16
宿について、リュックの前で装備を取った。
僕を守ってくれた大切なもの、ありがとうと言って、リュックにしまう。
「これも。」
パレントさんがプレートを渡してくれた。
銅色、昇格したんだな。
「それと、ほら、今日の活躍。」
お金がジャラジャラ出てくる。
僕もこういうの欲しいな。
リュックに入れっぱなしだから、せめて財布が欲しい。
数えないでそのままリュックに詰め込んだ。
待てよ、今日は支払いをする気がする。
20ガルドを数えてポケットにしまった。
昨日のお店でみんなと食事、楽しみだな。
パレントさんと昨日のお店に向かうと、外に人が並んでる。
これじゃあいつまで経っても入れな。
「ああ、お待ちしておりました。どうぞ、皆さんお待ちですよ。」
パレントさんを見上げると。
「ちょっとね、ここにお願いしたんだ。」
あの服を着た女の人に連れられて中に入る。
「おーい、こっちだ!」
店の中がごった返して声が波のように僕の耳の中に入ってくる。
かろうじて聞こえたロビンの声に顔を向けるとみんな座ってる。
リタさんもいる、派手じゃない服も持ってたんだ。
「おーい!こっちにも肉追加だ!」
「これうめーな!」
みんな何食べてるんだろ?
「それじゃあ始めてもらえますか?」
「かしこまりました。」
女の人がお辞儀をして離れていく。
女の人が奥に消えると、あのデカい人がこっちに向かって歩いてくる。
相変わらず怖い。
「坊主、お前が倒したクルーエルホルンの肉を使ってこれから料理をする。何か希望はあるか?」
「僕、じゃなくて、僕たち。ここにいるみんなで倒した。おじさんの料理うまいから、なんでも。昨日のも食べたい。」
「ふふ、そうか。じゃあこちらに任せてもらおう。」
笑顔はいいんだよなぁ、笑顔は。
料理もきっとうまいのがくる。
ん?なにか視線を感じる。
「おい、坊主。昨日も隣に座ったんだが覚えてないか?まあ仕方ねえや。また何頼んだか教えてくれよ。」
「えっと、お任せ?」
「なんだよ、それじゃわかんねーじゃんよ。おいねーちゃん、ここのテーブルで1番美味いやつを俺らにもくれよ。」
「それはできません。」
「はあ?なんだと?!」
「今日の肉料理はこちらの方々が用意されたものですので1番の料理はこちらにお出しすることになっています。」
1番、やったね。
2番とか3番とかもあるのかな。
「ん?取ってきたってのはそれはさっきここで話してたな。」
「ですので、2番目3番目でしたらご用意できますが、いかがいたしますか?」
あるんだ。
「なんだよ、そういうことなら構わねーよ。しかし、美味しいものにありつけるなんて昨日に続いて運がいいぜ!こりゃ金の貯まる迷宮に・・・。」
おじさんがテーブルに向き直って何か話してる。
「ところで何故ここにリタがいるんだい?」
「お呼ばれしたのよ?」
「誰に?」
リタさんが僕を指さす。
え?僕?
「うん良いよ、て言ったじゃない。」
あー、あれってこのこと?だったの?
「あの言葉はここのことだったのか。」
「そうよ。これから苦楽を共にするんだから、食事も一緒でも何も悪くないわ、そうよね?エクシル。」
なんかこっちきた。
もうなんでもいいや。
「うん、いいよ。妹のこともあるし。」
「わっかるー。さすがはエクシルね。」
はいはい。
あ、料理きた!
「お待たせしました。お任せ、です。」
肉だ。
「肉だ!」
「お肉!」
「肉よ!」
「ははは、感想がそれだけかな。自分たちが狩った魔獣だ。遠慮なく食べると良い。」
ナイフとフォークで、うわ、ナイフいらない。
フォーク刺しただけなのに、簡単に肉がほぐれる、切れる。
口に入れると。
「やばい。」
「やばいな。」
「うん、やばい。」
「やばいって何よ。」
リタさんが笑ってる。
次から次へと料理が運ばれてきて、食べられそうになかった皿の量だったのに、気がついたらない。
全部食べてしまった。
「はあー、こんなに食べたの初めて。太っちゃうわぁ。」
リタさんはお腹をぽんぽん叩いてる。
リタさんだけじゃなくロビンもセシリアも、同じようにお腹ぽんぽんしてる。
「よく食べましたね。私もここまで美味しい料理は久しぶりです。燃える谷にここまでの料理はありませんね。これはこれで良い経験ができました。」
ここの料理、美味しいよね。
パドレさんも気に入ったみたいでよかった。
「エクシル君が最高の調味料ですね。年甲斐もなく食べ過ぎてしまいました。」
僕が食べられたみたいだ。
あ、デカい人がこっちにきた。
「どうだ。」
「全部、美味しかった。」
「ああ、厨房からここが見えるからな。楽しめたか?」
「うん!」
「ありがとうございました。こんなにたくさんの料理を振る舞っていただきまして。」
「礼はいい、ちゃんと、これ、落としていってくれればな、がはは。」
親指と人差し指で丸作ってた。
あれ、パレントさんとパドレさんが真剣な顔になってる。
「さて、会計だが。」
「私はこの祝杯に呼ばれましたので。料料理長もおっしゃっていた通り、エクシル君が取ったものですから。」
大人の醜い争いってやつかな。
「醜いわね。」
「ああ、大人ならバンと出せばいいのに。」
「ふうー、あ、お皿に少し残ってる。食べちゃおー。」
誰が肉を取ったから、誰がここに運んだ、誰がこの店に決めた、ときて、お酒の量で争ってる。
「ならば仕方ありません。どちらが多くのお酒を嗜めることができるのか、勝負です!」
「望むところだ!パドレ!」
あ、昨日の女の人!
