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「さあ、早速イースに行く準備をするよ。まずはユニオンだ。」
え、ユニオンに行くの?
「ユニオンに行ってクエストを受けなければ入れないんだ。プレートの説明をしたときにも話したと思うけど、迷宮はユニオンが管理している。入る人、戻る人をちゃんと把握するためさ。ちなみに、イースのクエストを達成するとプレートが鉄から銅に変わる。」
「・・・プレート出すの?」
「ああ。私も一緒にクエストを受けるから、大丈夫だとは思うけどね。」
心配。
また大きな声で無属性って言われたら嫌だな。
「あんまり言いたくなかったけど、無属性でもユニオンに登録できただろ?必要な素材など取りに行くのに、無属性の人が行ったりするんだ。奴隷としてね。自分たちが直接危険な目に遭わなくてもいい。無属性だから死んでも構わない。前回のユニオンでは町自体に無属性の人が入ること自体許されなかったけど、他の町では奴隷として普通に町にいるところもあるんだ。迷宮近くのところではほぼ、無属性の人がいると言っていい。だからこの町にも無属性の人はいる。」
奴隷か。
僕もパレントさんを会ってなきゃ奴隷だったかな。
「デポプの村はユニオンが無かった。」
「あそこはね、ユニオンから特に危険性は無いって判断されたところだからね。デポプのように枯れた迷宮はいくらでもある。そのうち迷宮自体が消滅してしまうのさ。詳しい理由はユニオンで探ってるみたいだけどね。」
そうなんだ。
デポプは迷宮から出るものを村の特産品として売ってた。
それもそのうちできなくなるのか。
「さあ、ユニオンに行くよ。そういえば練習着しかないか。装備は、どうしようか。」
「迷宮の魔獣、強いの?」
「街道の魔獣よりは強い。ちゃんと揃えないとだめだな。」
とりあえず練習着に着替えて、ホークアイを担いでみた。
兜?胸当て?胴?脛あて?
「まずは靴だな。」
「靴?」
「ぼろぼろだ。ちゃんと足に合ったものを履かないとうまく立ち回れないからね。どんな良い装備でも動けなきゃ終わりだ。」
それはそうだ。
この靴好きなんだけどな。
幼馴染たちといろんなところに行って、川に落ちたり、獣のフンを踏んだり、楽しい思い出がある靴。
でも・・・。
「靴はどこにあるの?」
「装備品の商店はユニオンの近くに店を構えていることが多いかな。冒険者が集まるからね。」
行こう。
新しい僕を始めるんだ。
「見に行きたい。」
パレントさんが僕の顔を見てる。
いつものような優しい顔じゃなくて、なんかこう、珍しいものを見る感じ。
「よし、行くぞ。」
宿を出ると、朝日を浴びた町が光って見えた。
綺麗に並んだ家、馬車が作った車輪の跡がくっきり残る石畳の道があって、全然違う町に見える。
僕たちは車輪の跡をなぞるように道を歩いて、古い石造りの建物、ユニオン前までやってきた。
ユニオンの隣に武器を店先に置いてるお店、防具のお店、道具、回復薬、中に入らないと何が売ってるかわからない怪しいお店、いろいろ並んでる。
「あそこの道具屋を見てみよう。」
パレントさんの指の先には赤い屋根の二階建ての家で、1階のドアが開いてていつでも中に入れるようにしてある。
中に入ると、いっぱいの物が棚いっぱいに並んでた。
「うわあ。」
物が多すぎて思わず声が出る。
この中から靴を探すの?
「いらっしゃい。こんな朝早くにお客さんかね。」
お婆さんが奥から出てきた。
今度は間違えてない、はず。
「靴を探しているのですが。」
「はいはい、こっちだよ。ぼく、ついておいで。」
お婆さんの後ろについていくと、靴がまたすごい量が置いてあった。
あれ、そういえばなんで僕の靴って分かったんだろう。
「ボロボロだね。この靴はぼくと出会えて良かったんだろうね。思い出もいっぱいだろう。さて、ぼくに合う靴は、ちょっと今履いている靴を脱いで見せてくれないかい?」
「うん。」
脱いで渡した。
床が石でひんやりと冷たい。
なるべく床にあたらないように指とか浮かせてみる。
「ほうほう、ぼくは、8歳くらいかな?武器は剣とか、振るやつかね。よく体も動かして走り回るようだね。体術もそれなりに学んでいる。なかなか筋の良さそうな冒険者の靴だねえ。」
なんで靴だけでそんなわかるの?!
「ふふふ、私が持っている秘密の才能だよ。ぼくに合う靴はこれだね。履いてみたら大きいか小さいか、教えておくれ。」
すごい才能だ。
見ただけでわかるなんて。
渡された柔らかい皮の靴を履いてみると、ピッタリ足に合った。
ここまでくるとなんだか怖い。
「ほら、そこのエルフ。道具は勝手に触るんじゃないよ。」
パレントさんが怒られてる、新鮮。
「ピッタリだよ。」
「おやそうかい。ぼくなら、ピッタリで大丈夫だね。それを買うなら、この運動靴はここで処分させてもらおうか?」
どうしよう。
「・・・うん。」
「まあそんな顔しなさんな。その新しい靴と、新しくまた思い出を重ねればいいんだよ。この靴がぼくにしてくれたようにね。」
新しい思い出・・・。
「この靴、どうやってここ結ぶの?」
「おやおや、ズボンの上になるように、この穴にこうやって通して、真ん中で重なるように通して、できたよ。紐はこうやって後ろで結ぶといいよ。」
「うん、でもなんで後ろに結ぶの?」
「ぼくは、脛当てをするだろうからね。結び目が前にあったら脛当ての邪魔になるよ。脛当ても足に直につけるんじゃなくて、こうやってなるべく厚手にしといた方が衝撃も吸収してくれるよ。さあお代は500ジルバだよ。」
そうなの?
