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光と色の世界N  作者: 八八十
出発と再会と腕試し
8/50

8

イースは僕らがひと月半いた村、ゼコンの村から大体3日のところにある町の近くで、僕の生まれたデポプの村の迷宮より難しくはなく、広くて冒険者同士が鉢合わせることがあまりなくて腕試しにはちょうどいいらしい。


「魔獣も出るだろうから十分に気を付けて進もうか。」


もうパレントさんのズボンを掴んで後ろに隠れるような僕ではない。

戦い方を教えてもらったのだから前に出よう。

街道を歩く。

街道から外れるとすぐに背の高い草原が広がり、風になびいて波打つ。

草原から波とは別の、草を揺らす影がこちらに向かってきている。

早速魔獣が現れた、スライムだ。

スライムが3匹茂みからこちらに向かって突進してくる。


「全部いけるかい?」


「はい!」



ホークアイを構えて迎え撃つ。

複数いるのだから投げるのは最後の1匹になった時。


スライムには核があり、その核に攻撃を当てることで核に傷をつけることでスライムは消滅する。

スライムは核を守るために液体を張り巡らせて攻撃してくるものの衝撃を吸収する。

要はいかに攻撃を核にたどり着かせるか、というところである。

魔法が使えるならば鋭くとがらせた氷や岩、風の刃や水の刃などで簡単に核を攻撃できるため、属性持ちにとっては初心者用、雑魚と呼ばれる魔獣だ。

基本、杖で殴るなど打撃系の攻撃とは相性が悪いが、スライムそのものを押しつぶせるほどの衝撃を加えられれば、核に衝撃が届きさえすれば倒せてしまう。

エクシルは挙げたような属性魔法は使えないが、持っているホークアイは打撃と斬撃を両方併せ持つ武器でありスライムとも十分渡り合えるといえる。


まずは、一匹!


鋭利な部分でスライムの核をつぶした。

すぐさま次のスライムが襲い掛かる。

ホークアイを持ち替え細い方を核目掛けて突き刺した。


2匹目!


最後の1匹は、エクシルはホークアイを投げつけ、見事に命中しスライムが爆散する。



やった、倒した!


「よくやったね。それにしてもスライムがあんなに飛び散るなんて。」


ホークアイを取りに行って、パレントさんが褒めてくれたことに自然と笑顔になった。


「もともと、スライムは襲い掛かってくるような魔獣じゃないんだけどな。何かこの先にあるのかもしれない。スライムの生態は知っているかい?」


「はい、動物の死体とか、草とか、何でも溶かして食べて生きてます。今みたく襲い掛かってくるのはあんまりないと思います。」


「そうだね、食べ物に困らないから比較的温厚な魔獣とされている。さあ、旅は始まったばかりだ。どんどん先に進もう。」


僕に対してスライムが襲ってきたんだ。

警戒を強めて右に左に、左に右に、目を走らせる。


「遅いよ。そんなんじゃイースに何時つくかわからない。索敵は私の方でもやるから早くおいで。」


気が付いたらだいぶパレントさんと離れていた。

走って追いつこうとすると、茂みから全く気配を感じさせずに魔獣が出てきた。


「そいつは!エクシル!戦うな!」


そんなこと言われても!

とりあえず構えて魔獣と対峙する。

この魔獣は一体なんだ?大きな犬みたいで毛は短く黒い。

目が赤く、中から光ってるのか目線がわからない。

ぐるぐる唸っていて、僕のことを品定めしているみたいだ。

左に行くと右にきて、右に行くと左に来る。

進行方向をふさいで通せんぼをしてくる。

こっちに向かって歩いてくる!

ゆっくり、ゆっくりとした歩調でその光る眼は僕の方から離れない。

僕も、この犬のような魔獣から目を離せなかった。

犬が僕の方に向かって吠えた、その瞬間犬を取り押さえる影がいる。

犬に馬乗りになってナイフを片手に首に突き刺そうとしたとき、パレントさんの動きが止まった。


「ん?」


犬の額をよく観察している。

次に首元。


「こいつ、飼いならされているな。」


どういうこと?


「この魔獣は、まずフレイムハウンドという犬の魔獣だ。普通こんなところにはいない。もっと西の燃える谷というところがあるんだが、そこに生息しているはずなんだ。それにこの魔獣は単純に強い。口から火を噴いたりするんだが、野生なら真っ先に火を噴いて、そのあとで牙か爪で攻撃してくるだろうに、こいつは仕掛けてこない。極めつけはこの額と首元の紋様だ。テイムされている魔獣で間違いないな。誰がこいつをエクシルに向けたのか。あの町の連中か?いや、ここまでする理由がないな。それにあの場にテイマーはいなかった。・・・。エクシル、心当たりはあるかい?」


「な、ありませ、ん。ゼコンでこんなことする人知らない、です。デポプは、どうだろう。僕が死んだって確認しに来たのかな、わかりません。」


「敬語はいいよ。しっかりとした情報交換ができないなら使わない方がいい。デポプか。こんな魔獣を従えられるほどの実力者がいるのか?それとも、無属性を皆殺しにしようとしている狂信的な属性信者、か。ユニオン、か?」


もう敬語やめよ。


「なにか思い出したの?」


「床に大穴が開いたんだが、それか?ユニオンならこれくらいのテイマーを雇うくらい訳ないな。」


そんなことで?