「あの!」
「はい、あ、昨日の。」
「あの、今会計、してもいいですか?」
「あのお酒とは別で?」
「うん。」
「ちょっと待っててね。」
女の人、お願い!帰ってきた!
「大丈夫よ。お代は全員で20ガルドよ。今そこで飲んでるお酒とは別になってるわ。」
危なかった。
持ってた。
「はい、これ。」
「こんな大金持ってたの?!」
「うん。師匠、あんな感じだから。」
「あらあら。それじゃあちょうど、貰っていくわね。」
それにしても、大人はまったく。
「大丈夫かよ、エクシル。」
「うん、どうにかなった。」
「ま、まあ、男の子だし、お呼ばれしたしぃ。」
「エクシルにお金払ってもらっちゃった。」
普通こんな大金持ってないよね。
「はい、お釣り。」
あれ?お釣り?さっきの女の人だ。
「お釣り?」
「そう、お釣り。はい5ガルド。足りない分はそちらからって、料理長がね。」
厨房の奥から腕が伸びてきて、親指が上に立ってる。
「ほらね。大丈夫よ。受け取ってちょうだい。」
本当にいいのかな?うわ、手を掴まれて無理やりお金入れられた。
「ありがとう。」
「いえいえ。」
笑顔で仕事に戻った女の人、カッコいい。
それで、セシリアとリタさんは何をしてるんだろう。
働いてる女の人の、服を見てるのかな?
よくわかんないや。
「酔っ払いは放っておいて出ようぜ。疲れちった。宿に戻って寝よーぜ。ふあぁ。」
ロビンが大きな欠伸をしてる。
僕も疲れたな、今日はぐっすり眠れそう。
師匠たちは、なんか盛り上がってるから声かけるのいいや、やめとこ。
「ありがとうごさいました。お連れさまには宿に戻ったと伝えておきますね。」
うちの師匠が本当に迷惑を。
「はい。」
「それじゃー俺らはこっちな。また明日なー。あ、どこで待ち合わせるか決めてない。とりあえずユニオンでいいか。時間は昼でいいだろ。どうせパドレさん起きないし。」
それはパレントさんも一緒だよ。
「うん。わかった。」
「それじゃ、おやすみー。」
欠伸をしながら言ったロビンのおやすみが、なんだかとても懐かしく聞こえた。
「じゃあね。また明日。」
「うん。おやすみなさい。」
3人が見えなくなるまで手を振った。
ひとりぼっち、だけど村を追い出された時とは全然違う。
ひと月前はこうなるなんて思ってもなかった。
村にいた時以上に、友達が増えた。
友達、なのかな。
みんながいなくならないようにするには、僕は何をしたらいいだろう。
今日みたくお金出す?
そんなの友達じゃない気がする。
わかんないや。
でも、僕のせいでみんなが辛い思いをするのなら、僕はみんなの前からいなくならないと、いけない、かな。
少し寂しくなってきた。
帰って寝てしまおう。
パレントさんを待たずにベッドに倒れ込むようにして寝てしまった。
エクシル(所持金:54ガルド700ジルバ)
種族:人間
武器:ホークアイ
属性:無 (光黄、色赤)
才能:融合、学習
覚えた技
・シールドブロウ ・サジタリウス
ロビン
種族:人間
武器:弓、ナイフ
属性:光黄
才能:射撃
絶技:サジタリウス
従属:セイヒョウ
魔法
・スピードアップ
セシリア
種族:人間
武器:杖
属性:光青
才能:叡智
絶技:?
魔法
・リカバー ・アクアアーマー ・アイシクル ・ウォータースラッシュ
リタ
種族:人間
武器:杖
属性:?
才能:?
絶技:?
魔法
・リカバー ・ハイ=リカバー ・生命力を残す魔法




