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光と色の世界N  作者: 八八十
属性と才能と追放
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6

「さて、そろそろ宿に行って荷物を下ろそうか。今日から少しずつやってみよう。今日は、体も痛いだろう?」


「うん、痛いよ。」


パレントさんが倒れた木の前に立つと、何が起きたかわからないけど木が薪になってた。

パレントさんと一緒に研ぎ屋から宿に行く。

大した距離じゃない、すぐ着いた。

宿の中に入ると受付にはお爺さんが座っていた。

寝てるのか起きてるのかわからないや。


「今日泊まりかい?2人で一部屋でいいかい?今日は2部屋用意できないんだ。ベッドはもちろん2台ある部屋だよ。どうする泊まるかい?一部屋1泊5ガルドだ。飯は用意していない。すぐそこに食事処があるからな。」


カウンターの中からしわがれた声が聞こえる。

ここのカウンターは低めだ。


「ええ、お願いします。」


「何泊だい?」


「ひと月ほど。また延ばしたい時は。」


「そういう時はここに来て教えておくれ。まあ今時期なら混雑しないし大丈夫だろ。はい鍵、部屋は2階に上がってすぐの部屋だ。階段に近いから足音が響くけど、文句は受け付けないよ。」


「ありがとうございます。」


「ありがとう。」


「ん?誰かいるのかい?」


カウンターからお爺さんの顔がにゅっと近づいてきた。


「おや、こんな小さな子を連れてたのかい。気がつかなかったよ。坊や、少しうるさいが我慢しておくれよ。はあ、私に孫がいたらこのくらいかねえ。ったく、あのボンクラはどこで何をやってんだろうね。」


顔がいなくなると文句みたいな声が聞こえてきた。


「それではお婆さん、お世話になります。」


「はいよ。ごゆっくり。」


・・・お婆さんだった。

部屋に入ってリュックを置いて、ホークアイだけ肩にかけて宿の外に出る。

はやく、はやく。

研ぎ屋の裏にある広い場所に着いた。


「これは預からせてもらうよ。」


僕のホークアイが!


「さあこれだ。まずはこの棒を使って、ちゃんとした姿勢で物を振れるようにしよう。ホークアイはあくまで投擲武器だ。これは投げたら返ってこない。取りに行くまでの間に魔獣に囲まれても、棒切れでもなんでも有れば戦えるようにしないとね。体術も少し覚えよう。」


なるほど。

パレントさんから受け取った真っ直ぐな棒を受け取ると、重くて地面に落としてしまった。

棒が少し地面にめり込んでる。


「ちょっと重すぎたか。」


パレントさんは片手で軽々と重い棒を持ち上げた。


「うーん、私の持っている一番軽い素振り用の棒なんだがな。」


パレントさんが悩んでいると、研ぎ屋のおじさんがやってきた。


「子どもにそんなもん振らせるなよ。まずはこれからだろ。」


おじさんが片手に担いできた短めの棒を僕に渡してくれた。

あ、これもちょっと。


「はっはっは。そんなんじゃしばらくかかりそうだな。それは子ども用の素振り棒だ。それがまともに振れるようになるまで筋肉をつけねばならん。頑張れよ。」


「これは、どうもありがとうございます。」


ニヤニヤしながら楽しそうにおじさんが店に帰っていった。

これを振るのか。


「さて、それじゃあ私が振るから、真似をしてごらん。」


背筋を伸ばして前を見る。

左手を下、手一個分くらい離れたところに右手で棒を握る。

左手を腰?へそ?の前、そのまま棒を斜め上に先が向くようにして、これが構えか。

棒を一気に振り上げた。

左手が頭の上にある。

ビュン。

棒が風を切る音が聞こえた。

左手が胸の少し下あたりで止まってる。

またへその前に構えた。


「左手に力を入れて、右手は添えるだけで力は棒がぶれない程度。やってごらん。」


パレントさんと同じように構えて、棒を振る。

あー、棒が地面に当たっちゃった。

胸の前で止めるの凄い難しい。

よし、もう一回!


