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ビー玉  作者: ria
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第一話 ラムネ

生き方は、ビー玉みたいに転がってるから

「全ての人と幸せを、分けてあげよう」


経験したこと、夢の話、うまかった飯、

俺達はいつでも幸せを分け合った。


今日もまた俺の幸せは分けられた。

ねぇ 幸せと言えるかは自分で決めるんだよ。


「知ってる?ラムネの中にビー玉が入ってる理由」

「あれってマジで何なの。邪魔なんだけど」

「知ってんの?」

俺が一言喋れば、飛び交う声は心地良くなっているくらい聞いている、いわば音か。


「あれは昔はコルク栓が高価で再利用も出来ないしお金が掛かるって事から安くていくらでも手に入るビー玉を栓代わりにしたらしいよ」

俺は終始どや顔で言い切ったが……

三人の内の二人は、

「ふーん」

とだけ、怠そうに言い。


「あ~それ聞いたことあります」

と残りの一人も言った。


「でも飲みにくいし、ビー玉で一気飲みできねぇし」

「逆にわざと、一気できないようにしてんじゃない」

とまた怠そうな口で言うので「じゃぁ、なんでか言ってよ」

と俺は対抗心を向けた。


「ほらさ、小さい子もお年寄りも、咽せないで飲めるように」そんな答えが返って来

「あーー」なんて真面目に信じて

「そのほうがしっくり来る」

と俺以外共感した。

俺の正しい情報には誰も共感してくれないんだ。

俺はいつも人を見つめている。不平等であること、意地悪すること、罪を見ている......


