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プロローグ

初投稿なので至らない部分も多々あるとは思いますが、よろしくおねがいいたします!

2年3組と書かれた教室。ここが、俺の教室。朝の教室は、何だか少し騒がしい。

千尋(ちひろ)、またお前宿題忘れたのかよー!」

「悪い悪い、ちょっとノート貸して!」

「しょうがねーな、ほらよ!」

「さんきゅー!」

投げられたノートを受け取って、できる限りの速さで写していく。

次第に俺の字はやけに雄雄しいミミズのようになっていった。

「お前字汚すぎだろ!!」

「急いでるんだからしょうがないだろー!!!」

高速でシャーペンを動かしていく。

「やべぇ、授業始まるぞ!鬼塚に怒られるぞ!」

「わーってるよ、あとちょっとだ!」

1時間目は鬼塚というあだ名で親しまれる小塚の英語。ほぼ毎回出される宿題が面倒で、

そのうえ宿題をやっていなければ怒られ、教室の後ろに立たされる。

俺は何度も忘れているが、提出忘れを繰り返すとすぐ隣で大声で怒鳴られる。

隣のクラスにも聞こえるので恥ずかしさが尋常ではない。

前回宿題を忘れた俺は、

『次に宿題を忘れたら、お前は廊下に立ってもらうからな! わかったな!?』

と怒鳴られてしまった。あいつなら絶対に本当に廊下に立たせるだろう。水を限界まで入れたバケツを持たされる可能性だってありそうだ、あぁ厄介だ。

「あと2分!!」

友人の大声。宿題はようやく7割終わったところだった。

「あ、あと1分になったぞ!」

「悪い!!!」

俺は、勢いよくガタッと立ち上がる。

「もう無理だわ、ノート返す」

「えっ」

「今日サボるわ」

「お、おいお前そんなんでこの間も英語サボってただろ、ついていけるのかよ」

「やばいとおもう。まぁなんとかなるだろ! じゃあな!」

俺は慌てて荷物をまとめ、椅子を戻し、全速力で駆け抜ける。

担任が通る道は把握している。逆の階段をのぼれば問題ない。

なるべく足音を出さないよう、そして呼吸音も小さく。万一教師に見つかると面倒だ。

妙に興奮している自分に気がついた。くだらない、そんなことはわかっている。だが、こういうのも悪くはないような気がして。

階段をのぼっている途中で、チャイムが響いた。俺は足音を殺し、ややゆっくり歩く。

最上階に着いたら、いくつかの教室のドアを越えた。HRをしている先生たちはこちらに気などとめない。そして、トイレもこえ、誰もいない音楽室も、隣の階段もこえる。

そのまま進み、廊下の一番端にたどり着いた。俺は、曲がり角をゆっくりと曲がった。

あとは屋上の扉の前の階段まで急ぐ。やや短い階段だった。俺は、その階段をのぼっていく。あぁ、もうすぐだ。

――ついた!

屋上へと続くドアの前まで到着。銀色のドア。その奥ではきっと、青空が広がっているのだろう。

ドアにもたれ、ずるずると座り込んだ。

「はぁ……」

ひとときの緊張の終わりを悟る。途端につまらなくなり、ぼんやりと薄汚れた天井を見上げる。

わかっている、これはただ問題を先送りしただけだと。でもこんなバカなことが、何故か楽しかった。

しかし、一人でここで英語が終わるまで時間を潰すのは退屈だ。何か暇を潰す手段はないだろうか。

「何やってるの?」

「!?」

咄嗟に声がしたほうを見ると、ミディアムヘアで童顔の少女が、階段の上でこちらをじっと見上げていた。

見上げているようで見下ろしているような、そんな、少し冷たい目をしていた。

あどけない声をしているのもかかわらず、静かに、淡々と話す女子。

白い、少し病弱そうな肌に、華奢でやや小柄な体。

「えっと、お前赤崎だっけ」

やや小声で問う。すると、こくん、と、彼女は無表情で頷いた。

赤崎智子(あかざき さとこ)。隣のクラスの奴だ。無愛想で何を考えているのかわからない奴だ、と聞いたことがある。

俺は、引き続き小声で話す。

「俺はちょっとサボってんだよ」

「そう」

「あぁ。ていうかさ、何で話しかけてきたんだよ」

「……別に」

赤崎は目を逸らし、体を俺とは逆方向に向けて階段に座り込む。

「……暇、だったから」

「あー……なるほどな。俺も暇だったからちょうどよかったかもな」

「そう、それはよかった」

赤崎は、こちらを見もせずそう言った。

「で、お前こんなとこで何やってんの?サボり?」

「……そんなとこ」

「ふぅん」

数十秒ほど、沈黙が流れた。居心地が悪くて、俺は思わず口を開いた。

「お前よくここに来んの?」

「たまに」

「ふぅん。そのわりに初めて会った」

「私は、ここにいる貴方を2度見たことがある」

「うおっ、マジで? でも俺、お前のことここで見たの初めてだけど」

「そうでしょうね。貴方は、マンガかケータイを見ていたもの。それに、私は、この下の廊下で貴方を見つけただけ。階段まで来ていないわ」

「なんでこんなとこ何度か来てるんだよ、散歩でもしてたのか?」

俺は、そう尋ねてから脚を組む。

ここは、最上階の廊下の一番端を曲がったところ。曲がった先にあるのは、やや短めの階段と、その先にある扉のみ。扉を抜けても、屋上しかない。しかも、鍵は閉まっている。いったい何をしにこんなところまで。

「暇だったから」

「授業中なのに?」

「ええ」

「ふぅん、赤崎ってサボりそうに見えないんだけどなぁ」

「……」

赤崎は、黙りこんでしまった。俺は、ふぅとため息をつく。

――何かまずいこと言ったか?

