満なく役割分担の出来るアットホームな職場だぞ。
取り敢えず、リリスの捕獲してきたエサを調理するとしよう。
ドロミミズはダンジョンの硬い岩盤を貫通しながら地中に潜ったり、文字通り泥沼の中にいるのを好む大型の虫だから、まず体内の土を取らねばならない。
サイモンが汲んで来た地底湖の水を、魔王謹製・魔法製の土鍋のなかでぐつぐつ沸騰させて、そこにドロミミズを投げ込む。
本当は水に長時間漬け込んで泥を吐かせる方法のが臭みは取れるのだが、煮込んでワタを取る作業と一緒にやる方が手っ取り早い。
腹も減っておるしな。
調味料らしい調味料は手に入らぬので、たまたまダンジョン内にあった鉱石に塩味があったので、これを使う。
ワシは鉱物には詳しくないが、サイモンが言うには硝石の一種ではないかとの事だ。多量に摂取しなければ身体に障らぬらしいから、せめてもの味付けとして使うことにした。
オオモグラは見た目の鮮やかさが気持ち悪いんじゃが、血抜きとモツを処理して、火で炙ってやると意外と悪くない味がする。
贅沢を言っておっても仕方ないので我慢はしているが、めんどくさい下処理が多いドロミミズよりは何倍もマシなのだ。
というか、リリスが好きこのんで毎日ミミズを捕まえてくるのは何なんじゃろな…。
…顔がにやけておるぞ、へんたいめ。
まあ実際にリリスは変にツヤツヤしておるし。
あとサイモンは、吸血コウモリが洞内にいて血を分けて貰えておるらしいから、食いつなぐ分にはそれぞれ問題ないようだ。
1番幸いしているのは、さっきも言った地底湖が存在していた事じゃな。
雪山の中とはいえ、洞内は辛うじて耐えられる程度の寒さを保っている。氷ではなく水があるのは大変重宝するのだ。
魔術で水を作ることもできるが、魔術で使うマナは簡単に回復するものでも無い。常用せずに済むのは有難い事なんじゃよね。
…アウトドアライフの魔王と勘違いされてしまう前に、そろそろ次の段階に進みたいとは思わんかね?
「洞窟外の調査でございますか。程なく春を迎えて雪融けとなりますから、雪崩に気を付けながらの調査となります。まだ屋外の探索には時間が掛かるかと…」
どうやら同時並行で調査を進めていたらしい。流石はワシの右腕。
痒いところに手が届きそうでちょっと届かないのが惜しいが。
~~ ╰( ^o^)╮-。・*・:≡(#)’3`;;)・;’.、~~
「まおーさま、まおーさま」
んー、何じゃリリス。
ワシはモグラの毛皮を繋ぐ内職で忙しいんじゃけど。
「そんなのどうだっていいじゃないですか〜。それよりダンジョンの中飽きちゃいましたよ〜」
うん、しってる。
とは言えサイモンが2日ほど姿を見せない以上は、ワシらが外に出ても捗らない。
長時間飛行できる訳でもないワシらは、自宅待機している方が良いのよ。無闇に集落を探し回ってもなぁ。
「もー魔王さまったら付き合い悪いんですからぁ。それに他の種族の村なら西に行けば半日の距離にあるじゃないですかー。」
は?
いやお前、知ってたの?
「この洞窟に初めて入る前から知ってましたよー。サキュバスは生き物のエネルギーに、ビ・ン・カ・ン♡ なんですからぁ〜」
いや言えよ!ワシの辛くてせつない穴倉生活が無駄じゃったじゃろが!あとサイモンも可哀想だし!
「え〜〜?だってまおーさま、私には訊いてくれませんでしたし…食料集めてこいとしか言われませんでしたからぁ」
うぅ……この魔王、一生の不覚……!
とにかく外で頑張ってるサイモンを呼び戻す為、念話を飛ばしてみる。届くかはわからん。
『西、でございましたか。』
お、届いたか。探し回るのに必死になるのは良いが、帰りが遅いなら教えて欲しいんじゃよ。
『それは盲点でした、申し訳ございません。
山脈の更に奥地に集落があるとは…至急確認して参ります。後、半日程お待ち下さい』
うむ、わかったよ。
ようやくこの生活から解放されるのか…
作りかけの毛皮マント、どうしようかの。




