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掌編集  作者: (=`ω´=)


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末端炎上

 さてこれから一週間の出張に出るぞという早朝、ベッドに寝そべりながらぼんやりと録画していた深夜アニメを流し見していると、突然枕元で充電中のスマホが「ボンッ!」と軽い音をたてて破裂し、そのまま火を吹きはじめた。

「なにこれ」

 とか思いつつ、枕をぶつけてどうにかスマホの炎を消し止めようとする。

 火事になったら大変だ。

 なにをするのにもまずは火を消しておかなければならない。

 幸いなことに、何度か枕ではたくと火はすぐに消すことができた。

 なんといっても小さなスマホであり、冷静に対処すれば大事にはならない。

 火事にならないのはよかったが、と、思う。

 なんで予告もなしにこういうことが起こるかな、と。

 不運というかなんというか。

 ときならぬ珍事に十分に驚いてはいたのだが、まだ早朝でもあり家を出るまでにはかなり時間的な余裕がある。

 そのことが影響しているのか、気分としてはかなり落ち着いていた。

 気分が落ち着いていたからといって、スマホの中に入っていたデータが復旧することはないのだが。

 クラウドに対比しておいたやつがあれとあれで、この末端の中にしかなかったのがあれとあれで、などと頭の中で確認をしはじめる。

 運が悪いことに数日前に調子が悪かったパソコンを修理に出したばかりであり、さらにまたスマホが大破したおかげで、今、手元にネットに接続できる手段というものがなくなっていたのだ。

 さらに間の悪いことには、あと一時間もすれば出張に出ねばならず、その間はだいたい朝から深夜にかけて仕事三昧、個人的なネット環境の整備をしなおしている暇も、おそらくはない。

 現在の勤務先はそれなりに融通がきくところもあるのだが、その分、ブラックな労働環境でもあった。

 やばいな、うん。

 と、そんなことを考えはじめる。

 あと一週間はネットに繋げられんわけか。

 スマホの中には昨夜のうちに書きさげたばかりの最新更新分のデータが入っていたわけだが、おそらくそれはもう助からない。

 それどころか、むこう一週間分の更新も、ほぼ絶望的だった。

 できれば、ここで止めたくはないんだがなあ、とは思ったが、実際問題としては仕方がない。

 入力に使える機器も、ネットに繋ぐ手段も絶たれた上で一週間、勝手の分からない遠い土地で仕事三昧に明け暮れるわけである。

 そこまで考えて、

「まあ、いいか」

 と、そんなことを考える。

 ネット上にアップしている小説の更新が途絶えたとしても、別に死ぬわけではなし。

 さらにいえば足掛け五年も更新を続けている小説が一週間やそこいら更新できなかったとしても、大きな目で見ればさして影響はないだろう。

 しかし、いきなり火を吹くかな。

 と、ぱっくりと割れて中身があらわになったスマホを見下ろす。

 スマホとかタブレットがなにかの拍子に煙を吐いたり破裂したりするニュースは何度か目にしていた。

 ぎっしりと詰まった電気回路とバッテリーの相乗効果で、ちょいとした加熱で破裂しやすくなっている、そうだ。

 回路のどこかがショートしたりしていると、覿面に出火しやすい状態になるらしい。

 これはメーカーの責任というよりも、こうした機器を現在の技術で製造する以上、避けられない構造的なリスクだろう。

 ただ、その事故が自分の身に降りかかるとはこの今朝まで思いもしなかったが。

 なんだかんだで、五年以上も酷使しているもんなあ、とか、感慨にふける。

 むしろ、今までよく保ったと感心をするところで、この末端なり末端を製造したメーカーを恨む気持ちはない。

 もしも自分の目が届かない場所でこの出火事故がおこっていたら火事になっていてもおかしくはなかったわけだが、実際にはすぐに火を消し止めて大事には至っていない。

「しょうがないか。

 しょうがないな」

 と、自身にいいきかせるように、そんなことを思う。

 出張中の一週間はネットのことは忘れて、仕事の方に専念しよう。

 事実上、そうするしかないわけだし。

 諦観混じりの割り切りでそんなことを思い、おれは朝食の準備をはじめた。



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