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ビー玉  作者: ria
2/9

第二話 瓶詰めの友愛

信のことはちゃんと見えてるから


「お前達はこんなことで人生を無駄にし続けるのか」

二台目の車に乗っている俺達に警官が言う。

今は何を言ってもそれこそ無駄だ。

俺は黙って聞いていた。


「聞いてるのか浅丘(あさおか)

あさおか? 誰だそれ。

「おい浅丘」

しつこく言ってるから、つい警官のほうを向いてしまった。


「なっ分かるか」と俺を真っ直ぐ見つめる視線。

まさか

「俺に言ってんのか」

「さっきからそう言ってるだろう」

「俺が誤解されてる奴が浅丘って野郎なのは分かったけど、俺じゃねーよ」

「あっそっちが浅丘か」

と言い、隣を指さした。

「俺は光谷(ひかりや)だよ」


「お前等偽名か」

「俺は死ぬまで、石垣兼(いしがきけん)だ」


「俺は嘘つくけど、けっくんは嘘つかないよ」

と光谷は俺を庇ってくれた。


そんなとき、運転手が「前の車なんか変ですよ」と言い出した。


車に視線が集中し、俺は異変に気付いたんだ。

「あいつら何やってんだ」

「遊んでんのかな」と光谷が言った。

「んなわけねーだろよ」

と俺は吹き出し、少し気が楽になった。


「おい、どうした」

と警官が無線でやり取りを試みたが、反応がない。


ーーその直後


「危なっ」と光谷が声を上げた。何かと思ったらそのとき、前の車のドアが開き警官が転がり落ちてきたんだ。


車を止め、運転手を残して様子を見に行く警官。

車に俺達も残して……。


いくら手錠をしているから、と言っても無防備すぎる行動。

だからと言って、降りるつもりはなかったが、前の車から信達まで降りてきて、その足は今にも逃げ出しそうだった。


俺は焦りから車を降りてしまった直後、信達は走り出した。

「逃げろ」

その言葉を残して。


白羽の矢は俺達に向けられ、どうすることもできるわけなく、信の後を追った。




ーーーーーー




どこまでも走った。仲間とはぐれても、大丈夫。皆行く所は決まっていたから。


「おばちゃん」と助けを求めたここは、駄菓子屋だ。高校の時、授業をサボって好奇心から知らない通りを歩いていたとき、たまたま見つけた場所。

駄菓子屋なんてまだあるんだと、毎日寄っていた。

その頃から居る、店員のおばちゃんだ。


家に帰らずにずっと居たときも、おばちゃんは無理に帰そうとせず、駄菓子屋に泊めてくれたこともあった。

その代わりに店の手伝いをしたりして。


「どうしたのそんな走ってきて。やだ、手錠なんかして何したの」

「なんか逃亡者とか言われて、怖くなって逃げてきた」

おばちゃんは吃驚な顔をして、困った顔をした。

「本当に何もしてないんだね?」

「うん」と俺は頷いた。


どこまでもおばちゃんは優しいのだろう。

「あたしはあんたを信じるよ。ずっと見てきたもの。嘘ついてる目じゃない」


「信、やっぱりここか」

途中はぐれた明人も、けっくん達も来た。

いつもと違った風景がおばちゃんの眼に焼きついた。

全てを悟ったかの一瞬の表情を俺は見た。一秒の隙を一秒で埋める。

おばちゃんは、あの日のように俺達を迎え入れた。


「こんな暑い中走って、疲れたでしょう。これ飲みな」と差し出されたラムネ瓶。

「金持ってないからいいよ」と言って断った。

「いいから、おばちゃんサービスよ。愛情たっぷり注いだから」

そう言って四本のラムネをくれた。


俺は「それなら尚更いいや」と茶化す。

おばちゃんは「もうっ」と言って、軽く俺の頭をぶった。


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