――別にいいか、たいしたこと言ってないし

いつのまにか赤崎は立ち上がり、俺の瞳をじっと見つめていた。

「黙ったのに深い意味はないから大丈夫」

「そ、そう、なのか?」

「ええ」

そう言うと、彼女はまた体を反対の方向に向けてしまった。丸められた背中が悲しげだった。

「……何で」

俺は思わず呟いた。彼女の存在が何故か妙にひっかかる。とらわれてしまったような気さえした。この、よくわからない彼女の存在に。

彼女の背中が、何故か一瞬俺の心を鋭い針で突き刺す。

暗くてつまらなさそうな背中を見ていると、妙に腹が立つ。毎日退屈ですとでも言いたげなその雰囲気が、妙に不快だ。

「何?」

赤崎は問うた。

「何で、お前サボったの?」

俺はそんな、意味のない、しかし確かに気になる疑問を吐き出した。

「……私、大勢がいるところ、苦手だから、教室嫌い。だから、サボった」

「へぇ、何で?」

「……人の悪意とか、建前と本音とか、嘘とか、軽率さとか、そういうのを、感じたくない」

「ふぅん、なら深読みしなければいいじゃん。深読みとかしたってへこむだけだろめんどくさい。難しいこと考えるより楽だ」

周りの奴らの気持ちなんて、そいつらになってみなければわからない。考えたって、読めないものは読めない。

横になり、その状態でまた脚を組んだ。ぼんやりと天井を眺めていると、

「貴方が羨ましい」

赤崎は、ため息まじりにそう言った。よくこんなにつまらなさそうな態度で毎日生きてるなぁ、と俺は内心呆れ始めていた。

「何がだよ」

「貴方の、そういうとこ」

沈んだ声。少しは楽しいことでも探せばいいのに、ないなら作り出せばいいのに。

つまらない、馬鹿な奴。暗くて、くだらなくて。

「帰る」

俺はぶっきらぼうにそう言って、俺はこの場から去った。去ろうとした。

その瞬間、足が滑った。足から心臓にまで衝撃が伝わり、世界が傾いた。

「なっ」

階段から滑り落ちていく俺。その下には赤崎。

「赤っ」

赤崎を巻き込んで、あっという間に落下してしまった。

「わ、悪い!」

赤崎の上に乗る形になってしまったので、彼女は苦しそうな様子だ。俺は慌てて立ち上がる。

「わ、悪い、大丈夫か!?」

赤崎は閉じていた目をうっすらと開けた。

「ほんと悪い! 赤崎、大丈夫だったか!?」

彼女の正面に回りこみ、様子を伺う俺。しかし、

「いやっ!」

赤崎はそう言って、焦って顔をそむけてしまう。

「な、なんだよ、悪かったよそんなふうに言うなって……大丈夫か?」

「ち、ちがう、大丈夫。でも、顔、急に見ないで、やめて」

声が震えている。赤崎の動揺が手に取るようにわかる。

「怪我とか、してないから。問題ないから」

赤崎は、怯えた声でそう言って、スカートをはらって立ち上がる。やはり、何が何でも俺の顔を見ようとはしない。左斜め下に首を傾け、廊下を見つめている。なんだよこいつ、そんなに廊下の汚れが気になるのか。そんなわけないだろうけど。

「そうか、何かあるなら今のうちに言っとけよ」

「ない。大丈夫」

「そうか、悪かったよ」

不快な気持ちが渦をまいた。たしかし、痛い思いをさせてしまった俺が悪い。だが、その前から何故か執拗に顔を見ようとはしない。一度だけ見たが、すぐ目を逸らされた。

そして、怪我をさせてしまったかどうかを気にして様子を見ようと思ったらこれだ。不愉快だ、もうこんな奴にかまってイライラするのはやめよう。

そのとき、何故か一度だけ振り向いた。赤崎に苛立っているにも関わらず、彼女の様子を気にかけてしまった。彼女自身が、気にかけてほしくないような態度をとっていたのに。

振り向いた瞬間、バチリと目が合った。赤崎の目ははっと見開かれた。

「待って!」

呼び止める赤崎の声は、俺が聞いた彼女の声のなかで最も大きかった。

「な……なんだよ」

バツが悪そうにうつむく彼女に、俺はしぶしぶ近づいて尋ねる。

彼女は階段に座りながら、おそるおそるといったふうに話し始めた。

「私のこと、すごく気にかけてくれてたのに。なのにあんなふうな態度とって、不快にさせてしまって、本当ごめんなさい」

廊下に話しているような赤崎が俺を少し苛立たせる。

「いいけどよ、相変わらず絶対顔見ないのな」

「……見たら、読めてしまうから」

「何をだよ」

「貴方の心」

「は?」

これしか言葉が出てこなかったが、仕方ない。心を読めるだなんて言い出す奴、聞いたことがない。胡散臭いにもほどがある。そういう設定を作って、俺をバカにしてるのか。それとも、そんな設定に酔っているだけなのか。あぁ、こいつ、一体何者なんだ。

読んでいただきありがとうございました!

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