でもやった本人に修理させようと思ったらこういうことするかもしれない、犬は鼻が利くし。


「ん?何かつけているな。」


フレイムハウンドと地面の間に小さな犬用のバッグが挟まっている。

フレイムハウンドを立たせてバッグの中を確認して、中から紙を取り出して読んでいる。


「請求書だ・・・。ユニオンの、床を直してかかった額か。」


フレイムハウンドがお座りをしてパレントさんのことを待っている。

もう僕には従順な犬にしか見えない。


「いくら?」


「35ガルド。このバッグに入れて払えってさ。」


「払うよ。」


「エクシル、君が開けたんじゃないんだから。」


「でもこの子は払わないとずっとついてくるんでしょ?逃げたら殺せって指示されてるかもしれないし。そしたら、パレントさんこの子のこと殺すでしょ?」


パレントさんは黙って僕の話を聞いてる。

誰も死なない方法は、お金を払うことだ。


「払うよ。ほら、バッグに入れるね。」


フレイムハウンドのバッグに35ガルドを入れた。

するとフレイムハウンドは、ワン、とひと吠えして草むらに入りどこかに消えてしまった。


「まったく。盾のやつも払ってなきゃ許さないからな。」


パレントさんが、フレイムハウンドが走り去った方を向いて独り言をつぶやいている。

気を取り直して街道を進む。

また魔獣が現れた、凄い出現率。

今度は大きな猫のような魔獣で、こちらを威嚇している。

この魔獣は知ってる。


「セイヒョウか。ここら辺の魔獣にしたら上位だな。エクシル、君が一人でやって勝てるかどうかの相手だが、やってみるかい?」


「うん!」


幼馴染と3人で倒した相手を、今度は一人で立ち向かう。

パレントさんが僕から離れていく、とどういうことだろう、セイヒョウの威嚇が止まった。

こちらにただ近づいてくる。

とりあえず構えるけど、明らかに様子がおかしい、というか敵意とか戦意とか、そういうのがない。

セイヒョウがすぐ近くにいる。

足のにおいをスンスン嗅いで、僕の前に座った。

にゃーん。

なんだろう、試しに額を見てみると、あれ、なんかあるぞ。


「パレントさん。」


「うん、そのセイヒョウもどうやらテイムされているみたいだね。今日はテイムされた魔獣に良く会うね。」


フレイムハウンドは僕にお金の請求の用事だったけど、このセイヒョウの用事は何だろう。

もう一度セイヒョウの額をよく見ようとして顔を近づけると、また鼻をスンスンさせて臭いを嗅いできた。

ん?なんか覚えがあるな。


「もしかして、僕が木の下で熱を出したときにいたのって、お前?」


前足で顔を洗っている。

正解か間違いかわからないや。

もしそうだとすると、セイヒョウはデポプの誰かがテイムしたセイヒョウということ、かな。

いったい誰だろう、この子の飼い主は。


「・・・ロビン?」


にゃーん。

あたった、のかな、もしそうなら、このセイヒョウは幼馴染がテイムしていることになる。

今も襲い掛かってこないのは、もしかするともしかするかもしれない。

僕の後ろで様子を見ているパレントさんに意見を聞くことにした。


「パレントさん。」


「なんだい?」


「テイムって魔法?才能?」


「魔法と才能、両方あるよ。」


「魔法だと、属性は?」


「光でも色でも緑がそうだよ。風と声が密接に関わっているからね。あと光だと黄色が使えるかな。」


テイムされていること、ロビンという言葉に反応したことを考えても、幼馴染が僕のところによこしたと考えた方がいいかもしれない。

じゃあ、なんでついてまわってるの?こればっかりは本人に聞かないとわからないや。


「何か思い当たる節でもあるのかな?」


「うん、村を出て病気になった時に、多分いた。あとデポプの村の幼馴染の名前を言ったらにゃーんて言った。」


「そうか。じゃあこのセイヒョウはその幼馴染が君を見張らせている、と考えているのかな。どういう思惑があるにせよ、危害を加えられるようなことがなければ放っておくことだ。テイムした魔獣が死ぬと、テイマーにもそれが伝わる。そうしたらテイマーが追って襲ってくるかもね。魔獣が生きているうちは安心だ。」


「うん。そうする。」


僕らはセイヒョウの隣を通り過ぎて街道を進もうとすると、セイヒョウもついてくる。

今まで隠れていたようだけど、もう隠れて追いかけることはしないようだ。

僕たちが立ち止まるとセイヒョウも止まる、動き出すとセイヒョウも動き出す。

だから全力で走ることにした。

セイヒョウも走って追っかけてきてる。

パレントさんはセイヒョウが面白いみたいで笑って走ってる。


「このまま走れば今日の中継地まですぐ着くよ。魔獣と戦ったりして遅れた分は取り返せる。」


パレントさんが走るスピードを上げた。

速い!

修行で持久力はついたけど、そこまで速くないよ!


「まってー。」


エルフと人の子と猫のおかしなパーティがここに誕生した。

エクシル(所持金:20ガルド)

種族:人間

武器:ホークアイ

属性:(NON) ((COLORS)赤)

才能:融合(FUSION)  学習(LEARN)

覚えた技

・シールドブロウ


パレント

種族:エルフ

武器:剣 (ナイフ)

属性:?

才能:?

魔法

・リカバー


セイヒョウ

主人:ロビン?



セイヒョウ:西表山猫が由来でモデル

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