誤認
「うちではネコを飼っていてねー」
「おう」
「いつも五匹以上はいるかな?
でも、ネコって寿命が短いから、いつも入れ替わっている感じだけど」
「いや、ネコは普通に飼えば余裕で十年以上は生きるぞ。
野良の寿命はかなり短いかいらしいが」
「そんなことないよ。
うちのネコ、いつも二年くらいしか保たないし」
「いくらなんでもそれは短すぎる。
飼育環境とかちゃんとしているのか?」
「ちゃんとしているよ。
しっかしとした外部濾過装置? だっけ、それもつけているし、水質管理にも、人一倍気をつけているってママがいってた」
「ちょっと待て。
それ、ネコのはなしだよな?」
「ネコだよ。
こう、触手がいっぱい生えていてうねうねしていて、吸盤があって……」
「いや、それ、絶対に騙されているから」
おれはため息混じりにそういったあと、姪にネット上の情報などを見せてネコとタコの違いをしっかりと理解させた。
そのあと、姉貴に連絡をして、
「これ以上つまらない嘘をついて姪を騙さないように」
と念をおしておく。
そんな出来事があってからもう何年も経つのだが、姪はいまだにタコの握りを食べるとき、かつてのペットたちのことを思い出して僅かに涙目になるそうだ。




