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末路  作者: 緑茶
理想の人間『太郎と花子』
10/15

Ep2:1

 普通に間違ってEp3を投稿してしまった・・・。

 申し訳ないですが、一旦Ep2として投稿していたEp3の内容を削除し正規のEp2の内容を掲載します。

 私たち人間は生まれた瞬間するべきことが決まっている。

 それは元気に泣くことだ。

 既定の鳴き声に満たなければその赤ん坊は一定の基準値を一定の期間までにクリアしなければ殺処分される。

 次にするべきことは歩くことだ。

 はいはいをし、その次に立って歩くのだ。

 ほかにも細かく決められた成長過程があり、それをすべてクリアして初めて学校に入れるのだ。



 学校でまず一番最初に教わるのが理想の人間像、太郎と花子だ。

 太郎は誠実で嘘や弱い者いじめが大嫌いなやさしく頼れる男の子だ。

 一方花子はお淑やかで人をたてるのがうまい女の子だ。

 私たちはそれぞれの性別に応じた理想像を目指す、いやそのものになるのだ。



 学校に入る前までは規定値を超えることは許されても、学校に入ってからは規定値を上回ることも下回ることも許されない。

 太郎と花子そのものにならなくてはならないのだ。

 規定値はすべて太郎と花子に基づいて設定されている。



 「「「先生、おはようございます!」」」



 今日も完璧なタイミング、声量、お辞儀で先生に朝の挨拶をする。

 髪型、服装、爪の長さから髪質など全てにおいて統一されている。

 それを嫌とは感じない、むしろ私たちは統一され、洗練された集団であることに喜びを感じているのだ。

 今では先進国のほとんどが統一された素晴らしい国家となっている。

 当然それぞれの国に応じた統一形式をとっている。



 「やあ、おはようみんな!今日も元気に頑張っていこう!!」



 先生ももちろん統一されている。

 理科教師、国語教師、数学教師・・・この国では各科目の教師になるためにも規定値が存在する。

 いや、日常動作全てにおいてもその規定値は存在する。

 公私ともに完璧でなくてはならないのだ。

 それを不自由とは感じない。

 全ては統一された国民になるため、それは国民すべての喜びであり目標であるのだ。

 国民すべてが理想の国民となった瞬間こそ私たち国民の至福の瞬間なのである。




























 「やー、順調に進んでますねえ」



 「ふふ・・・そうだな。この『同一個体量産計画』は素晴らしいよ」



 「この程度造作もありませんよ。しかし・・・我々も理想にならなくてはならないとはなかなかに面倒ですなあ」



 「ほう、では規定値を下回る行為に走るのかね?そうなった者たちは矯正施設送りだが」



 規定値を明らかに下回ったり上回ったりする行為をした個体は矯正施設と呼ばれる場所におくられる。

 その場所では聞くに堪えない修行を経て『立派な人間』に強制的になるんだとか。

 詳細は知らないが、あまり聞きたい類の話ではないのは事実だ。



 「それは勘弁願いますな。私には彼らの考え方は理解できませんししたくもありませんので」



 それは私も同じだ。

 表向きは理想の人間だが、実際はこのような理想像とは程遠い、むしろ正反対の人間なわけだ。



 「多少心狭くはあるが、素晴らしいだろう?この国民すべてを統べる快感!そして、私たちはそれをとがめられることもない!なんといったって国民そのものがそれを望んでいるのだからな!」



 本当に素晴らしい。

 しかし、このことは私たち二人意外に知るものはほかの国のトップぐらいのものだ。

 つまり今や先進国のほとんどは独占状態にある。

 我々国のトップは国の政治の執り方こそ今まで通りだが、実質すべての権力を持って行っているといってもいい。

 というのも、我々国のトップは国民が選んだ理想の国民ナンバー1だからだ。

 その国民ナンバー1のいうことはすべて最も理想に近い。

 そして、理想を目指す国民にとってはまさにそれは神の一声、従わないわけがない。

 だから、全国民に向けて自害しろ、といえば迷うことなく自害するだろう。

 今やこの国はすべて私の手中にあるといっていい、いや、もはや掌握したも同然だ。



























 「「「先生、おはようございます!」」」



 「やあ、おはようみんな!今日も元気に頑張っていこう!!」



 いつも通り完璧な挨拶だ。

 そして、先生も完璧だ。

 しかし・・・。



 「先生!」



 「ん?どうした?」



 「央山君が挨拶をしていません!」



 「何!?」



 挨拶をしていないだと!?

 私たちの挨拶は完璧に統一されていなくてはならない。

 それは声量、タイミング、音程に至るまでだ。

 聞いていて心地よいものでなくてはならない。

 それなのに挨拶をしない人間がいたらどうだろうか?

 完璧であったものが完璧でなくなってしまう!

 私たちの人生にはテンプレが用意されているのだ。

 それをわざわざ逃すとは人生を棒に振るということ。

 自らだけでなく周りさえにも迷惑をかける最低人間ということだ。



 「央山、どうして挨拶をしなかったんだ?」



 「そ、その・・・」



 「さっさといえ!男だろ!!」



 「は、はい!わ、わたしは理想の人間に近づくため、家の手伝いを夜遅くまでしていて・・・!」



 そこで先生が央山を殴る。

 見苦しい言い訳をするなんて理想の人間に程遠い。

 努力は結果が出て初めて認められるのだ。

 それにテンプレ外の努力なんて努力ではない。

 それは一定の和を乱す迷惑な行為でしかない。



 「わ、わたしは・・・」



 「お前の言い訳なんていい!統一を乱し、なおかつ言い訳をしたことでお前は規定値を大きく外れてしまった。この意味が分かるな?」



 規定値を満たす満たさないによってポイントがついていく。

 そのポイントが0ポイントを下回ったときその人は大迷惑な人間として矯正施設におくられるのだ。



 「きょ・・・矯正施設は嫌です!」



 「おっとー央山君、太郎は好き嫌いをしたかな?」



 「た・・・太郎は・・・し・・・しません・・・」



 「なら、文句を言わずに行くんだ!」



 「は・・・はい・・・」



 矯正施設に送られるととてもひどいことが待っているらしい。

 それはすべて子供のころ学校で聞いたことだ。

 ちなみに噂話や憶測で物をいうことは禁止されている。

 それは人間性の規定値を下げることにつながるのだ。



 「いいか、みんな!世の中にはテンプレートがある!これは国の偉い人がみんなのために考えた誰でも理想の人間になるための最善の道なんだ。その道を外れることをわかりやすく示すために規定値というものが存在する。それを上回ったり下回ることはテンプレートから外れてしまうことになる。そして、このテンプレートは誰かが乱してしまうとみんなに迷惑をかけるんだ。だから、みんなが守る必要があるし理想の人間になるチャンスをなぜ逃す必要がある?せっかく理想の人間になれるんだからみんなで頑張ろうじゃないか!!」



 「「「おおおおお!!」」」



 その先生の言葉にみんなが歓声を上げる。

 もはや央山のことなど頭にない。

 特別に仲の良かったもの、いわゆる親友さえも先生の言葉に涙を流しているぐらいだ。

 明日央山のことを聞いてもきっと忘れているだろう。



 さあ、次の授業も完璧にみんなでこなしていこう!




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