Ep1:5
おじさんの部屋の本棚にこんな本があった。
それは中国の話で買っていた馬が誤って窯の中に入り込んでしまい、そのまま陶器を焼いてしまったとのことだった。
その陶器はとても綺麗な赤色に染まっていたという。
また、同様に赤子でも同じような話があり、この話を基にした小説があるぐらいだ。
今日は昨日できた釉を実際に塗って焼いていく作業だ。
これは細心の注意を払いつつも、わたしがいるということでおじさんは材料を買い足しに近くの大きな町に出かけた。
つまり、私たち三人だけなのである。
実にいい日だと思う。
確かに焼く作業は快適とはいいがたい環境にあるものの、ちゃんと注意すればどうということもない。
ちなみにわたしがおじさんに再び陶芸を習うといってからすでに二月ほどたっている。
そして、例の同調女はまだ生死の境をさまよったまま、不審な首狩り事件もまだ続いている。
今は焼く作業をしている。
二人はテレビでも見ているのだろう。
ここには工房から家までの内線電話がある。
これであいつらをおびき出すのだ。
『あ・・・あの・・・』
『何よいきなり!それよりちゃんとできてんの?』
『そ・・・それが・・・温度の加減を間違えてしまって・・・割れてしまったみたいなんです・・・』
『はぁ!?あんたなにやってんのよ!!』
もちろんそんなことはない。
しかし、こういえばすぐにこっちに来るだろう。
・・・そうなればあとはこの窯がお前らの墓場だ。
『あ・・・あの・・・その・・・本当にすみま・・・』
『ああ、もう!ふっざけんじゃないわよ!!待ってなさい、今そっちに行ってやるから覚悟してんのよ!!』
そういうと内線電話はぶっつり切れる。
あの二人はすぐにでも飛んでくるだろう。
だから、工房の入り口に近い物陰に隠れる。
手に持っているのは火かき棒だが、あの二人を気絶させるのには十分すぎるだろう。
できれば血を出させたくはない。
後処理が面倒だからだ。
「クッソ・・・あのクソ女!!どこにいるのよ!絶対にぶっ殺してやる!」
それはこっちのセリフだよ。
さあ、もっとこっちへ来い・・・。
さあ・・・!
「うっわ・・・なにここ・・・あっつ・・・」
「ったく・・・なんで私らがこんなとこまで・・・っっ・・・」
目の前に来たリーダー格の女を横から火かき棒で思いっきりぶん殴る。
多少血は出ているが、飛び散るほどではない。
気にすることはないだろう。
「んな・・・!な・・・なにして・・・」
すかさず、目の前の出来事に理解が追い付いていない取り巻き女も殴り倒す。
こっちは一発で気絶しなかったようなので、もう一発殴っておく。
・・・よし、気絶したようだ。
「なにこいつ・・・おもた・・・散々私のことをデブだのなんだの言って人のこと言えないじゃん・・・」
なんとか苦労して窯の中にリーダー格の女を投げ込む。
途中荷台を使ったりして、うまいこと投げ入れれた。
窯の下のほうは2000度以上にまで温度が上昇する。
死体はおろか、骨すらも残らないだろう。
焼くのにはさらに一日、覚ますのにもう一日程度必要になる。
おじさんは窯の中の様子を絶対に確認するだろう。
申し訳ないが、おじさんにも死んでもらわなくてはならない。
後日。
できた焼き物は粉々に砕いて捨ててきた。
例の本も焼いてきた。
これで、あの焼き物の残骸を見つけたとして、それが殺人の証拠だということに気が付く人はいないだろう。
そのおじさんの失踪は瞬く間にクラスで話題になった。
というか、私のおじさんが失踪したから葬式に出たということで話題になったというべきか。
二人の失踪もおじさんの失踪と何か関係があるのだとみんな勘ぐっているらしい。
現に二人が最後に行っていたのはあの陶芸工房だ。
そう思うのは正しいのだろう。
私も数日適当に工房の中に隠れていた。
というか、地下の薬品保管庫に監禁されていた風を装った。
そのドアは夜間になるとかぎが掛かっていなかった場合、自動でロックされる。
一応カギであることもできるが、こうして私が中にいるにもかかわらず、監禁された状況を作り出すことができるのだ。
一日とたたずに助けは来た。
わたしは例の首狩り事件の犯人と酷似した犯人像を告げ、その人に罪を擦り付けることにした。
私以外の二人は犯人に逆らったため、どこかに連れ去られたと言った。
工房ということで、周囲に民家はなく誰かが見ているわけでもない。
どうやら、おじさんの私以外の陶芸を習っている人が来たとき、おじさんがいないにもかかわらず、窯で焼いていたため不審に思って薬品保管庫を探したところ、私が見つかった。
その後、私に事情を聴いて通報したらしい。
おなかがそろそろ減ってきたころ合いだったので助かった。
私は精一杯悲しむ演技をした。
確かに悲しくはあった。
しかし、仕方ないことだった。
おじさんは優しかったがそれだけだ。
ただの復讐のための道具であることには最初から変わりはない。
申し訳ないことをしたという罪悪感はあるもののそれ以上の感情はない。
だから、罪の意識に押しつぶされるということもない。
さて、残すのは私を裏切ったあの男一人となった。
今度はどう殺してやろうか。
※注意:当然のことながら実際は素人が陶芸工房などの窯を用いて焼いたりすることはできません。




