異世界
鼻孔をくすぐる新緑の香りに意識が覚醒する。
寝てたのか。
確か俺は……
意識を失う前の記憶が甦り、慌てて閉ざしていた瞼を持ち上げる。
「どこだよここ……」
視界を埋め尽くすのは緑、緑、緑。
鬱蒼と生い茂った木々に埋め尽くされた森の中で横たわっていた。
状況を把握しようと横を向けば樹齢数百年はくだらないだろう大樹が立ち並ぶ。
どこかの公園ということではないだろう。
「いつから日本は死にかけの人間を森へ棄てるようになったんだ……」
どうしたものかと頭を抱えていると違和感に気づく。
「俺撃たれたよな…」
視線を落とせば服を真っ赤に染め上げ腹の穴は塞がっていた。服に開いた穴の痕跡さえもきれいさっぱりなくなっていた。
「本当に何がどうなってるんだよ……」
呟きに答えが返ってくるわけではないが状況が状況だけにごちらずにはいられなかった。
「ん?手紙?」
途方に暮れていると先程までなかったはずの便箋が落ちていた。
辺りを見回し落とし主がいないか確認するも人の気配は感じられない。
こんなあからさまなに気づけと置かれているなら自分に宛てられたものだろうと拾い上げ中身を読んでみる。
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おっつー
はじめまして!
死に際の思考がアホすぎでウケるからノリで君を生き返らせた神だよ!笑
うまいこと辿り着けたかな?
久しぶりに向こうの世界から人を連れてきたから五体満足じゃなかったら申し訳!笑
てか、この手紙読んでるってことは大丈夫だったってことだから流石俺様だよね!!!
改めまして、アイティオピアようこそ。
君たちの世界でいうところ異世界だと思ってくれ。
異世界って聞いて勇者とか英雄想像した?
違うよ!
残念思考おつ!笑
まぁ、好きに生きていいから俺を楽しませてくれ!
暇なときにでも様子みてるからさ。
すぐ死なれても困るから少しサービスしといたから感謝しろよ!
じゃあ、がんばれ~
愛すべき神より
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「ぎゃー」
異世界に来てしまったという驚きよりも内容のあまりにもウザさから破り捨てようとしたらスタンガンを押し当てられたような衝撃が体を突き抜けた。
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そうそう、途中で読むのやめたり、破ったり捨てようとしたら痺れるようになってるから気をつけてね!笑
あと、もう間もなくこの手紙は爆発する気をつけろ!爆笑
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何事かと手紙に視線を戻せば紙の余白に文字が浮き上がっていた。
読み終えると同時に手紙を手放し駆け出すが、どうやら遅かったようだ。
三歩ほど進んだ先でけたたましい爆発音に次いで背後から衝撃に襲われ吹き飛ばされてしまった。
どうにか大樹の根に打ち付けられることで動きを止めることができたが、爆心地を見れば数メートル級のクレーターが出来上がっていた。
「おい、あれ放さなかったら死んでたぞ……生き返らせといて自分で殺そうとするとか頭おかしいだろ……」
神と名乗った手紙の差出人の奇行に驚きを隠すことができず唖然とする。
「はぁ……いつまでもこのままというわけにはいかないし、ここが本当に異世界っていうなら定番のアレもあるよな?」
中二的行動に羞恥心が沸き上がるのをぐっと堪えて、異世界ならあるだろうと期待しながら声に出して唱える。
「"ステータス"」
声に反応し半透明の板が目の前に形成される。
「本当にできたよ!やべぇテンション上がってきた。自称神はサービスしといたって言ってたけど、どんなチート使用にしてくれたんだ……」
半透明の板を覗き込む。
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トキヤ=フジ 18歳 男 人間
職業:無職
レベル:1
HP:250/250
MP:200/200
筋力:150
耐久:500
敏捷:100
魔力:100
知力:50
器用:150
幸運:5
スキル
火魔法Lv.1 水魔法Lv.1 痛覚耐性Lv.5
エクストラスキル
暗闇魔法Lv.1 鑑定Lv.1 世界言語Lv.2
称号スキル
変人Lv.7 不死者(仮)Lv.―― 創造伸の加護Lv.――
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ツッコミどころが多過ぎて絶句なんですが……