落下パート2
鬱蒼とした森を歩き河を目指してた俺たちは少し拓けた場所を見つけ休憩がてら魔法の練習をしていた。
先のスライム戦では切り札と言いながら早々に"ディストラクション"を使ってしまった。
今のところなんとか切り抜けているが、偶々運がよかっただけだ。
何回も死んでるのがいい証拠だ。
今はちゃんと生き返っているが、どんな状態でも生き返れるという保証はない。
例えば龍に半身を食い千切られて死んだら半身がない状態で生き返れるのだろか。
魔法があるファンタジー世界だから体の再構築が可能なのかも知れない。
だが、あくまで可能性の話であって違った場合は待つのは死だ。
この化け物が犇めく森から脱出するには強くなること。
"ディストラクション"を温存して戦い抜ける力を身につける必要がある。
思い立った俺は現状把握をし魔法という生命線の強化に挑んでいる。
不安ではあるがゴブリンに周囲の警戒を任せ、ステータスを見る。
前に確認したときからMPは50ほど回復して100を上回っている。
少々魔法を使ったところで魔力切れを起こすことはないだろう。
ステータスを確認してから消し再度呼び出す。
するとMPが1減っていた。
どうやらステータスが載っている窓はMPを使って作られているようだ。
出しっぱなしにしてもMPが減る気配はない。
MPは使用時のみ必要ということだろう。
窓を出しっぱなしにしてMPを見てるとだいたい1分で2程度回復している。
一時間で120の回復。
MP0の状態から考えると"ディストラクション"を撃てるようになるまで180分か。
本当に乱用することはできないな。
ついでにステータスを再確認する。
「おぉ~」
「どうしたんですか?」
「なんでもない…」
思わず声が出てしまった…
頭を傾けて知りたそうにしているゴブリンは放置だ。
もう一度ステータスを見て間違いないことを確認する。
なんと、鑑定さんがLv.2になっていた。
ここに来るまで目につくものを片っ端から鑑定した結果だな。
これでより正確な情報を手に入れることができる。
化け物相手には正常に機能しないが食べ物には機能してくれてるし、この世界のことを何も知らない俺にとって鑑定さんが優いつの情報源だから今後もガンガンレベルを上げていく所存だ。
鑑定さんよ!共に頑張ろうではないか!
「"鑑定"」
さっそく期待を込めて鑑定さんに仕事をしてもらう。
鑑定する項目は俺のステータスに載っているスキル水魔法。
Lv.1の時は反応はなく、失敗へと終わった。
「おぉ~」
「どうしたんですか?」
「なんでもない。」
ゴブリンには適当に返事をしてスルー。
なんと鑑定できちゃいました。
さすが鑑定さん!
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水魔法
Lv.1ウォーター
一定量の水を放出。込める魔力量によって水量を増減することが可能。
基本消費MP10
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Lv.2以降は表示されなかった。
火魔法も似たような内容だったが、エクストラスキルの暗黒魔法や称号スキルは鑑定することができなかった。
単純にレベルが足りないのだろう。
「"ウォーター"」
唱えると大体1~2リットルぐらいの水が前と噴き出した。
攻撃としての威力は期待できないな。
本当に水を出したという感じ。
全く攻撃としては使えない。
昨日の実験を踏まえイメージでこれを攻撃に使えるまで昇華することはできないだろうか。
まずは先程より倍の水を出すようにイメージする。
「"ウォーター"」
勢いよくイメージ通りの水量を作り出すことができた。
ステータスを確認すると消費MPは22と倍ではなく2.2倍であった。
今度は手のひらを被うぐらいのイメージでやると消費は3となった。
手のひらの上に球体状で作り出し維持してみる。
球体にするのにもMPが必要なようで消費は5となった。
維持には5秒ぐらいでMP1を消費している。
その後もいろいろと試し、何となくだが魔法の使い方がわかってきた気がする
いろいろとやる過ぎてMPの残り30を切った。
MP切れを体験してみたい気もするが、こんな森の中でするほど自殺志願者ではない。
最後の仕上げにと手のひらを樹に向けて魔法名を唱える。
「"ウォーター"」
手のひらより高速射出された魔法は大樹を穿ち消滅した。
幹には数センチの穴が出来上がり威力の高さが伺える。
「よし!」
満足のいく出来映えにガッツポーズしてしまう。
俺が放った"ウォーター"はMPの消費を最小限に抑え、威力を最大限に引き出すをイメージして作り上げた。
手のひらより少し小さくすることで消費MPを抑え、形状を円錐にし回転と高速射出をさせた。
通常より三行程ほど多くなったが消費MPはなんと5という驚異のコスパ!
命名するなら"ウォータースパイク"と言ったところか。
「疲れた…」
「終わったんですか?」
「一応な。あと警戒助かった、ありがとう。」
「……」
「急に黙ってどうした?」
「ご主人様がお礼…熱でもあるんですか?」
大樹の幹へと背を預け腰を下ろし、ひと休みしていると周辺の警戒を任せていたゴブリンが帰って来た。
例を述べると大袈裟に驚かれた。
こいつ失礼すぎるだろ。
俺だって礼ぐらい言えるわ!
