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Destino―栞:Side―  作者: 一二三六
14/32

14話「女神が微笑む時」

「――大変長らくお待たせいたしました、いよいよ発表です……!」


 司会者さんと共に、私たち出場者は舞台へと戻り、所定の位置に立つ。

さあ、いよいよやってきた。結果が発表される時が。胸がドキドキしてて、とても収まりそうにはなかった。早く発表してほしいという気持ちと、結果が怖くてまだ発表しないでという気持ちという矛盾した思いが私の心を渦巻いていく。


「今年のミス聖皇せいおうは――――」


 司会者さんの言葉とともに、ドラムロールが流れ始め、スポットライトが私たちを右へ左へと動きながら照らしていく。私は思わず目をつぶり、祈るように手を組んでおでこに当てる。勝利の女神よ、どうか私に微笑んで。


「――岡崎おかざきしおりさんでーす! おめどうございまーす!」


 一瞬、頭の理解が追いつかなかったけど、スポットライトが私を照らしていることで、私が優勝したんだとわかった。私は夢でも見ているのかと思った。だってまさかこの私が、転校してきたばかりの私が優勝するなんて到底ムリだと思っていたから。

私自身、まだ気持ちの整理がついていない状況で、司会者さんにうながされるまま、ほかの出場者たちより前の方へと出ていく。


「では、岡崎さん、一言お願いします!」


「は、はい! とても嬉しいですけど、まだ信じられないです! ありがとうございます!」


 もう嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになっていた。こんなにも幸せなことがあっていいのだろうか。私には申し訳ないくらいだ。でもホントに嬉しい。しずかちゃんに誘われて、出て本当に正解だった。ありがとう、静ちゃん、七海ななみちゃん。私やったよ!


「では、つづいてミスター聖皇も発表したいと思います!!」


 私への拍手がしばらく続き、ようやく鳴り止んだところで、司会者さんは私が待ち焦がれていた言葉を放つ。そして当の本人である、れんは我関せずと呑気のんきな顔をしていた。ふふっ、これから自分が選ばれるというこも知らずに。そんなことを思いつつ、私はミスター聖皇が発表されるのを待つ。


「今年のミスター聖皇は――――なんと今年も秋山あきやま煉さんです!!」


 そして司会者さんの発表の瞬間、それが予定調和かのようにみんなが『知ってた』と言わんばかりの顔をしていた。そして当の本人である煉は、ただただ状況が飲み込めずに周りをキョロキョロと見回している。自分が選ばれたことがよっぽど意外だったのか、混乱している様子。


「秋山煉さんはいらっしゃいますかー? いらっしゃったら前に出てきていただけますでしょうかー」


 司会者さんは探すような仕草をして、観客を右へ左へと見渡していた。木下きのしたくんに、おそらく前へ出るように促され、そのまま私の方へと向かってくる。それに、会場の全員が注目して見ていた。おまけにスポットライトまで当たって、動きに合わせて動いていく。そしていよいよ私の待つ、ステージへと辿り着く。煉がここにやってきたことで、もうそろそろ『あの時間』がやってくるんだと実感が湧いてきてしまい、恥ずかしくなってくる。


「いやーようやく出てくれましたねぇー」


「なあ、悪いんだが、俺にはその言葉の意味がわからん。説明してもらえないか?」


 未だにこの状況を理解できていない煉は、司会者さんに説明を求めていた。


「あっ、はい。えーとですね――」


 そして司会者さんは詳しい説明を煉にしてくれる。改めてその話を聞かされると、ホント煉てすごい人なんだと思う。だって付属の1年生から毎年ずっと、なんてそうそう成し遂げられる人はいないだろう。そんな人が、今年はちゃんと来てくれたんだから。嬉しくてたまらない。


「――では、景品の方に行きましょうか!」


「待って、景品って何?」


 ホントになんにも知らない煉は、今度は景品のことについて説明を求める。煉はよっぽどミスコンに関心がないんだなと、私は思う。でも、ポスターも張り出されていたんだし、そこで目にするぐらいはあったかもしれないのに。


「え、知らないのですか!?」


 煉のその言葉に司会者さんはすごく驚いた表情をしながら、珍しいものでも見るような顔で煉を見つめていた。


「しょうがないですね、お教えしましょう! 景品はミス聖皇とミスター聖皇の2ショット写真! しかも今年はなんとーウェディングドレスとタキシードでええす!」


 急にテンション上げて、そんな景品の発表をする司会者さん。それを聞いた煉は明らかに、今日来たことを後悔している様子だった。それはたぶん、私と撮るのが嫌なんじゃなくて、単に撮られることが嫌なのだろう。私だって煉とじゃなかったら、嫌だもん。それから煉は生徒会の人たちの案内のもと、舞台袖へと消えていった。その背中に漂う哀愁といったら、この上なかった。それでもここから逃げ出さずに、ちゃんとやるからにはやるところは男らしいというか、優しいなと思う。ごめんね、煉。嫌かもしれないけど、私のためにガマンしてね。そんな事を心の中で思いつつ、私は司会者さんと共に、煉が着替えるまでの間、質問やミスコンの感想などで間を繋ぐこととなった。

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