脛当てをつけてみたいな。
500ジルバだから、1ガルドを渡せばお釣りは500ジルバだ。
「脛当ては隣の防具家に行くと良い。ぼくくらいの子の装備も扱ってるからね。」
「ありがとう。」
お婆さんと一緒に店の奥から戻ってきて、靴を見たパレントさんは、靴を茶化したりとかしなくて、何か他のことを靴を見ながら考えているみたいだった。
「またおいで、その時にまた、思い出を見せておくれ。待っているよ。はい、お釣り。」
お釣りをもらって店を出た。
「こっちだって。」
僕は防具家を指さす。
「そこは、大丈夫かな。」
「なんで?」
「偏屈なんだよね、そこのオヤジ。まあ、エクシルが言うなら入ってみようか。」
偏屈って、頑固とか?
でもお婆さん言う通りに言ってみよう。
ここもドアが開いてて中に入る感じのお店だ。
中は、すごい鉄の匂い、慣れない。
奥でカンカン音がする。
「おう、なんだ坊主。ここは遊び場じゃないぞ?」
「この子の防具を見にきました。」
パレントさんが大きな声を出した。
「客か。」
座ってカンカンしてたのをやめて、立ち上がってこっちに歩いてくる。
背が低い。
この人はあれだ、ドワーフだ。
「イースに行くのか?」
「ええ。」
「坊主、その背負ってるのはなんだ?見慣れないな。」
「投げたり振ったりする。」
「ほほう、そうか。この仕上がりは、ゼコンのオヤジか?」
それだけでわかるの?
「うん。おじさんから貰った。」
「そうか。なら、ちょっと待ってろよ。」
ドワーフの人がお店の奥に行っちゃった。
なかなか帰ってこない。
「この胸当て、重い金属のはずなのに軽くて良いね。良い仕事をしてるってやつだ。前来た時は門前払いだったんだけどな。」
パレントさんが門前払い?
ドワーフの人はパレントさんのこと知らないのかな?
それともそんなに有名人じゃない?
「おし、これだな。坊主、つけてみろ。この胸当ては心臓のとこを守るのに特化して他はあまり強い素材で作ってない。動きやすさに重点を置いてるもんだ。兜はつけないんだろ?パレント。」
え?知ってる?
「ええ、よく分かりましたね。」
「そうだよな。この武器なら機動力が重要だ。投げたら取りに行かなきゃならんし、トロトロしてたらバッサリやられるだろうしな。遠距離相手でも戦えるようにしたらこれが一番だ。あと脛当てだが、隣のババアのだろ?これ。」
「うん。」
「あのババアもまだ見る目だけはあんな。この脛当ても軽くて動きやすいがその分脛に衝撃が響きやすい。それを補うのがこの靴だ。これらが合わさることでより防御力が高まるってもんよ。」
そうなの?
確かに軽くてつけてる感じがあまりしない。
つま先当て?みたいなのもつけてくれた。
「あとこのグラブだ。緊張で手に汗をかいたり、手が濡れたりすると投げるのに不利になるだろう。付けていけ。あとその武器にグリップもつけるぞ。」
ホークアイが持っていかれた。
布かな?包帯みたいな布をいつも持っているところに巻きつけてる。
「これでよし。持ってみろ。」
グラブをつけてっと。
おー、確かに滑らない。
走ったあとに持つとツルツル滑ってうまく投げられなかったんだ。
早く投げてみたい。
「持ちやすいよ。」
「そうだろう。坊主、これで装備は終わりだ。」
「お金は?」
「そうだな。全部込みで800ジルバだな。」
ドワーフの人に1ガルド渡す。
「ほら、お釣りだ。坊主が出すなんて偉いな。てっきりそこのエルフが払うもんだと思ってたぞ。」
「自分の装備ですからね、自分で買わないと。」
「んー、そうかぁ?まあいいか。いろんな師弟関係には様々な形があるしな。クエストをこなしていけばお金も手に入るだろうから、頑張れよ。」
「うん。ありがとう。」
防具屋から出た。
パレントさんの言うような偏屈な感じは全くしなかったな。
「あまり時間はかからなかったね。ユニオンに行ってクエストを受けようか。」
緊張してきた。
もう入り口に何人か入っていくのが見えた。
続いて僕らも、ユニオンに足を踏み入れた。
エクシル(所持金:18ガルド700ジルバ)
種族:人間
武器:ホークアイ
属性:無 (色赤)
才能:融合、学習
覚えた技
・シールドブロウ
パレント
種族:エルフ
武器:剣 (ナイフ)
属性:?
才能:?
魔法
・リカバー




