県警の人が自宅を訪ねて来て「これ以上、妄想をするな」と注意をされた。
「だからねえ、困るんですよ。
こんなに幼女を出されては」
「そうはいっても、こういうのは勝手に出て来るものですし」
玄関先で二人組の警官の相手をしている間にもおれのそばのなにもない空間にノースリーブのシャツとホットパンツ姿の幼女が唐突に出現し、無邪気な笑い声をあげて裸足のままで外に走り出していった。
「むしろこれを止める方法を、おれの方が知りたい」
おれがそういうと、警官たちは顔を見合わせてこれ見よがしに深いため息をついた。
「あなたが生み出した幼女たちを虐待する事件があいついでいます。
あんたはあの子たちが可愛いそうだとは思わないんですか?」
「そういわれましても、あの子たちは実在するわけでもないですし」
おれはそういって首を傾げる。
「それに、一度出て来てしまったら自然と消えるまでおれのいうことなんか聞きやしませんし」
おれが無意識裡に生み出してしまう幼女たちは、実に自由奔放なのであった。
「むしろ、誰かがあの子たちをどっかで保護することができるんなら、是非やっていただきたい」
もともと実在していない幼女たちをどこかに軟禁とか保護をすることは、不可能に思えるのだが。
彼女たちは物理的な制約を無視してどこへでも現れたり消えたりする。
「こうしている今も、性的ものを含む虐待を受けている子がいるのですよ。
あなたが妄想をした結果、この世に現れた子たちでしょう」
「そうした虐待行為の加害者を取り締まる方が先でしょう」
おれは警官に反論をした。
「おれやら被害者であるあの子たちのせいで犯罪が起こるという主張は、どう考えても筋が違うと思いますが」
いつものことだが、警官とおれの意見とは平行線だった。
半年前におれの妄想が具現化しはじめてからこっち、この怪現象を止める方法は誰も見出せていない。
おれが幼女に興味をなくせばこの現象も自然と止まるのではないかと指摘をした人もいたのだが、仮にそれが正解だとしても、このおれのロリコンを治す方法なんかおれ自身だって知りやしない。
さらにいえば、法律関係のえらいある先生は、おれの妄想を取り締まる法律はないということについても太鼓判をおしてくれた。
法に触れることをしているわけでもないのに、おれ自身にも制御できないことについてとやかくいわれても、おれにできることはなにもない。
「あなたはあの子たちのことが可哀想ではないのですか?」
「だからそれは、加害者にいってくれって」
おれは繰り返し、同じことをいわなければならなかった。
そりゃおれだって被害を受けた子たちは可哀想だとは思う。
思うけど、それでも本物の女の子が被害にあうよりは遥かにマシだ。
おれは自分がロリコンであることは否定しないが、それだってあくまで妄想するだけで満足している。
それにおれの妄想の中から出てきた子たちは、どうせ数時間とまたずに唐突に消失してしまう、もともととても儚い存在だ。
同情はするが、それ以上の感情は抱きようがない。
なにせそうした幼女たちは、おれが起きている間は平均して五分に一人の割合でこの世に出現する。
一日あたり二百人前後出現する、勝手にどこへでもいってしまう幼女たち全員を見張ってその安全を完全に確保せよというもまた、おれに妄想をするなというのと同じくらいの無茶ぶりだった。
押し問答を続けるおれの脇にまたひとりの幼女が出現し、警官たちの脇をすり抜けてどこかへ去っていった。




