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掌編集  作者: (=`ω´=)
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甘い腐臭

 その甘い腐臭に気づいたのは、物心つくかつかないかといった幼い頃ののことった。

 不思議なことに、甘い腐臭が漂ってくるのは、決まって大人の人たちからばかりだった。

 両親や近所の大人たち、先生……幼い頃は、甘い腐臭がなにに由来するものなのか、よくわかっていなかった。

 当時のわたしにとって大人たちは、甘い腐臭が漂ってくる人とまるでしない人の二種類に分かれていた。

 成長するにしたがって、甘い腐臭はわたし以外の人がまるで関知できないらしことに気づいた。同時に、その頃には大人たちもわたしが普通の子どもではないとみなすようになっていた。

 特定の人を目の前にしてしきりに臭い臭いといいつのる幼い頃のわたしの態度をみて、大人たちは最初のうち不審がり、嘘つき呼ばわりし、何人かの医者へも連れていった。しかし、原因となるものはわからず、肉体的にも精神的にもわたしが健康であるという結果がでてくると、わたしのことを理解不能な、薄気味悪い子どもだと見なすようになっていった。

 確かにわたしは、扱いにくい子どもではあったのだろう。

 そうこうするうちに、わたしは、その甘い腐臭については固く口を閉ざすことを学んだ。

 わたし以外に嗅ぐことができない甘い腐臭には、少なくともこの社会においては、なんの存在価値もなかったからだ。

 常日頃から甘い腐臭を感じながらもその存在を無視するようになったわたしは、意外なほど当たり前に成長していった。

 その途中、一部の同級生たちからおなじみの甘い腐臭が立ちのぼってくるような例にも遭遇し、その腐臭の原因についても段々と推測できるようになってきた。

 そして今、当たり前に成長したわたしは、当たり前のようにその甘い腐臭を自分の身から発するようになっている。

 特に妻子持ちの彼と会うようなときには、わたしの体から出るその甘い腐臭は一層、強くなる。


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