「頭を押さえてやっぱり熱ですか!」
「違うわ!──はぁ、今日はもう少し進んだら寝床と飯を探すぞ。」
「わかりました。」
悪い奴じゃないがこのゴブリンと話してると疲れる。
昨日の洞窟のような寝床が簡単に見つかるほど世の中甘いわけではなく、二時間ほど歩いて見つけたのは茸と数種類の果物。
そして、ダンゴムシと遭遇すること5回。
奴らは俺を轢く為に森を駆け巡ってるのではないかと勘繰ってしまう。
採取した茸と果物は大きな葉を包み代わりにしてゴブリンに持たせているが腹が減ってるのか涎を垂らしながら追走してくる。
本当汚いから食い物につけるなよ…
ゴルァァァ
ブヒャー
突如、少し離れた場所から雄叫びと少し遅れて悲鳴が上がる。
俺はゴブリンと視線を合わせ意思の疎通を図り、頷くと静かに一歩踏み出す。
──雄叫びとは逆方向へと。
そこは見に行くところ?
そんなの知らねぇよ。
あんな露骨な死亡フラグ回収しに行くのはバカと自殺志願だけだ。
練習した魔法?
あんなのあくまで保険だ。
ちょっと練習しただけで強くなれる異世界勇者と一緒にするな!
こっちは普通の人だから。
それに樹に数センチの穴を作れたぐらいで「俺チートヒャッホー」にはならないから。
あんなの相手が硬い鱗とか皮膚持ってたら効かないからな。
もう一つの飛び道具"石"も魔法効かない時点で意味をなさないだろう。
つまり、選択肢は逃げ一択。
雄叫びからある程度距離をとったところで再度樹へと登る。
進路を変えたことで河への道のりから逸れてしまったから修正と周囲の状況確認を兼ねて。
木登りも三回目となると慣れたもので取っ掛かりを使ってスイスイ、瘤や枝を蹴ってピョンピョンと登れ、最初の半分ぐらいの時間で頂上付近まで登ることができた。
その内木登り関連のスキルを手に入れれる気がする。
あればだが…
「前後よし!左右よし!上空よし!」
指差し確認で龍がいないか確認をする。
「前後よし!左右よし!上空よし!」
念のためにもう一度確認。
横断歩道で左の後にもう一回右見るのと同じで慎重にいかないとね!
今進んでいる方角が河に対して平行に進むことになるから進路を変える必要があるな。
地形を頭に入れて樹を降りる。
シャアア
突然の鳴き声に辺りを見回す。
見回すが龍のような姿はない。
シャアア
「下ぁ」
次は正確に鳴き声を聞き取り声の方を見ると、下より巨大カメレオンが這い上がってきている。
くそ!次から下方確認も追加だ。
その前に現状をなんとかしないといけないのだが。
まだ距離はある、先生出番ですよ!
「"鑑定"」
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メガロキョニンガ
■■の森を生活の場として暮らすキョニンガ。
獲物が来るまで擬態を使い姿を隠し、油断をしているところを襲う。
レベル:34 状態:怒り
HP: 65/65
MP:72/110
____________________
さすが鑑定さん!
新項目状態まで出てるではないか!
さすができるお方だ!
状態が怒りってなんで怒ってるのだろうと凝視するとカメレオンの額には俺のスニーカーの跡がくっきりと残っていた。
────登るときに踏んじゃったのね…
さーせん。
レベルはゴブリンクラス。
勝てる可能性は高いと思う。
逃げ道もないなら、試すしかないでしょう。
「"ウォータースパイク"」
水でできた針がカメレオンに向かって飛んでいく。
頭部を狙ったつもりが、水針はずれて側面を削った。
シャアアアアア
どうやら中途半端な攻撃でより怒らせてしまったようだ。
次は外さないように頭部へと狙いを定め放つ。
シャアアアアアアアアアア
「よし!あっ─────えぇぇぇぇ。」
俺の放ったウォータースパイクは狙い通りに巨大カメレオンの目を捉え、痛みから暴れ樹から落ちていく。
完全に俺の戦略勝ちだな。
えっ、頭部が目になってる?
コントロールが悪い?
俺はピッチャーじゃないんだぜ。
結果よければ全てよし!
そう、結果が全て。
俺の足にカメレオンの舌さえ巻き付いていなければ全てよし!だった……
悪足掻きか落下するカメレオンの下が足に巻き付いた。
どうなるかもうわかるだろ。
落下パート2だよ!
でも、俺は前みたいには慌てない。
もちろん天才の俺はこんな事態も想定済みなわけですよ。
体を垂直にして手を下に向ける後は呪文を唱えるだけ。
「"ファイア"」
下へと向けた両手から勢いよく火を放ち続ける。
ほら、みんなが大好きアイ○ンマンの登場だ。
「おぉ~」
結果から言えば成功。
けど、絵面がアイ○ンマンじゃない。
どっちかっていうとス○ブラの「ファイヤー」って言いながら飛び上がるキツネだ。
あいつよく使ってたから別にいいんだけど…
問題は足に数百キロの重りをつけている状態では浮上するどころか緩やかに下がっていることだ。
そして、これクソ燃費が悪い。
1秒ごとに魔力と思われるものが凄い勢いで消費されている。
もう間もなく尽きるだろう。
ボッ ボッ ボッ
ほらね!
火出なくなったよ……
「あ~死んだ。」
呟くと同時に魔力が切れた反動か意識が薄れていき、落下に身を任せることになった。
書き溜めがつきました…
がんばって数日中には次あげます!
毎日あげてる作家さんまじ尊敬します!