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プロローグ

どうも菊池一心です。前作などが現代ものだったりしたので、今度は異世界に飛んでみたいと思って書き始めました。遅筆で更新は遅くなると思いますが、たくさんの人に見てもらって、感想をいただけたら幸いです。


ではでは、ごゆるりとお楽しみください。

 1

 屋根の上から見上げた空は満点の星と二つの月が重なるように輝いていた。故郷から遠く離れたはずのこの場所でも星空は変わりなく輝いている。それが少し嬉しくもあり、そして故郷の家族を思うと少し寂しさも感じた。


 「ねえ、パク?」

 「ん? どうしたよ?」


 僕の肩に乗っかっている親友に声を掛けてみたけど、そのあとが続かない。


 「おい、どうしたよ?」

 「ごめん、少しだけ故郷の事を思い出して」

 「ああ、みんなのことか」

 「……うん」


 パクはうーんと目を閉じて考える格好をしながら、小さな羽をぱたぱたとはためかせて浮き上がる。僕の正面に来ると、閉じていた目を開けて僕に指を突き付けた。


 「ジャックは考え過ぎだよ。今は旅を楽しむ。空の星が綺麗なんだ。こんな綺麗な星を見ながら寝っ転がるなんてそうそうできるもんじゃない。楽しめることを楽しめばいいさ」


 彼の言葉には、どこか説得力がある。いつもの事だ。僕が考え過ぎたり、少し根が詰まった時は、彼がこんな風に励まし、説得してくれる。


 「さて、まだまだ夜は長いぞ。星空を楽しむにはもってこいだ」


 次は僕の頭の上に乗っかった。少し重さがあるけど、気になるほどではない。


 「でも、ちょっと冷えてきたから、暖めるよ」

 「おう、頼む!」


 指先に熱が集まるように集中するとぼわっと小さな炎が巻き上がる。小さな炎のままでは、風に掻き消されてしまう。持ってきたランタンの中の炭に移すと柔らかな灯りと熱を伝えてくれる。

 頭の上からランタンの側に降りてきたパクは側でごろりと寝転がる。まるで日向ぼっこをする猫のようだ。


 「やっぱ、こういう魔法は俺よりジャックの方が上手だ」


 彼はランタンの炎を見ながら僕を褒めてくれる。


 「だけど、パクの方が魔法は上手じゃないか」


 実際彼の魔法は大胆で、強大だ。そして何よりも美しい。僕はそんな彼のような美しく力強い魔法を使えるように旅の間も勉強している。

 だけど、そんな魔法を彼自身はそこまで好きじゃないようだ。


 「だけど、俺の魔法ってものを壊しちゃうんだよな」と現に否定気味だ。


 少しもったいない気もするけど、魔法は使ってなんぼのもの。それが僕と彼の共通の意見だったりする。







 「ああ、またこんなところにいた」


 しばらく二人で星を眺めていると、下からそんな聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた。

 カンカンと甲高い音を響かせながら、梯子を昇ってくる音がする。

 

 「あ、見つかっちまったか」

 パクはせっかく静かだったのになあと、少しがっかりしているみたいだ。

 梯子を昇ってくる音は段々と近づいて、そして途切れる。梯子の向こう側からひょっこりとその子は顔を出した。


 「やっぱりこんなところにいたのね。探したわよ」


 溌溂とした物言いと、この国の最上級硬貨のような金色の長い髪を振り乱しながらこちらに寄ってくる女の子は、僕らが迷っているときに出会ってから一緒に旅をしている冒険家のガネットだ。


 「何してるのよ?」


 寄ってきた彼女は私に何も言わないで勝手にいなくなってと、不満を露わにしている。

 

 「いや、何も言わなくてごめんね。星が綺麗だったから見てたんだ」

 「星?」

 「うん、雲もそんなにかかってなかったから、ちょうどいいねってパクと話しててさ」

 

 言われてガネットも空を見上げる。満点の星空はさっきと変わらずにそこにあった。


 「あ、、ほんとだ。そういえば星なんてそうそう見てなかったな」

 「最近は曇っていたからね。今日は晴れてくれてよかったよ」

 「まあ、だけどうるさい奴が来て、少し風情がなくなったけどな」


 ランタンの側で寝転がっているパクは炎に目を向けながら、憎まれ口を叩く。

 どうやら聞こえていたのか、ガネットがピクリと反応して返すように言った。


 「何よ、トカゲの癖に」

 「俺はトカゲじゃない、あんなのと一緒にするな」

 

 言われたら、言い返すという感じで二人の言い合いはいつものようにヒートアップしていく。

 

 「ああ、はいはい、そこで終わり。そんな喧嘩するなら僕、宿に戻ってもいい?」

 

 二人の間に割って入ってそう言うと、二人は渋々と言った表情で喧嘩を止めた。

 もうせっかく、こんなにも星空が綺麗なのに。

 少しため息を吐いてまた空を見上げる。


 二つの月が重なるように輝いている。もう何日かしたら重なって一つに見えるのだろう。その頃には、この町から出て、また次の町へと向かっているかもしれない。

 

 「ほんと、月が綺麗だなぁ」

 

 明るく輝く月は優しく僕らを見守っているように見えた。


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