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暗殺が得意な佐藤くん  作者: 砂糖
2/7

新たな生活

 俺は今教室のドアの前に待たされている。

 今日からこの「私立龍門寺高校」に転入する事になったのだ。

 ちなみに、この学校は上位組織に大学を構えているため、後々の進学に役立つ。

 『おい、聞いたか? 今日転入生が来るらしいぞ』

 『聞いたよー! 男の子らしいね』

 教室の中からそんな会話が漏れてくる。

 新参者に興味が湧くのは当然だろう。

 だが、生憎俺は青春を謳歌しに来ているわけでは無い。

 あくまでも俺は仕事の都合でこの学校に転入してきたのだ。

 だから友人関係は二の次だ。

 しかし、向こうが友好的に接してくるならば俺もそれに応える。

 「佐藤くん、入って来てくれ」

 考えに耽っていると担任から入るよう促された。


 

 教室に入ると、全員の視線が俺に注がれた。

 ぱっと見の男女比は半々くらいだろう。

 「それじゃあ、挨拶してくれる?」

 またもや担任から挨拶するよう促された。

 「はい」

 相変わらず人の前に立つ時は緊張する。

 気持ちを落ち着かせる為に軽い深呼吸をした。

 「佐藤(さとう)悠希(ゆうき)です。家の都合でこの学校に転入する事になりました。慣れない事や分からない事が多数ありますが、よろしくお願いします」

 ここまで言えば上出来だろう。

 我ながら良くやったと言える。

 「じゃあ佐藤くんはあそこの席ね」

 担任が指した席は窓際の1番後ろだ。

 俺は黙って頷き、その席へと向かった。

 


 席に着くと隣の金髪で制服を着崩した不良生徒が声をかけてきた。

 確かこの学校は服装や髪型には特に指定は無かったな。

 「よぅ、これからよろしくな」

 ふむ…悪い奴では無いようだ。

 どうやら担任は既に退出しているみたいだな。

 「あぁ、よろしく。えっと…」

 言葉に詰まると彼は何かを察したようだ。

 「狭山 (さやま)涼介(りょうすけ)だ。呼び方は名字でも名前でもいいぜ」

 「わかった」

 教科書を鞄から出しているこの瞬間にも、教室のいろんな場所から視線を感じる。

 このクラスの人間は好奇心が旺盛のようだ。

 「お前、前はどこの学校に居たんだ?」

 狭山が尋ねてくる。

 「京都第一高校だ」

 「嘘だろ!? めちゃくちゃ賢いところじゃねーか!」

 彼は大声をあげて驚いている。

 あまり注目される事はやめて欲しいんだがな。

 「まぁ、そうなるかな」

 「なんでこんな田舎の学校に来たんだよ?」

 田舎、と言ってもこの周辺は発展している方だろう。

 尤も、この学校の偏差値は劣るが。

 「家の都合でな。親がこっちの方に転勤になったんだ」

 「なるほどなー。エリート街道から外れちまうなんて本当に残念だな」

 「エリート街道なんかじゃないよ、あの学校は」

 やたらと多い課題、加えて他の学校には類を見ない程の放任主義。

 外からは一流と評されているが、中身は腐っていた。

 教育理念の中に『生徒による自主的な行動』を掲げており、教師の関与は無く、生徒による自治が実施されている。

 そのせいで水面下では成績上位者による無理な横暴が行われていた。

 成績が底辺層の者の顔は死んでいた。

 政治家の多くが何故腐っているのか見れば分かるだろう。

 まさに資本主義社会の縮図なのだ。

 だが、いずれその腐ったメッキも剥がれるだろう。



 「佐藤くんって京都第一高校なの!?」

 突然前の女子が話しかけて来た。

 どうやら狭山の声が大きすぎて周りにまで聞こえてしまったようだ。

 「ああ。そうだ」

 「凄いね!」

 「そんな事は無い。受験したら偶然受かっただけだ」

 「でも合格したんでしょ?」

 「ああ」

 「なら凄いじゃない!」

 「そうか」

 「ええ! 私は長谷川 (はせがわ)(まい)よ。よろしくね」

 「ああ。よろしく」

 彼女は一言で表すなら太陽と言うべきだろう。

 元気が取り柄です、と胸を張って言える程明るい性格のようだ。

 その後も3人でくだらない会話をしていると1時限目の開始を合図するチャイムが鳴った。

 この学校での初授業は数学のようだ。

 数学は苦手だ。

 そんな俺の思いも虚しく授業は開始される。

 だが、前の学校では既に高校の教育課程の半分以上を済ませていたため、勉強に関しては困らない。

 チャイムが鳴り終わり1分も経たない間に教科の先生がやってきて、授業が始まった。



 授業が一通り終了し、ようやくやってきた放課後。

 休み時間のたびに机を囲まれて飽きる程質問をされた為とても疲れている。

 帰宅する準備をして教室を出ようとすると、1人の生徒が声をかけてきた。

 「佐藤くん! ちょっと待ってくれないか!」

 「どうした?」

 「僕は高山(たかやま)光輝(こうき)。みんなより遅れちゃったけどよろしく」

 「ああ。よろしく」

 なにか俺に用があるのだろうか?

 「急で悪いんだけど、佐藤くんは何か部活には入らないの?」

 「部活か。いや、入る予定は無い」

 その告げた瞬間、高山の目が変わった気がした。

 「ならサッカー部に入らないか!?」

 どうやら勧誘のようだ。

 「すまない、そもそも部活自体に興味無いんだ」

 「え、そうなの? てっきり何かスポーツしてるのかと思ったよ」

 「どうしてだ?」

 「全体的に筋肉がついてるからだよ。それも制服を着ていても分かる程にだ。ただの帰宅部だったらそんな風に筋肉はつかない筈だからね」

 「なるほど、それでか」

 「うん。君、前の学校で部活はしてたの?」

 「いや、帰宅部だ」

 「あれ? じゃあ外で何かしてたとか?」

 「俺は元々身体が弱いから鍛えてただけだ」

 「なるほどね。だからなんだ」

 「ああ」

 「時間取らせてごめん。気が向いたらいつでも言ってよ。サッカー部はいつでも大歓迎だからさ」

 「わかった」

 「それじゃ、僕はこれで!」

 「ああ」

 この学校の部活も盛んなのだろうか。

 俺は今度こそ学校を後にした。

2話目です。

実は大まかなストーリーしか決まっておらず、どう展開させるか悩んでおります。

誤字脱字や読みにくい文章等、ご報告頂ければ幸いです。

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