1/2
プロローグ
「♪♪♪♪~」
メロディーが絶え間なく響くこの感覚に、意識を集中させる。
場所は大ホール。並みのホールよりも音の上品さが大胆に、そして繊細に聴こえる。
ホール全体がゆったりとしたメロディーに包まれ、和やかな雰囲気になっていくことを感じる。
だが、それは長くは続かなかった。
途端、音楽が一転する。さきほどまでのパーティーのような雰囲気とは違う異質な雰囲気。
まるで戦場。
「音」という兵士が「楽器」という武器を手に、ぶつかり合う。ライフル、拳銃、刀、剣、戦車……
様々な武器を駆使し、戦う。だが、終わることが惜しいその音楽は確実に終わりに近づいていた。
「――ッ!!」
拍手と喝采が飛び交う。やりきった。俺は深々とお辞儀をし、足早に舞台を立ち去った。
金賞:弦楽 奏介
正直、俺の名前を見たとき何も感じなかった。バイオリンを弾いている時以外で達成感を感じたことはなかった。同世代のバイオリニストには俺に勝る者がいなかった。今思えば、それがつまらなくてしかたなかったのだ。
俺の心は、まるで音が鳴らなくなった楽器のように静かだった。