Ep2:5
「逃げろ!逃げろー!」
破顔の兵士たちは最初は何とか倒すことはできた。
しかし、そう長くは続かなかった。
すぐに私は撤退を余儀なくされ、破顔の兵士もアジトにまで流れ込んできた。
仲間はみな殺され蹂躙され、私たち戦えるものは足止めをした。
しかしそれはただの時間稼ぎであり、私たちはなすすべもなく死ぬしかなかった。
「ここは通さねえ!絶対にだ!!」
「理想のために」
「「理想のために」」
「「「理想のために」」」
キリがない。
やはり、無理だったのだろうか。
国一つを変えるなんて。
・・・私が弱気になってどうする。
私は今までずっといろんな時間の中で目的を果たしてきた。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
「ぐ・・・」
「リーダー!?」
破顔の兵士が放った銃弾が命中する。
一応防弾チョッキは着ていたが、もうボロボロで役目を果たせなくなってしまっている。
「よくもリーダーを!?」
「バ・・・カ・・・逃げなさい・・・よ・・・」
たかが銃弾ぐらいなんだというんだ。
これぐらいの痛みならどうということはない。
「このぐらいで死にはしないわよ・・・ちょっと肩かしなさい」
幸い急所は外れている。
これぐらいでは人は死なない。
「リーダー・・・」
「任せなさい。こいつらぐらい余裕よ」
「・・・すいません」
さて・・・と。
破顔の兵士はまだ50はいる。
もはや死ぬのは確定だろう。
しかし、私はしぶとい。
せいぜい10分程度だろうが時間稼ぎはできるはずだ。
この辺だろうか。
俺たちタイムトラベラーは存在するだけで微弱な歪みを生み出してしまうらしい。
それが何かに影響を与えることはないらしいが、タイムトラベラーの居場所を割り出すには最適というわけだ。
「お、いたいた」
相変わらずこいつは死にかけだな。
「・・・遅いじゃないの」
「は?俺がお前を助けると思ってんの?」
「誰もあんたなんかには期待してないわよバーカ・・・」
あー、これ助からんな。
今何年目だっけ。
「おい、お前何歳になった?」
「そんなの覚えてないっての・・・。いくつだったかしら」
俺たちはほぼ不死身に近い。
タイムトラベルをした影響なのだろう。
年はとりにくくなったし、生半可なことでは死なない。
そして、死ぬのには一定の年月を経過している必要がある。
そうでなければ肉体を一度分解し、再構築する・・・つまり全く別の人間に作り替えられてよみがえるのだ。
ある程度の記憶は受け継ぐものの完全な形ではない。
ちなみに死ぬのに必要な年月は生まれた瞬間から数えられてるらしい。
いわゆる寿命というやつでないと死ねないのだろう。
「ふぅ・・・うぐっ・・・ぐ・・・あ・・・あがあああああああ!!」
そういえば、肉体を分解する過程というのはかなり痛いらしい。
まあ、当然だわな。
「ぐぅ・・・があああ・・・」
「・・・俺はお前を助けたりもしない。かといって殺したりもしない」
手を払いのける。
あまりの痛みに助けを求めたのだろう。
「殺してもお前は再生する。俺はお前を説得して連れ戻すとか・・・そんな面倒くさいことをしなくちゃならないんだよ」
分解段階が終わり、再生段階へと入ったようだ。
俺は見届けるしかない。
さて、次はどんな感じになるのかな。
「な!?お、お前らなんのつもりだ!」
例の部屋に来てみればすぐに破顔の兵士に取り囲まれた。
それにいつか見た大国の使者もいる。
「お、お前は大国の・・・!」
「あなたの役目は終わったんですよ」
なんだと?
私の役目が終わりだと?
私は理想に最も近い国民として、この国のトップのはずだ。
それが・・・終わりだと!?
「破顔の兵士は予想以上の成長を見せてくれました。あとはこのデータをメタルヒューマンに統合すれば無敵の軍隊を作ることができます」
「な・・・裏切るというのか!?」
そもそもこいつは最初から怪しかったんだ。
いつから私はこんなやつを信用してしまったのだろうか。
「あなたは予想以上に疑い深かったですからね。念のためこれを持ってきて正解でした」
「それは・・・!?」
やつが取り出したのは一つのカプセル式の錠剤。
私が薬を盛られたというのか?
「いったいいつ・・・とでも思っているのでしょうが、薬を盛るタイミングぐらいいくらでもありましたよ。私以外にもその疑い深いところを発揮するべきでしたね」
くっ・・・。
破顔の兵士では私ごときでは話にならない。
すきを見て逃げ出すしかない。
だが、今はその時ではない。
「・・・私をどうするつもりだ」
「殺します。この場で」
なんだと!?
「ま・・・待て!私はお前さえも知らない新兵器を・・・!」
「嘘をつくならもっとまともなものにしてください。それではわたしはこれからやるべき仕事がありますので」
く・・・くそ・・・。
「くそおおおおおおおおおおお!!」
さて、央山君が戻ってくるらしい。
喜ばしいことだ。
央山君はさらに理想に近づいた形で僕たちのもとに戻ってくるのだ。
僕たちはそんな央山君がとてもうらやましく、より一層理想を目指すことに磨きがかかることだろう。
「あ、央山君が来たわ!」
「よし、みんな!央山君を迎えてあげよう!!」
僕たちは央山君を迎えるべく あらかじめ決められた位置に整列する。
さあ、央山君が来るぞ!
「・・・」
「おめでとー!!」
?
あれ?
央山君の様子がおかしい・・・?
まあ、きっと困惑しているんだろう。
「・・・あなたを理想の国民にします」
「!?」
突然央山君が田辺さんの顔を殴った。
ぼ、暴力をふるうなんて・・・!
理想の国民になったんじゃ・・・。
「これは仕方のないことです。私たちは笑うべきなのです。これが理想の国民となるべき最も効果的な方法なのです」
笑う・・・?
顔はぐちゃぐちゃでそんなの確認できるわけ・・・。
しかし、央山君はクラスみんなの顔をつぶして回っている。
これが・・・理想・・・?
そんな・・・おかしい・・・。
こんなのって・・・こんなのって・・・。
「あなたを理想の国民にします」
「お・・・央山君・・・ぼ、僕だよ!僕たち仲良しだっただろ!?だ・・・だから・・・!!」
お・・・央山君・・・?
僕の顔に伸ばしていた腕をひっこめる。
わ、わかってくれたんだ!!
「あ、ありがとう!僕君のことを信じて・・・?え?」
僕はとても幸せだった。
だけど僕は分かったんだ。
それが偽りの幸せだったと。
そして、こんな理想は間違っていると。
「や・・・やめてよ・・・!こんなのって間違ってる!絶対におかしいって!!」
「あなたを理想の国民にします」
それが僕の最後に聞いた言葉だった。




