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お金って大事だよねって話。

4話投稿です。

書き溜めがどんどんなくなっていってます。というわけで今回はお金の話。

お金がなければ何も買えないし、宿にも泊まれない。もしかすると町に入るときに入場料が必要で町の中にも入れない。そんな生きていくのに必要なお金の話です。

現実でも大切ですよね……、お金……

『曰く幻獣とは、人型ともその他の生物とも違う存在である。多くはその身に大量の魔力をため込むことができる。大半の生物は大量の魔力をため込むと魔物へと変質してしまう。これを魔物化と呼ぶ。しかし幻獣は大半の生物にとって毒とも呼べる魔力をため込むことができるという性質を持ち、その魔力を十全に扱うことができるとされている。魔力を扱うことのできる人型以外の生物はその多くが少数であるため、保護の必要があるとされている。』

 

 本を読み進めていくと幻獣について詳しく書かれている。簡単に幻獣とは何かが書かれているページの次のページからは幻獣の挿絵とその生態が事細かに書かれている。一角獣や、妖精の類が幻獣の枠に入るようだ。僕にしてみればそれらも御伽話に出てくる生物だからなんだか現実感が無かったりする。


 「幻獣って魔法使えるんだ」

 「そ、そうみたいだな」

 「保護が必要らしいよ」

 「へ、へぇ? 俺には関係ないかもな」

 僕がパクの方を向くとパクは僕から目を逸らすように壁を見始めた。どうやらパクは幻獣という言葉に何となく拒否感を覚えているみたいだ。本に書かれているように幻獣は保護されていると書かれているし、保護されている自分を想像してなんとなく嫌な気分になっているのかもしれない。

 

 「そ、そういえばさ、あのお嬢ちゃんが言っていた使い魔ってやつについても書いてあるんじゃないか?」

 これ以上追及されたくなかったのか話題を露骨に逸らし始める。変な様子のパクをこれ以上責めても可哀そうなので、彼の言う通りに使い魔を調べる。

 

 「えっと使い魔、使い魔っと、あったな」


 えっと、なになに?

 

 「使い魔とは、少量の魔力を与えることによって、使役することができるようにした人型以外の生物の事である。使い魔はそれまでの生物とは違い、術者と会話を行うことや、魔法を扱うことができるようになる点が挙げられている。しかし、大量の魔力を与えた場合には、魔物へと変質してしまうことが検証されている、だそうだよ」

 「それじゃあ、なに? 俺はジャックの使い魔だって思われていたわけだ」

 

 説明を聞いてちょっと不満げな様子だ。

 

 「そうみたいだね。君が喋っているのを見て、なおさらそう思ったのかも。普通の猫とかは話さないもんね」

 

 たいていの生物は話さない。それは僕が島のいたときにも知っていたことだった。

 

 「いや、話しているぞあいつら。人間には分からない言語だけど、あと俺もよく聞き取れはしないけど」

 「……え? どういうこと?」

 「あいつら、にゃーにゃーって言いながら、あいつら同士では話しているぞ。俺には全く聞き取れなかったけど、長老とかは聞き取れてたみたいだし」

 

 どうやら僕の知らない世界っていうものは案外近くに転がっているみたいだ。パクから見える世界と僕から見えている世界は同じように見えて違っているのだろう。それも面白いな。

それにしても長老、猫の言葉分かるんだ。今度教えてもらおうと。



 

 「おっとと、本の方は読めた?」

 

 部屋の奥から出てきたガネットは、何かを手に持ってきた。

 香ばしい匂いが食欲を刺激する。どうやら食べ物のようだ。パンに白いスープ、そして先ほど商店で売られていた色とりどりの果物の切り合わせ。

 いつの間にこんなに用意していたのかと驚くほどの豪華さがあった。

 

 「え? ガネット良いの? 今日初めて会ったばかりなのにこんなに良くしてもらって」

 「いいのよ。さっきもリンの実をもらってたでしょ。ここは商人の町。先になんか貸しを作っておいて、あとで返してもらう。そうやりながらお互いに助け合って生きてきた町なんだ。君たちにこう振舞うのもこの町の気質ってやつかもね」

 

 僕はそれに感心した。僕では考えつかない考えだったからだ。

 それに、と彼女は付け加える。

 

 「さっき調べていたみたいだから、私の質問にも答えてよ。ご飯食べながらで良いからね。特に君とそこのトカゲ? もどき君の関係とか」

 「だから、俺はトカゲじゃないって言ってるだろ!」

 「それはともかく」

 「ともかくじゃない、俺にとっては大切なことだ」

 「料理が冷めちゃうよ」

 

 さっきまで反論していたパクも料理を前にしては黙るしかなかった。それを見て僕は苦笑いする。



 「えっと、とりあえずドラゴンもどき君はトカゲって呼ぶと怒るからなんて呼べばいいかな?」

 「俺の事か、パクと呼べ、ジャックもそう呼んでるし」

 「そうね、じゃあこれからはパクと呼ぶわ、よろしくね、パク」

 

 パクと呼ばれても、さっきまでのトカゲ呼ばわりが気に入らなかったのかフンとそっぽを向いた。多分ご飯を食べ終わるくらいには機嫌も直っているだろう。今はそっとしておいた方が良いかもしれない。

 

 「それでパクはジャックの使い魔じゃないの?」

 

 パンを一口大にちぎって口に放り込みながら、さっきの本に書いてある記述を思い出す。はたから見たら、そう言えなくもないかもしれないけど、僕はパクに魔力を与えた覚えもなければ、パスを繋げた感覚というものがなかった。


 「多分違うかな。パスを繋げた覚えがないから感覚として分からないけど、魔力をパクに与えたことはないからね」

 

 僕はそう言いながら、もう一度本の記述を思い出す。確か、使い魔には使い魔の文様が現れるとかなんとか、だったけ?