パレントはエクシルを見ていた。

自分に当てられなくとも、一度教わるだけで棒の振り方は覚えてしまっている。

筋肉こそなく棒に今は振り回されているが、簡単に基本を全て覚えてしまうだろう。

一度言うだけであとは自分でやってくれる。

何度も指導しなくてよいというのは師として楽なことはないが。

今まで様々な冒険者に教えを乞われ、見込んだ者だけに教えてきたが、エクシルは別格だ。

無駄のない綺麗な振りと謳われたパレントの振り方を完全に学習してしまっている。


「エクシル、振り方は大丈夫だが、やはり筋力がないとな。素振りでも筋力はつくが、明日からは素振りは少しにして筋力アップの修行を重点的にやろう。」


「うん。はい。」


僕は返事を改めた。

これからは師匠だ。

返事も口調も、練習しなきゃ。


「よし、今日はここまでにしよう。」


「はい。」


おじさんの店の前にやってきて、素振り棒を返そうとした。


「これがちゃんと振れるようになるまで持ってろ。何も修行の時間だけが練習時間じゃないだろ?」


「ありがとう、ございます。」


僕はおじさんにお辞儀をして、棒を両手に持ってパレントさんと二人並んで宿に帰った。


「お帰り、早かったね。体を拭くやつはこの奥にあるよ。水は外にある井戸から汲んでおくれ。使い終わったらここに戻しておいておくれ。」


「はい。」


「いい返事になったね坊や。」


僕は大人用、子ども用を、棒を横にして両手で持ちつつ、体拭き持ってカウンターに戻る。

パレントさんは僕が戻ってくると階段を先に歩いて登って、その後をついていった。


「水を汲んできてくれないかい?タオルを置いて、その桶に水を入れるんだ。」


「はい。」


大人用の桶を持って部屋を出て、宿を出て、井戸まで着くとロープを引っ張って井戸の中にあるバケツを引き上げた。

バケツを持って桶に水を入れる。

うわ、はねた。

凄い冷たい!

