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町は危険がいっぱい? 変な人もいっぱい? 

2話投稿です。少しずつ二人の世界が広がっていきます。そして、色々な人に出会います。現代生活の中では、そうそう人にエンカウントしても話しかけられるなんてことはないかもしれないですね。だけど、異世界はどうなのか? いきなり話しかけてくる面白い人とかいるのかな?

そんなことを想像しながら書いてます。

ではでは、ごゆるりとお楽しみください。

 「これってピンチかな?」

 「なんかやばいかも」

 

 僕とパクはそう言って顔を見合わせた。そしてもう一度前にいる三人組に視線を移す。

 

 「ん? ここらはガキが来るところじゃねーぞ。なんだ? 痛い目に遭いたいのか?」

 

 先頭にいる頭にバンダナを巻いた柄の悪い男はこっちを睨みつけるように見てくる。

 後ろの二人も僕らを取り囲むような形で立っている。そして、後ろには壁。囲まれていることがよく分かる。

 ……絶体絶命のピンチだ。

 

 「「ど、どうしよう」」





 




 時が遡ること二日前、僕とパクは長老に呼ばれていた。

 

 「えっと長老様、もう一度お願いしてもよろしいですか? ちょっと耳を疑うようなことが聞こえたような気がしたので」

 

 パクが珍しく丁寧な喋りをしようとしている。たぶん気が動転しているんだろう。そう言う僕も全然落ち着けていない。何せ、長老様は、


 「ふむ、二人には旅をしてもらおうとおもうておるのじゃよ」

 

 聞き間違いじゃなかったみたいだ。羽を少しはためかせて、座椅子に座る長老はそう言うと僕ら二人を見比べて、優し気に微笑む。

 

 「二人とも年はいくつになったかの?」

 「年ですか? えっと確か14だったかと」

 「俺も同じだ」

 

 この島では、サクの華と呼ばれる春に咲く花を基準に年を数える。僕もパクもサクの華が咲くころに生まれたらしく、その頃から生きている者たちが数えたところ今年で14回目らしい。

 僕の年に関してはかなりあいまいなところがあるみたいだけど。

 

 「そうかそうか、二人とも14か、それはこんなにも大きくなるんもんだ」

 

 長老は、ほほほとまた笑うと優し気な目で僕らを見る。

 

 「二人とも、こんなにも大きくなったのだから、外の世界を見てきてもいいのではないかと思ってのう」

 

 そう言ってまた長老は笑うのだった。

 

 「長老様も何を考えているのやら、俺らに旅しろって」

 

 突然の事で、上手く呑み込めてなかったパクはそう愚痴をこぼす。僕も内心いきなり旅に出ろと言われても困るばかりだった。

 

 「それにしても、俺らが外の世界の人にドラゴンって呼ばれてるなんて初めて聞いたぞ」

 

 長老の話は旅に出ること以外にもあったのだ。それを思い出すと僕という存在がこの島の中で異端であることがよく分かった。

 

 

 「パク、ワシらが外の世界、海の向こう側の者たちになんと呼ばれているか知っておるか?」

 「いや、知らないですよ、海の向こうのやつらに会ったことないし」

 

 至極当然だというようにパクはそう答える。

 長老はそれを聞いて、また笑みを浮かべ説明してくれた。

 

 「いいか? ワシらの種族はドラゴンと呼ばれていた。羽を持ち、空を飛べる種族は外の世界にはそうそういなかったからのう、そして、ワシらをそう名付けた者たちを人間族と言った」

 「へえ、人間族ね? そいつらはどんな格好なんだ?」

 

 パクがそう言うと、長老は僕を指差す。え? 何で僕を指差すの?

 

 「ん? なんでジャックの事を指差してんだ?」

 

 同じように疑問に感じたのかパクが聞き返してくれる。

 

 「ジャックは人間族だとワシは考えている」

 「「え?」」

 

 僕とパクから同じように声が出た。

 確かに僕にはパクや長老、この島のみんなみたいに羽が生えているわけでもなければ、口から炎を出すこともできない。だけど、僕がそんな人間族だっただなんて知らなかった。

 

 「確かにジャックは俺みたいに飛べないよな。そうなると親父や長老たちは最初からジャックがこの島の出身じゃないって知っていたのか?」

 

 どうやら、パクは僕がこの島の生まれじゃないってことに考えが及んだようだ。

 長老はそんなパクの答えに頷くことで答えた。

 