 「あとで、もう一度確認してみるよ」

 「それが良いかもね。それに幻獣なんて分かったらこの町だったら商品にされちゃうかもしれないしね」

 「ごふっ」

 

 商品という言葉にパクはむせた。口にしていたパンが喉に詰まったみたいだ。

 

 「だ、大丈夫、パク。ほら、水。水飲んで」


 慌てて水を渡すと奪うように僕から水を受け取り勢いよく飲み干していく。ごくごくと音が出るほどに慌てて水を飲んでいく。


 「ぷは、苦しかったぜ。おい、嬢ちゃん」

 「ごめんね、軽いジョークだったのよ。だけど、本当に君がドラゴンだったりなんてしたら、売られるどころか研究の材料にされるかもしれないってことはあるからね。今では幻獣は保護しようってことになっているけど、昔は珍しいから研究しようとか、売って一儲けしようって人が多かったみたいだし」

 それを聞いて、パクの顔色がどんどん悪くなっていく。

 

 「お、俺トカゲの使い魔で良いかも」

 

 さっきまであんなに怒っていた呼び名を自分で言ってしまうくらいには、弱気になっていた。それを見てさすがにガネットも言い過ぎたと感じたようだ。

 

 「あ、そういう人もいるから気を付けた方が良いよってことで、そんなに気にしなくても良いと思うよ、うん」

 

 そんな風にガネットがパクを励ます。パクがいつもの調子を取り戻したのは、ご飯を食べ終わるころだった。


 「そういえば君たちってお金って持っているの?」

 

 不意に思い出したように彼女が片づけをしながら言った。

 

 「あるよ、長老様やパクの両親に貰ったのが」

 

 袋からまた布でできた硬貨入れを取り出して見せる。じゃらじゃらと音がしてずっしりと重さがある。

 

 「ちょっと見せてよ」

 「うん、いいよ」

 

 袋を開けて一枚取り出す。それは彼女の髪の色によく似た金色だった。きらきらと光を反射する。硬貨の真ん中には女性の絵が入っていた。

 それをガネットに手渡す。ガネットはそれを持った瞬間に顔をひきつらせた。

 

 「あれ? どうかしたの」

 「……これ、最上級金貨じゃない。それも何十年も昔の」

 「へ?」

 「ジャック、これ出しても商店の人に驚かれるだけよ。この硬貨はこの町だけじゃなくて国で流通してる硬貨の中で一番高いものよ。普通の子供がリンの実とかそういうのを買うのに使ったら怪しまれるわよ」

 

 矢継ぎ早にそう言われて僕はたじろぐ。

 

 「それって、やばいのか」

 

 僕よりもお金に無頓着なパクは興味なさげに言う。

 

 「やばい、なんてもんじゃないわよ。商店で怪しまれて町で買い物できなくなるかもしれないわよ。それにこのお金を狙う変なのが寄ってくるかもしれない」

 

 さっきの話の尾を引いているのかパクはとんでもないと嫌な顔をする。

 

 「それを使うとそうなるかもってこと?」

 「そうよ、まったく常識がないというか、君に常識を教えた人たちの常識が私の常識を超えてるっていうか、君、もしかしてどこかの国の貴族とかじゃないよね?」

 「貴族ってのがよく分からないけど、偉い人じゃないよ。島では普通に暮らしていたし」

 「はあ、まあいいや、ジャック。このお金は使わない方が良いわ。それにたぶんお金の価値もその様子だと分かっていないみたいだし教えてあげるわ」

 

 そうしてガネットによるお金の話が始まった。

 最初の数分はパクも一緒に聞いていたけど、途中から飽きてしまったのか机の上で寝そべっている。

 僕の持ってきた硬貨は、最上級が20枚に、その次の銀色が13枚、一般的に使われている銅貨が37枚だった。

 銅貨が100枚で銀が1枚、銀が100枚で金が1枚分らしい。

 そしてリンの実は銅貨が1枚分らしい。

 金の硬貨だったらリンの実が10000個買えてしまう。それを聞いて、僕はこの硬貨を安易にお店に出さなくてよかったと心の底から思った。そんなことをしたら怪しまれるどころかもっと大変な目に遭うことになりそうだから。

 

 「ガネットってお金ことすごく知っているよね」

 「この町の子なら普通の事よ。だって、この町の子たちは将来この町で商売をするのよ。私はする気はないけど、一般教養として学んだわ」

 

 今日初めてあったはずのガネットには、感心することがたくさんあるし、頼りになるなと心の底から思う





 長老様、どうやらお金の価値を僕らは知らなかったようです。心優しい女の子に教えてもらわなかったら、とても大変なことになっていたかもしれません。こういうことを知るために外の世界を旅するように言ったのでしょうか。

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