仲間は今なお膨らむ話に夢中になっている。

どんなことを話しているのかな。再び会話に耳を傾けた。


「ラムネ飲みたくなってきた」

「暑いしさ買ってきてよ、信」

もう話は終わろうとしている段階か。

ていうか俺に振るなよ。

「金持ってねーの?」

そう言われポッケの中を探った。

「うーん。ない」

流れで、みんなしてポッケに手を突っ込んでいるが誰も一銭も持っていないのは見て分かる。

暑さなんて、気を紛らわせば良いんだよな。


「あ!」

その声に反応した、六つの視線を感じながら、すでに俺の頭の中は想像が動き出している。


その辺に落ちている石コロを拾い、思いつくままに、片っ端からアスファルト一面に書き上げていく。

とてつもなく快感だった。自然と笑みがこぼれるこの優雅を幸福を、さぁ分けたいんだ。


そこからはあっという間で、十分ってところかな

「出来たよ」


皆なぜか凄く汗をかいていたけど俺は清々しかった。

暗号みたいに並ぶ言葉、ひとつひとつが後の俺の大事なものになる気がした。


「♪俺らの全ては、地球の全てだ、隠すようなものも、地球には見えてる。

現実、理想、ノンフィクションやフィクション、区別できないなら、やり過ぎんじゃねーぞ」


ここは小さな倉庫、音痴な声と普通の声が混じり合った、人間が出す最も自然な歌声がそこに響いた。

俺の歌声? そりゃもう素晴らしいものだったよ。


「暑いじゃねーか」

「そうだそうだ」

「暑いんだよーーこっちはよ。てめぇが作詞してる間の一時間返せ」


そんなに経っていたのかーー

「ごめん……」

今は頭を下げたほうが良さそうだな。


「どこから歌って涼しくなる発想になるんだ、お前の頭は天国の鐘が鳴ってたのか?」

そこまで馬鹿にされるとムカつくな。


「でもちゃっかり歌いきってたけどね」

「うっせ」

「時間かけた分には、良かったですよ」

誰も素直に俺を褒められないのか……。


「いいから、ラムネ買ってこいよ」

「だからお金無いって」と俺は言った。

「そんなのどうだっていいんだよ。お前らみんな俺のパシりなんだから、黙って買ってこい」とまさにあんぐりだ。

「なんていい加減な」と必然の言い返しだ。


こうしていつもの様に、俺達の夏を過ごしていた。そんな日もあった……。

俺達の壊されたものは、ラムネ瓶に閉じ込められたビー玉のように、一度壊さなきゃ取り戻せない大切なものだったのに。


背後からいきなり、荒らげた声がした。

「お前ら動くな」


それは警察ドラマなんかで、よく聞く台詞。

何かの撮影でもしているのか。


声がしたほうに顔を向けると、二人警察官がいた。撮影のためだろう……と思ったが、明らかにおかしい点があった。


知らない人に刃物を突きつけられる夢を見たとき、実際のことのような恐怖を感じた。

あの感覚で今、俺達は銃口を向けられている。


吃驚している間もなく、「動くな、動くな」と警察官が入ってくる。


「何なんですか」と俺は自分を落ちつかせるためにも言った。

「喋るな!動くなよ、喋るなよ。手を出せ。手、手」

警察官にそう促される。

良かった。こいつポンコツだ。


俺達は武器を持っていない証拠として手を出した。

横一列に並ぶ八本の手を順番に金属のはまる音が連発し、

「え?」

という、四人の声が重なった。


「えー逃亡者四名全員確保しました。応援をお願いします」「了解しました」


その音は柳沢慎吾の物真似と同じだった。


そうとして逃亡者ってなんのことだよ。

逃亡もなにも、職務質問すらされたことないのに。

「ちょっと待てよーー人違いしてんだろ」

と仲間の一人が言った。


「お前達はもう俺に捕まったんだよ。

俺が捕まえたんだよ」

「だから関係ないんだって」

と仲間が粘るが

「関係ありありだよ。四人だろ、男だろ、赤い服、オレンジの服、青い服、白い服、こんな見つけやすい逃亡者いんねーよ」と疑ってくる。


たまたま俺達は、四人の逃亡者の特徴を捉えすぎてたにしろ、けど肝心の顔は、全く違うはず。なのにどうして。

まさか……顔までそっくりなんて事……ないよな。

想像したら笑える。

俺は口角を下げ、薄ら笑いをした。


「笑ったな」

やばい、怪しまれた。こっちに来ちゃうよ。

「笑ったな」


「いやーーーー」

俺が言い訳をしようとしたとき、二台のパトカーが応援に来た。


「話は向こうで聞くから」

と二手に分かれ車に乗せられる。


一瞬焦ったが、考えてることは皆同じようだ。

あっちに行けば、すぐに間違いだってことに気づくだろう。


俺と一緒に乗ったのは一番真面目な明人。

俺の右隣と彼の左端と警察官に挟まれている。


ふと、俺の隣の警察官が手帳のような物を取り出した。

そこには何かが書かれていた。

流し目で中を覗いてみる。赤……白……黒髪2人……175㎝……似顔絵などが書かれていた。


これは犯人の特徴か?

不覚にも似顔絵が俺に似ている気がした。

写真じゃない点から、撮る前に逃げ出したか。

俺は焦った。このまま捕まったら一生出られなくなるかもしれない……。

俺は理性を失っていた。



そのとき……

「緊張するか」と警察官が彼に聞いている。

「っ…………はい」

思いも寄らない言葉に戸惑った様子だった。


「お前は他の奴とちょっと違うな」

「そうですか……」と彼は言い

「真面目づらしてるのか」

結局そんなことを言われ、そのまま下を向く彼の腕に、俺の腕を二回突っついた。


俺は振り返り、後方からついてくるパトカーを見た。

ばっちり運転手と目が合い、緊張感が増す。

彼はじっと目線を合わせ、俺の考えてることを悟ったのか、まばたきが増える。



直線道路に入ったとき、俺は勢いよくドアノブに手を掛けた。開けようとした手はもちろん警察官の手によって止められる。


なんとかして開けようとしていると運転手が慌てたことで皆の身体が左右に揺れる。

俺はそれを利用し揺れる反動でドアノブに手を掛け勢いで開けた。

すると反動で警察官の身体は外へ投げ出され、 同じ事をしていた反対側も警察官の身体は外へ投げ出され、直後、車が止まった。


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