表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

正しい祈り方

作者: 孤独


ゴトンゴトン………



「やっぱり、列車は日本が一番ですね。予定通りに来なければ、お客様のクレームが来るほどですし」

「列車を流行らす日本がオカシイんだよ。外国は車、バイク、飛行機が定番だ」

「渋滞しますけど」


列車に揺られること、揺れること。3時間弱。

インドネシアへやってきた、伊賀吉峰いがよしみね王來星わんらいせい陳九千ちんきゅうせんの3名は、残虐な依頼を受けてこの国にやってきた。

彼等は中国マフィアの一派であり、ある人物に制裁を降すことになっていた。


伊賀は座席で新聞を読みながら、依頼された人物が起こした事を再度確認した。



「テロリストの首謀者が逮捕されるなんて、情けないですね。ねぇ、王くん。私に仕事で死ねと言われたら、死にますよね?」

「当然だが、今のは命令じゃねぇだろ?」



凶悪テロリスト。しかし、それは世界にたった一つ起こした事件。一つの罪で大々的に報道するのが、情報の悪さ。どんなものにも悪はあるもの。情報もそれの一つ。


「自爆テロを扇動する輩。その本人が死ねないとは……。いやはや、困ったものです」


取り押さえた警察を素早く懐柔できたのは不幸中の幸いですかね?

世の中、よくできてますよ。こんな愚かな悪の権化がいなければ、正義は成立していない。



◇    ◇



テロリストは武器を持つ。自分と同じ人間を沢山、もっとより、殺せる武器を持つ。訓練も要らない。渡された爆弾、起爆スイッチ、それを押すだけで良い。するだけで良い。大層自信ある勇気より、ドジのような気持ちで押すくらいでいい。



ガァァンッ



「おはよーございます。そして、さようなら」


首謀者のテロリストを引き取ることに成功した伊賀は、さっそく中国に持ち帰って尋問という名前の死刑を執行する。椅子にくくりつけ、身動き取れない男に屈みたくなるほど、強烈な白い光を浴びせる。


「ああ、気にしちゃいけませんよ。別に我が国や組織だけじゃない。でも、困るんですよ」


逮捕されたのが、盲目とした信者ならばこんな面倒な事はしない。

彼等は祈りと、虚偽な神の声に動かされた人。ゲスく笑っている人の声など、聞いた事も無い。その耳に流し込めば奇声も喚くことでしょ。


「その声は……その声は……」


伊賀吉峰の声を首謀者は恐れる。


「大丈夫。私達、中国マフィアがあなた方に技術を提供したことは闇に消える」


初めて出会い、その声を聞いた時。怯えるような声色ではなかった。脅すような怒気、失態を叱るような、ものではなかった。

にも関わらず。

いや、それが普通なの?疑問を抱ける。


「あなたが消えたらね?」


椅子に縛られ座る、愚かな首謀者の周りをテクテクと歩く伊賀。

今回の事件。本来ならば彼もまた自爆で死んでいるはずだった。上手くいけば、こんなことに時間を使う必要もなかった。いけないんだよ。できない仕事を頼んだ覚えはない。なんでできる仕事から逃げ出したと、社会的な質問と罰則タイム。言い訳不問。

それだ。ヤクザなんて、甘いな。


「自爆のスイッチは押せません。あなたができるのは、正しく祈ること。扇動された人達のように純粋に祈りなさい。従いなさい」


自爆テロなど。平和から見れば悪と言うだろう。

しかし、正義という悪という。心理や思想は絶えない。祈りも同じく絶えない。人々は不満を、不幸を、強く嫌って心に潤いを作る。行動する理念を与えてくれる。


「水を飲んだことはありますか?」


子供だって、液体の何かは飲んだことはあるだろう。久しい事もあるだろう。

手を挙げて、声を出し、蠢き、渇きからの脱却を伝える。潤いたいという理念。

捕まった首謀者は震えながら尋ねた。


「わ、私はこれから何を……」

「え?私は特にしませんよ?あなたが正しく祈るだけです」

「?………!!」



その意味を知った時。全てに謝罪し、後悔し、押せなかった罪の重さを知った。



◇  ◇


「正しい祈りなんざねぇ」


仕事を終えた王と陳は、旨いインドネシア料理を頂いていた。とても美味しいかどうかは、その人次第。どこにでもありそうな水も、渇きがなければ美味く感じない。

陳にとってはインドネシア料理はどれも辛いものばかりで、舌の刺激に耐えられずに水を飲む。


「か、からぁ~い」

「女みたいな声出すな、情けない」

「ううっ……美味しいけど、辛いのは苦手なの」


舌の訴え。感覚の訴え。それが人間の持つ訴えの元だ。



「それと、王。テロリストの首謀者、そのままにして良いの?」

「?なんだ陳。お前、伊賀から何も聞いてねぇのか?言葉通り、”そのまま”だぞ」

「………あー、僕達も帰るもんね。2日後には」

「俺とお前は単なる慰安旅行で来ただけ。あいつは責任とり。その違いだ。しっかり休んで楽しもうぜ。また、でけぇ戦争が始まるかもしれねぇ」

「そういえばそうだった。可愛い子にナンパでもするんだったっけ!?」



人は祈ることをするだろう。だが、祈ることを必要としないだろう。

人は行動をする。



ペラッ


伊賀は椅子に座って本を読む。これから列車でまた、飛行場に行き。中国へ帰る。AMAZONで買った本の読書はこの時にしかできない。

それは仕事のこと、夢のこと、やるべきこと、したいことを取り除く。また別の自分になるための、休息。陳も王も同様に……。

祈りもそう使われるべきこと。正しくはそうできる時間のこと。



「神様、ワタクシを助けてください」


捕まった首謀者は祈り続ける。この窮地を、何もできないという状態から助かるための祈りをし続ける。

それは死でもいい。早く。苦しまずに……。



ペラッ



「それが、祈りって意味です」


伊賀はページを捲って、本の続きを読む。

正しい祈りをすると同じように。



およそ1年後、テロリストの首謀者はミイラのような姿で世界に発見されたという。





自爆テロのニュースは毎度、平和の中にいる自分にとっては惨く感じます。

何かできるわけではないですが、こっちで社蓄となってくれたらいいなって。思います。


そんなわけで自爆テロするくらいなら、私と一緒に配達をしませんか?

来月から朝8時から朝6時の2時間……いや、22時間の勤務、週6日なんですけど?どうですか?爆弾を積んだトラックを運ぶ感じに、商品を積めたトラックを運転しませんか?


仕事を辞める時は大量の歩行者達と共に死ねますので、自爆テロと変わりはありません。っていうか、人いねぇんだよ!!トラックを運転できる人は死なないで!!労働者と歩行者の命を大切にしろ!!


まぁ、


さすがに嘘を少し盛ってますがね。週6日ではないです。トラックも運転できませんよ。人がいないのと勤務時間が異常なのは確定ですけど。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