第八話 テレビ
古い家電屋。おばちゃんの駄菓子屋と雰囲気が似ていた。
店内を遠目で覗くと新品の家電の中に古い物も混じっていた。
そしたら外国人が店から出てきた。
そうか、外国人客を狙っているのか。
すると「テレビ付けよっか?」
と店から顔を出したおじさん。
「まだアナログ観れるんだよ。今、付けるね」
そう言って、もう懐かしいアナログテレビを付けた。
やっぱり画質が悪いな。
でも映画とかならこの位が逆に良かったりするんだよな。
普段テレビなんて携帯でしか観れないからな、しばらく観てるか。
「あなたはいつだって私の言うことに耳を貸そうとしなかったからじゃない。私寂しかった。あなたが居なくなれば寂しさも消えると思った。だから殺してしまえと思ったのよ。ーーーごめんなさい」
少しだけのつもりが、すっかり朝ドラに見入ってしまった。
背筋を伸ばし、震え上がらせたあくびがでかい。
「午前九時二十分、最初のニュースをお知らせ致します。
二〇〇二年のOL殺害事件に関わった逃亡を謀っていた最後の一人であるとして、
金本明人容疑者に逮捕状を取る方針を出しました」
テレビに映る名前。俺は眉をしかめた。
硝子に手をつき、おもいっきり見つめた。
テレビはいつもの他人事。
こうして身内になにが起こるか分からない。
不安で一杯だった。
ポケットが震えた。
「信、テレビ見たか?倉庫で待ち合わせな」
けっくんからの電話だった。
尚重い足を踏み込んだ。
倉庫の中には二人いた。
そこに一人だけは居なかったが。
「明人は?」
「まだ」
今、聞きたいことがある。
「昨日俺が帰った後、二人は明人と一緒にいた?」
「いや、一人にしてって言われたよな」
そっか。安心した。ホッとした......
「何?急に集まって」
背後からの聞き慣れた声。
「何で深く帽子被って来いなんて......何?信」
視線を送りすぎた。「いや......」言葉が詰まる。
「テレビ見てないの?」
「見てないけど。何で」
言おうか迷った。
本人が知らないのならこうするも親切か。
黙っていようかと思っている自分は、すでに黙っていた。
無論、吹く風の当たりは強い。
「逃げるなら俺達も付いて行く。その必要があるならだけど」
けっくんの迷いがあった。
「何もしてないよ......やめてよ」
皆、心の中で考えている。その静けさが物語っていた。
「大丈夫。ちゃんと信じてる」
俺は心の言うまま明人に聞こえるよう声に出した。
「たまったもんじゃない。犯人捕まえたって言ってたよな。あの警官」
壁に寄りかかり『なんなんだよ』と玄二は言い、壁を蹴った。