1
僕のいるこの世界は、8歳になったら、どこの村や街にもいる「光」と「色」を鑑定する人に、自分のことを見てもらうことになっている。
まず光と色のどちらかに1年かけて選ばれ、7種類ある属性から選ばれるには7年の月日がかかり、8歳で完成、鑑定を行うこととなっているためだ。
今年、僕の村では僕を含めて3人、鑑定人に見てもらう。
「まずは、君か。大きくなったな。」
魔獣が蔓延るこの世界は、赤ちゃんは特に襲われやすく、奴らも狙って襲ってくるので8歳まで育てるのにいくつもの危険を掻い潜ってこなければならない。
でも別に、幸運だから、というわけでは無い。
この村だから、ということだ。
もっと大きな町や城下町は、魔獣に対する警備がしっかりしていて、赤ちゃんを連れて外に出なければ襲われることなんてありえない。
城の中でなんて、もっと安全、とも言い切れないけど、人攫いがあるし。
でも、そんな大きなところに比べ、ここは郊外の魔獣にいつも脅かされている小さな村。
そんな村で8歳まで育てるのは大変だ。
「君は、光の黄色だね。」
この世界は、魔法とその魔法の属性というのがある。
魔法属性は、光の三原色と、色の三原色からなっていて、光の三原色は青・赤・緑、色は空・紫・黄色。
今の子は光で赤と緑の中間ということだ。
色が交わるところにいるから、何でも有利というわけじゃ無い。
例えば赤の人は火とかそういうのを扱うのが得意で、黄色の人も赤の人と同じような魔法が使える。
でも極めるとなると話は別で、赤の人は火の魔法を極限まで使えるけど、黄色の人はそこまで使えない。
でもその代わり緑の魔法、風とかになるけど、を使える。
光と色で何が違うかだけど、光は回復魔法とか支援とかが得意で、色は攻撃が大得意。
でも両方とも攻撃が全く使えないというわけじゃ無い。
光の人と、色の人で、同じ攻撃魔法を使ったら、例えば土の塊をぶつける時、光は一つ、色は複数とか、大きい、小さいとか。
逆に、光の人の回復は致命傷も治せるけど、色の人はかすり傷まで、とか。
色が全部交わるところ、光は白、色は黒。
この人たちは特別で、どんな魔法も使えて、どんな魔法も極められる、とても稀少で価値のある人だ。
「黄色は狩人などに向いているだろう。大勢と組んでも支援で皆を助けられるだろう。重宝されるぞ。良かったな。それと、才能だが、「射撃」か。はは、正にだな。」
そう、この世界にはもう一つ、重要なものがある。
才能、生まれつきその人が持つ能力。
この才能をこの場で聞いて、才能を成長させる、才能から自分の天職を見つけて伸ばすことに、人は人生を費やす。
よくわからない才能だと、落ちぶれてしまったり、せっかくの稀少属性でも才能が使えないと判断されると、世の中から見捨てられる。
彼、僕の男の幼馴染はいわゆる「使える人」のようだ。
「次は、お嬢ちゃん。君も光で、青だな。回復が非常に得意だな。才能は、「叡智」!!こ、この村から叡智を持つものが出るとは!お嬢ちゃんは聖女と呼ばれる人になりうるかもしれん。」
鑑定のときは、親もその様子を見にくる。
この村は小さいので村総出で、鑑定の様子をみて、良い結果だと皆で喜び合う。
もう一人の女の幼馴染は、相当凄いのだろう。
「さあ最後に君だ。君は・・・ん?なんだ?・・・。まさかこれは・・・。才能は「融合」?と「学習」。やはりな・・・。学者なら欲しい才能だが・・・。才能が二つ以上であることは確定だ。この子には属性が無い。」
光と色の外にある、稀にいる属性を持たないもの。
無属性と呼ばれて、一般的に魔法は一切使えない。
その代わりと言っては何だが、才能が必ず二つ以上となる。
また無属性は非常に弱い者とされていて、加護のよう属性に守られるけど、無属性はそれがない。
疫病が流行ると、回復や病気を治せる者が属性持ちから治療を始めて、無属性は一番最後、数が少なくなった頃に治療が開始されるけど、まず助からない。
世間から、社会から爪弾きにされる存在、それが無属性であり、僕だった。
村の皆が僕を見る。
今まで僕を見てきた目とは全く異なる目で見てくる。
両親を見ると、両親の顔は引き攣り、あたかも自分の子ではないように、妹を抱いて目を合わせずにそっぽを向いてしまった。
にーにー、と5歳になったばかりの妹が僕を呼ぶ声がする。
両親には同情の声が集まり、良い結果だった2人を連れて、皆鑑定人のそばからそそくさと離れていく。
幼馴染の2人は、何度も僕の方を振り返り、2人とも驚きと悲しみを混ぜたような顔をして、大人たちに引っ張られて行った。
「早くこの村から立ち去れ。」
鑑定人は僕に向かってそう言った。
「お前がいると、村が危険に晒される。わかるだろう。今日この場ですぐに立ち去るのだ、無属性の厄介者よ。」
鑑定人が汚物を見るような目で見てきた。
村長もその場にいたけど、悲しそうな顔をして何も言わなかった。
不機嫌になった鑑定人が自分の家に戻って、ドアを開けて、わざと音が大きく鳴るように勢いよく閉めた。
「少し、待ってろ。」
村長は走って家に入り、そして出てくると大きなリュックを持って出てきた。
「すまんな。こうするしかないんだ。昔、無属性でも村で生活していた者がいるんだが、そいつが不幸を呼んでな。お前の両親の親、お前の祖父母だが、無属性の者が病気になり蔓延した時に死んでしまったのだ。無属性の者も死んでしまったが。その時の記憶が残っている以上、例え自分の子供だとしても許せないのだろう。これをやるから、この村から遠く離れてくれ。私のできる最後のことだ。」
村長はそう言ってリュックを手渡すと、家に帰って行った。
村の広場で行われていたちょっとした祭りのような鑑定は、僕だけ残して、何もなかったかのように終わりを告げ、僕という存在で後味の悪い結果となってしまった。
取り付く島もなく、しかたなく僕はリュックを背負って村を出て行った。
あまりにも唐突なことに、涙も出なかった。
その日、僕は村から追放された。
主人公
属性:無
才能:融合 学習