ゴブリン
「ふんふんふんりゃー(なんじゃこりゃー)」
サワーナップルを10個程食べ満腹に浸っていると体の異変に気づく。
唇が少しピリピリ痒いと思っていたら熱くなりだし倍以上に腫れ上がり見事なたらこ唇が出来上がった。
どんなイケメンもブサメンへ変貌を遂げる腫れぐわいだ。
えっ、たいしてイケメンでもないから大丈夫。
うるせぇよ…
やっぱり体に悪いものでも入ってたのか。
まぁ、食べてしまったものはしかたないと諦める。
人間諦めが肝心ね!
歩き始めて暫くして日が落ちてきた。
そろそろ寝床を見つけなければ。
出来れば雨風を凌げる洞窟があれば最高だ。
あっ、キノコはお腹一杯になったから捨てた。
因みに唇も少し腫れがひき普通に話せるようになった。
一生腫れたままだったら世の女性が嘆き悲しむところだったぜ…
寝床として良さそうな洞窟は意外と簡単に見つかった。
見つかったがどうやら先客がいるようだ。
子供ほどの慎重に緑色の皮膚に醜悪な顔はファンタジーの定番ゴブリンが二匹。
ゴブリンより一回り大きくより醜悪さが際立つ豚鼻のオークが一匹。
化け物にしか遭遇してなかったからちゃんと定番の魔物がいて一安心。
「さて、どうしようか。」
茂みに身を隠し息を潜めて様子を伺う。
食事の最中だろうか。
オークは何かの足に囓りつている。
ゴブリンの一匹はここからはわからないが何かを食べている。
もう一匹は何もせずに、オークを呆然と眺めている。
何となくだが物欲しそうに眺めてる気がする。
無駄だとわかりつつも鑑定を使う。
「"鑑定"」
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フォレストゴブリン
■■の森を生活の場として暮らすゴブリン。
レベル:28
HP: 120/150
MP:56/56
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「あれ?けっこう見えるんだけど……」
これまで役立たず極まりなかった鑑定さんが遂に仕事をした!
喜びのあまりに小躍りしそうだったが気づかれるわけにはいかないからグッと堪える。
あと二匹の強さを知るために再び鑑定さんに頑張って頂くとする。
鑑定さん期待してますよ!
「"鑑定"」
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フォレストゴブリン
■■の森を生活の場として暮らすゴブリン。
レベル:30
HP: 180/180
MP:45/45
_________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
フォレストオーク
■■の森を生活の場として暮らすオーク。
レベル:■2
HP: ■■0/■■0
MP:■■/■■
_________________
ゴブリンはわかるがオークはわからないのか。
鑑定か俺のレベルが低くて見えないってとこか、もしくはその両方ってとこかな。
さて、どうっすかな。
ゴブリンがレベル28と30でオークが最悪で予想するとレベル92か。
92はないとしても30以上は確実だろう。
片や俺はレベル1。
普通に勝ち目がないな。
かといってここを諦めると暗い森をさ迷うことになる。
それだけはなんとしても避けたい。
ステータスウィンドウを開き考察する。
「使えそうなのは暗闇魔法ぐらいか。使い方わかんないけど……ディストラクション?」
ステータスとにらめっこしながら唯一使えそうな暗闇魔法をどうにか使うことができないかと頭を悩ましてると呪文のような言葉が浮かんできた。
知ってたけど忘れてたことを不意に思い出したような感覚。
不思議な感覚だ。
これで倒せればいいんだけど…
「男は度胸だ!"ディストラクション"」
うだうだ悩んでいても解決しない効かなかったら全力で逃走すればなんとかなるだろうと切り替え、オークに向けて放つように叫んだ。
「──うぇ」
結果から言えば成功した。
成功したのだがなんて言うのだろう。成功し過ぎた。
オークの頭上に黒い靄が発生したと思ったら、頭が拉げた。
そこからは唖然としてる間にオークは地面へと押し潰され、数秒後にはモザイク必須な見るも無惨な姿へと成り果てた。
殺すだけなら頭が拉げた段階で良かった。
完全にオーバーキルだ。
唖然となったのは俺だけではなく、傍にいたゴブリンたちも拉げたオークの血液を全身に浴び突然の出来事に口を半開きにして固まっていた。
しかし、もう一匹が逸早く立ち直り此方へと視線を向けてくる。
「気づかれた!もう一度だ"ディストラクション"──あれ?」
ゴブリンを捻り潰す為に唱えたディストラクションは発動しなかった。
何かが起きると腕を交差して構えていたゴブリンは何も起きないことに安堵すると醜悪な顔をより歪めるように口の端を吊り上げ駆け出す。
ヤバい!ヤバい!ヤバい!
どうするよ。
ご都合主義なファンタジーみたいに俺は格闘技なんて使えないぞ。
完全完璧にインドアだぞ。
くそ!
目前まで迫り来るゴブリンに向かって足元にあった石を投げつける。
「ギィ」
あまりにもおなざり過ぎる攻撃に避けられることを覚悟し、次弾になる石を拾おうと足元に石がないか探しているとまさかのゴブリンは悲鳴をあげて倒れてしまった。
ゴブリンを見るとなんと頭の一部が吹っ飛んでいた。
「ふっ、遂に俺の隠された力が発揮してしまったか。」
あまりの出来事につい中二が発動してしまう。
悲しい病気を発動しながらも、もう一匹が襲ってきてもいいように石を拾い上げるが、ゴブリンは未だに呆然として動く気配がない。
逃げるなら追いはしないが、あのまま居られれば邪魔になる。
手に持った石を握り直しゴブリンへと慎重に距離を詰めていく。
十メートルを切ったぐらいで、漸く近づく俺と気づいた。
「ヒィ、殺さねぁでぐださい。何でも言うごど聞ぎますから……」
俺の顔を見てちょっとキーの高い子供のような声色で泣き叫ぶゴブリン。
えっ、ゴブリンって話せるのか……