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掌編集  作者: (=`ω´=)


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マイ穴

 おとなりの高田さんとは出勤時に鉢合わせをすることが多い。

 同じマンションの同じくフロアに住み、出勤時間も事業時間もだいたい同じくだから、必然的にそうなってしまうのだ。

 出勤する時刻が同じというだけではなく、決まった曜日に同じように大きなポリ袋を手にさげているところもかぶっている。

 わが家と同じく、高田さんのお宅でもゴミ出しは夫の務めであるらしい。

「やあ、どうも」

「おはようございます」

 いつものように挨拶をしてから同じエレベーターで地階に降り、同じくようにゴミ捨て場に寄ってから、同じく駅にむかう。

 そんなありきたりの日常が、いつまでも続くものと思っていた。

 だが、マイ穴が出現したことによって、少なくともゴミ捨てをする必要はなくなってしまった。


 マイ穴とはなにか?

 唐突に出現した当時からさんざん調査されたようだが、その正体はいまだにはっきりとはしないらしい。

 カメラやビデオ、その他観測機器のたぐいではいっさい関知できず、人間の目にしか映らない。

 つまり、物質ではないということ。

 それに、全世界の人間ひとりひとりにひとつずつ出現し、その穴の名に入れたものは二度と出てこない。

 いや、それどころか、その穴に捨てたものは最初からこの世になかったことになる、ということまでは解明したものの、それ以上に詳しい分析はどうやら現代の科学では不可能なようだった。

 偉い学者さんたちは宇宙モデルが崩れる、 構築し直さなければならないなどと大騒ぎになっていたようだが、おれたち普通のサラリーマンにしてみれば、ゴミ出しの手間が省けるな、程度の認識しか持ってなかった。

 そうした学者さんによると、おれたちがその穴になにかを捨てるたびに、そのゴミの質量分だけこの宇宙も小さくなっているそうだが。

 そんなことよりも、視界の隅にいつもふわふわ浮いているその半透明な穴に、不要なものをいつでも捨てられることの方がおれたちには遥かにありがたかった。


 そのマイ穴が出現してから半年くらい経っただろうか。

 おれとおとなりの高田さんは、今でも同じ時間に出勤する。

 以前と違うことといえば、もはやゴミ袋を持つ必要がないってことだ。

 いい年齢をしてお互い独身だから、実に気楽なものである。



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