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光と色の世界N  作者: 八八十
属性と才能と追放
7/50

7

明るい感じがする。

目を開けると外が明るい。

カーテンを開けると、太陽はまだそんなに高くない。

朝だ。

パレントさんはまだ寝てる。

昨日いっぱいお酒飲んでたからな。

音を立てないようにして、素振り棒を持って部屋の外に出た。

階段の音は全然気にならなかったけど、お婆さんが言うんだから、静かに階段を降りた。


「おや、早いね。どうかしたかい?」


どうやって答えよう。


「それは、素振り棒かい?全く男の子はどうしてこうなんだろうね。行っておいで。」


文句言いながらも笑顔だった。

研ぎ屋の裏で素振りを始めた。

昨日よりも体は痛くない。

構えて、目を瞑ってパレントさんの見せてくれた基本の振りを思い出す。

目を瞑ったまま、素振り棒を振る。

昨日より地面に当たらない。

少し目を開けて素振りを続けた。


「いやあ、ここに居たか。ごめんね。寝過ごしたようだ。」


目を擦りながら伸びをして欠伸をしてる。


「だいぶ振りは良くなってるみたいだね。昨日と全然違うみたいだ。よし、素振り以外の訓練もしよう。まずは走ること、次は部分的な鍛錬。素振り棒は持ったままやろうか。」


「はい!」


本格的な修行が始まった、のかな。

やる気はいっぱい。

がんばるぞ!



息が苦しくて地面に転がる。

こんなにつらいの?

太陽は、もうあっちなんだ。

息が時々できない。



素振り以外の訓練は過酷を極めた。

パレントも走り込みに参加するなどして放ってはおかず、休む間もなく鍛錬をエクシルに課した。

夕方、ようやくその日の修行が終わる。


「よし、今日はここまで。体を拭きに宿に戻ろう。」


えー、もう少し休ませて。

手を取られて無理矢理立たされちゃった。

昨日の痛さとは違う痛みが身体中にビリビリ感じる。

水を汲んで体を拭く。

やっぱりパレントさんの大きいな。

僕のもあのくらい大きくなるかな。

夕食は昨日の食事処と同じ。

女の人に、よく来たね、って言われて抱きしめられちゃった。

パレントさんは何故か怒られてた。

今日も美味い。

喧嘩は起きなかった、というより昨日の人たちが今日はいなかった。

昨日より人が少ない。

今日はパレントさんもあまりお酒を飲まなくて、お金はパレントさんが払った。

宿に帰って、歯を磨いて寝た。



そんな日々が何日が続き、走るのが慣れてきたところで、体術と的当ての鍛錬が始まった。

何度も投げ飛ばされて、顔とかあざだらけになった。

的当ては、重くて投げられない石みたいなのを、3歩下がったあたりから的に当たるまで投げ続けた。

食事処の女の人は顔のあざに最初はビックリしてたけど、何日か経つうちに、また勲章が増えた、とか言われるようになった。

痛いよ。



何日も繰り返しているうちに素振り棒は止められるようになり、的にも当たるようになってきた。

素振りに横の払い、斬り上げ、斜めの振りおろし、など数が増えた。

あざはまだ全然あって、消えてもまた新しくできる。

そんな修行を始めてひと月が過ぎようとしていた。

素振り棒は難なく振れるようになり、だいぶ走れるようになった、と思う。

体術は目や頭ではわかっているんだけど手や足が追いつかない。

でも研ぎ屋のおじさんは成長してるって言ってくれて、嬉しかった。

村の警備をしている人が、自分の鍛錬にと修行を一緒にしてくれるようになった。


「どうする?延ばすかい。」


「ええ、あと半月滞在してもよろしいですか?」


「ああ、構わないよ。使ってるのもあんたたちだけだ。坊やも日に日に成長しているようじゃないか。半月と言わず、もっと長くてもいいんだよ?」


「そろそろ腕試しもいいかと。」


「ああ、そうかい。そうだね。」


半月、変わらず修行を続けた。

途中から的当てはホークアイに変わった。

村にある邪魔な大岩を聞いて、大岩に印をつけてホークアイを当てる練習をした。

ホークアイの威力はとんでもなく、岩が欠けるとかではなくて当たったところとその周りを粉々に砕いてしまう。

速く投げれば投げるほど、砕ける範囲が広くなる。

ホークアイは岩に当たってもびくともせず、欠けることもなかった。

研ぎ屋のおじさんは砕けた岩とホークアイを見て喜んでくれた。



今日は村を出る日。

村のみんなが僕たちを見送りに出てくれた。


「皆さん、お世話になりました。」


「腕試し、終わったら戻っておいで。」


パレントさんがみんなに挨拶をしてる。

僕は。


「それでは。」


「あの!」


僕は勇気を振り絞って、みんなに本当のことを言うことにした。

ここで、みんなに嫌われてもいい。

僕はみんなが好きだから、属性がある人だと、ずっと嘘をついていたくなかった。


「僕は!」


パレントさんはじっと僕を見てる。


「あの、えっと。」


「どうした、坊主。」


「!!僕!・・・無属性、なんです。」


なんとなく、村を追い出された時のみんなの目線と、同じになった気がした。

次の言葉が見つからない。

村の警備のおじさんが、いつもと違って大きな声を出した。


「この村でも他のところと違わず、無属性のものは歓迎しない。」


警備のおじさんが険しい顔をしている。


「だが!エクシルという者は、属性に関わらず、この村の子供であり、愛すべき者であることに変わりはない!従って、エクシルがまたこの村に戻ってくるなら、我々は歓迎する!少なくとも私は!また一緒に鍛錬をしたい。」


あ。

食事処の女の人が僕に向かって走ってきて、抱きしめてくれた。


「よく、よく話してくれたよ。あんたがどんなだろうとあたしゃ関係ないよ。あんなに美味しそうに食べてくれて、どれだけあたしらの心が和むか。食事を一緒にした周りの連中も、あんたを見て食べてるものを注文したりするんだよ?いい食べっぷりのやつに悪いやつなんかいるもんかい。また、食べにおいで!」


「ふふ、そうか坊主。よく言ってくれたな。無属性は、やはり忌み嫌われるものではある。この村でもそうだ。しかし、なかなか肝が据わってるな。俺が見込んだだけはある。ホークアイ、大事にしな。傷だらけになったら綺麗に磨いてやるからよ。」


「あった時から一味違うと思っていたよ。みんな、あんたたちの帰りを待ってるよ。」


「うん。」


「ありがとうございました。」


パレントさんと僕は、村のみんなに深くお礼のお辞儀をする。

みんな、笑顔で僕を見てくれた。

みんな、笑顔で僕らを送り出してくれる。

僕の故郷が今日、できた瞬間だった。


「じゃあ行こうか。鉄色、初級の冒険者が挑む迷宮、腕試しのイースに。」

エクシル(所持金:55ガルド)

種族:人間

武器:ホークアイ

属性:(NON) ((COLORS)赤)

才能:融合(FUSION)  学習(LEARN)

覚えた技

・シールドブロウ


パレント

種族:エルフ

武器:剣

属性:?

才能:?

魔法

・リカバー

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