 「さよう、ジャックはこの島の生まれではない、しかし、ワシらもジャックがどこから来たのかをよくは知らぬのだ。今回の旅ではジャックの生まれた地を探すのもいいのではないかと考えておる」

 

 僕ら二人はそう言われると何も言えなくなってしまった。



 そして、僕らは二人で島を出て、旅をすることになったのだった。


 



 それが二日前の事で、一日で船を漕いで、陸にたどり着いたのが昨日。そしてよく分からない三人組に囲まれる本日。

 一週間もたっていないのにこんなにも色々なことが降りかかってくるなんて思いもしなかった。

 

 「おい、何ごちゃごちゃ言ってんだ?」

 「ひぃ、僕たち何もしてませんよね?」

 「ああ? 誰の許しを得て、ここを通ってんの? ここらは俺らの縄張りやぞ。勝手に入ってきたお前らが悪い」 

 

 やっぱり柄の悪い人たちだった。

 僕も僕の肩に乗るパクもガタガタ震えるばかり。

 

 「お?」

 

 後ろにいたそれほど背は高くはないが、やっぱり柄の悪い、特徴的な目をした奴が何かに気が付いたのか、声を挙げた。

 

 「そこのやつの肩に乗っている奴、使い魔じゃね?」

 「なに? 使い魔だと」

 

 なんか三人組は少し驚いた顔をした後、こちらに振り返り、嫌な笑みを向けてくる。

 

 「そっか、使い魔を持っているのか。こりゃいいカモを見つけたぜ」

 

 僕の知らない「使い魔」という言葉を使っている。多分だけどパクの事を言っているみたいだ。

 

 「パク? 君って使い魔なの?」

 「俺? さあ、知らないね。まず、使い魔ってんだよ」

 「へえ、そいつ喋ることもできるのか、売り払えばいくらになるかね」

 

 バンダナ頭はそう言いながら、嫌な笑みを浮かべている。もう僕らに勝ち目がなく、彼らにしてみれば、そのあとの金が舞い込んでくる姿まで想像しているのかもしれない。

 

 「ねえ、パク?」

 「なんだよ?」

 「こうゆうときってパクの魔法の出番じゃない?」

 「あ、そうだな」

 

 パクは僕の肩から少し浮き上がって、三人組と対峙する。

 

 「なんだ? 使い魔、俺らに歯向かおうってか? トカゲに何ができるよ」

 

 ひとりがそう挑発するように言うと、他の三人もそれに同調するように言う。

 

 ……ああ、言っちゃった。

 

 「……れは、……ゲじゃねえ」

 「あん? なんだよ何か言ったか? トカゲ」

 「俺は、トカゲじゃねえ!」

 

 パクは大口を開けて、息を吐き出す。すると、赤い炎が三人組を襲った。

 

 「うわ、あっちぃ」

 「なんだよ、これ」

 

 赤い炎はすぐにおさまると三人組は慌てたように逃げ出す。覚えてろよなんて捨て台詞まで言いながら走り去っていく姿は少し可笑しかった。

 

 「ほんと、パクの魔法はすごいね」

 「へへん、まあ、これでもかなり加減したけどな」

 

 かなり加減していたのだろう。ふっと息を吐くと口からはまだ、炎の残り火が出てくる。彼が本気になったら、多分あの三人組は大やけどを負っていただろう。無傷で彼らがここから逃げ出したのがその証拠だ。


 「それじゃあ、どうしようか? ここら辺は分からないし、また変な人に絡まれると大変だよね」

 「そうだな、早いこと町の中心にでも行ってみるか?」

 僕らがそう話していると、物陰からガサっと音がした。

 「「?」」

 

 二人して音が鳴ったそこを見つめる。

 ジーと見つめる。

 ジーーーーーと見つめる。

 じーーーーーーーーーーーーーーーーと、


 「ああもう、ばれてるなら仕方ないわね」

 

 威勢のいい、だけど少し高い声が物陰から聞こえて、同時に何かが飛び出してきた。

 金色のそれが動きにつられて揺れる。

 どこかいたずらっ子のような目つき、そして溌溂とした声。

 長めのスカートを履いた少女だった。

 

 「はい、そこのお二人さん。私と町に行かない?」

 

 怪しさ満点の女の子だった。

 

 「おい、ジャックどうするよ? 戦う? 逃げる? 話しかける?」

 「ちょっと戦うと逃げるはなしよ」

 「あ、聞こえてたみたい」


 


 とりあえず、長老様、町に出たら三人組に声を掛けられて、そのあと変な女の子と出会いました。

 ……僕たち大丈夫なのかな。先行きが不安です。


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