これで体を拭くのかと思うと気がのらない。

水をお湯にできればいいけど、僕には魔法が使えない。

火を扱うのは、赤だったっけ。

さっさと組んでパレントさんのところに戻ろう。

水をこぼさないよう、重量を増した桶をもって恐る恐る歩き、階段を一段ずつ慎重に登って部屋までやっとの思いでたどり着く。


「水、持ってきました。」


「おかえり。エクシル、言葉変えた?」


「はい。パレントさんが師匠だから、です。」


「はは、なんだか堅苦しいから無理にやらなくていいよ。さあ、体を拭いてあげるからこっちにおいで。」


水をこぼさないよう、桶をパレントさんの前に置いた。

タオルって言ってたな、布を水に浸して絞っている。

冷たそう。

上の服を脱いで待っていると、パレントさんがいきなり顔をごしごしと拭いた。

痛くて息苦しい。

びっくりして手足をばたばたさせても拭くのをやめなかった。

そういえば水に浸したはずなのにタオルが全然冷たくない。


「っぷはー。」


タオルからやっと解放された。

拭いたところを中に織り込んで、汚れてない面に変えて次は背中を拭いてくれた。

ゴシゴシと少し痛い。


「前は拭けます。」


そう言ってタオルを受け取って自分で胸やおなか、腕を拭いていく。

ズボンも脱いで下を満遍なく拭いて、子ども用の水が入っていない桶に汚れたタオルを入れた。


「よし、そういえばエクシル、服はその一着だけかい?」


「はい。リュックの中にはお金と地図だけです。」


「そうか、明日、修行用の服も買おうか。」


「はい。」


「それじゃあ、私の背中を拭いてもらうかな。」


パレントさんが服を脱いだ。

白い肌の所々傷のあとがある。

やっぱり、すごい筋肉だ。

パレントさんは自分で胸や顔、腕を拭き、僕は広い背中を渡されたタオルで拭いた。

父さんの背中を拭いた時のことを思い出す。

村を出てからまだ少ししかたってないけど、なんだかとっても昔のことのように思えた。

パレントさんの背中には傷がなく、きれいだった。

パレントさんがズボンを脱いで裸になった。

体を拭く姿は、何か神々しさを感じる。


「ん?どうした?」


「あ、いや、なんか、きれいだなって。」


「はは、そうかい。」


隠すとかいうのは全くなくて、僕の方が少し焦った。

僕のと見比べてみたけど、全然大きい。

よくあんな大きなものがパンツに入ってるな。


「あんまりそういうとこ、見ない方がいいよ。」


またばれた。

パレントさんに背を向けて、拭き終わるのを待った。


「はい、終わったよ。これを片付けてきてくれるかな?」


「はい。」


水の入った桶から下に持っていき、外の入り口から離れたところで捨てる。

外はいつの間にか真っ暗になっていた。

受付で言われた通り桶とタオルを返した。


「よし、ご飯にしよう。食事処はあっちにあるって言ってたね。」


ご飯を食べるみたいだ、お金を持って行こう。

暗い夜道をはぐれないようにパレントさんのズボンを掴んで歩く。

明るい建物を目指して歩いていると、だんだん人の声が大きく聞こえてきた。

食事処の中を覗くと結構人がいる。

男の人、女の人、20人くらいいる中に、背が低くてごつごつした男の人がいる。

あの人は確か、ドワーフの人だ。

皆装備とかそのままで食べに来ているみたいだ。

座ってるテーブルにその人の武器が立てかけてあったり、テーブルの上に置いてあったり。

僕たちに気が付いた、エプロンをした女の人が奥から出てきて、テーブルを避けながらこちらに向かって歩いてくる。


「いらっしゃい。何人だい?」


「二人です。」


「お酒は飲むかい?」


「ええ、お願いします。」


パレントさんにいろいろ聞いている。

女の人と目が合った。


「あら、ちっちゃいのがいたんだね。坊やもお酒、飲む?」


首を横に全力で振った。


「あはは、そうだね。欲しいって言われても出さないよ。さあ、入った。あそこに席に座っておくれ。」


店の中に入って言われた小さなテーブルの席に座る。

椅子が高くて足がぷらぷらする。


「はい、まずはお酒。坊やにはこの村の近くで取れた果物をすりおろしたものだよ。料理はどうする?」


パレントさんがおすすめとかを聞いて注文していく。

特に好き嫌いはないけど、初めて聞く料理ばっかりだ。

子供が食べられるものをと注文してくれた。

料理が運ばれてくる。

そう言えばスープを飲んだっきり何も食べてないや。


「冷めないうちに食べようか。」


ひとつの皿の上に野菜とかよくわからないものが乗っていて、フォークを料理に突き刺して知らない料理を恐る恐る食べる。

うまい!

大きな口を開けてフォークに刺さったものを全部が口の中に入れた。

口の中が美味い味で一杯になる。

皿の上に乗っているものを次から次に口に放り込んだ。


「はは、そんなに慌てて食べると喉に詰まるよ。」


口の中がいっぱいで喋れないけど、しょうがない。

パレントさんはお酒を片手に少しずつ食べてる。

お皿の中が少なくなってきた頃、ほかのテーブルで喧嘩が起きた。


「おい、今背中に当たっただろ!料理がこぼれちまったじゃないか!」


「なんだよ、言いがかりだろ。俺は背中に当たってないぞ。」


がやがやとうるさくなった。

みんな喧嘩の方を見てる。

パレントさんもだ。

僕も怖いけど少し見てみる、というか向きが喧嘩の方だから嫌でも見えちゃう。


「てめーやんのかこら!」


「ああ上等だこのやろう!」


「喧嘩なら外でやんな!」


エプロンの女の人が喧嘩してる人たちに言った。

勇気あるー。


「表出ろ・・・。」


女の人の言うことは聞くんだ。

テーブルに座ってた人たちが立ち上がる。

4人対4人みたいだ。

武器を片手にみんな外に出ていっちゃった。


「お酒が入ると、なぜ人は無意味な争いをするんだろうね。」


口の中から美味しい味がなくなったから、皿からまた口の中に入れた。


「エクシルはこんな状況でも食べられるなんて、中々大物だね。」


「けんかじゃお腹いっぱいにならない、です。」


「はは、そうだね!」


「おや坊や、聞こえたよ。なかなかいいこと言うじゃないか。全く困ったもんだよ。これ、居なくなった奴らの料理なんだけど、食べるかい?」


「うん!あ、はい。」


「美味しいかい?」


「これ美味しいよ。」


女の人はにっこりして持ってた料理を僕の前に置いてくれた。

パレントさんにはお酒が4本くらい目の前に置かれてる。


「お代はあいつらからもらっとくよ。」


「得したね。でもこれは。飲めるかな。」


流石のパレントさんも苦笑してる。

外の方でキンキン音がするけど、目の前の美味しい料理に音のことなんかどうでも良くなった。

どの料理もすごく美味しい。

どれだけ食べただろう。

もうお腹いっぱいで動けない。


「食べすぎたかも。」


「そうかいー?夜はこれからさ!」


パレントさんがおかしい。


「ははは、いい食べっぷり、飲みっぷりだったね。今日はこれでやめときな。」


「うん!美味しかった!」


「そんなに喜んでくれるなんてね。奥にも伝えておくよ。どれくらいこの村にいるんだい?」


パレントさんを見たけど、なんか答えられそうにない。


「ひと月?僕の修行が終わるまで?」


「そうかい。また食べにおいで。そこの酔っ払いの美男子も連れておいで。・・・坊や、お代は払えるかい?」


「えっと、どのくらい?」


「15ガルドだよ。払えるかい?」


「これ。」


「まあ、なんて大金なんで持ってるんだい?この場はもらっておくけど、次来た時このエルフに言っておくからね。よくできた坊やだよ。」


女の人が抱きしめてくれた。


「大変だろうけど、このエルフを連れていっておくれ。またおいで!明日!絶対だよ!」


ふらふらしてるパレントさんの手を引いてお店を出て、女の人が入り口まで来てくれた。

外で喧嘩してた人達は寝っ転がってる。

これ、決着つかなかったってこと?

大人の人たちを避けながら宿まで帰って、パレントさんをベッドまで連れてくるとそのまま倒れ込んで寝ちゃった。

今日は疲れたな。

歯を磨いて僕も寝よう。

エクシル(所持金:55ガルド)

属性:(NON) ((COLORS)赤)

才能:融合(FUSION)  学習(LEARN)

覚えた技

・シールドブロウ



この作品の酒飲みはどんなに飲んでも二日酔いはない羨ましい種族です

また飲んだ後はよく寝るタイプです

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