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掌編集  作者: (=`ω´=)


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全裸の惑星

「人類のやつら最近図にのってね?

 いっちょシメちまってもいいかな」

 どこかで誰かがそんな内容のことをいったのかどうか、それは定かではない。

 しかし、一連の異変が神罰めいた不条理性を持って全世界を襲ったのは間違いがない事実である。

 その異変とは具体的になにかといえば、バベルの塔を建造することで神の怒りに触れて人類が共通する言語を取りあげられてしまったときのように、ある瞬間を境にして全世界規模で人類は衣服をまとえなくなってしまった。

もちろんこれは科学的に説明がつけられる現象などではなく、そうした異変に晒された人々はしばらく戸惑うしかなかった。

 いつまでも戸惑っていても仕方がないので、最終的には誰もが新しい環境に適応するしかなかったわけだが、そこに到達するまでにはかなりの時間を必要とした。


 その異変が発覚した当初、大多数の人々はなにかと名目をつけて家から出ないようにした。

 なにしろ、下着や水着のようなものも含めて、おおよそ衣服に分類される物体を身につけようよすると、たちまち分解されてしなうようになってしまったからだ。

 これでは、まともに外出も出来やしない。

 しかしいつまでもそんな調子ではまともな社会機能は麻痺して維持できなくなるので、各国の政府や宗教指導者たちは急遽従来の法律や倫理を一時的に棚上げする声明を発表した。

 そうした声明をマスメディアやネットで大々的に広めるの同時に、省庁や企業にむけて衣服を必要としない社会構造作りを急ぐように通達もする。

 たかだ衣服されど衣服。

 そうした権威筋のお声がかりがあったとしても、一般大衆の意識がすぐの改まるものでもなかったが、このまま大勢の人間が屋内に篭っていても社会機能が麻痺してしまうことは確かであり、人々は徐々に羞恥心を押さえつけながら全裸で野外に出ていくようになった。

 その際、アナウンサーやタレント、それに政府関係者が全裸のままで公共の電波を通じて、不特定多数の人々に対して裸のまま外に出るように呼びかけ、うながしたのはいうまでもない。


 こうした変化をむしろ歓迎した人々も少数ながら存在した。

 特殊な性癖を持つ人々やヌーディズムに抵抗のないナチュラリスト、それに比較的若い男性たちなどである。

 中高年の男性や女性たちは、内心でどう思っていたのかは知らないが、少なくとも若い男性ほどには喜びの感情を表に出さなかった。

 そうした若い男性の中にはこの状況を受けてはしゃぎ過ぎた者もおり、例えば日本ではSNSを通じて新宿や渋谷などの繁華街に集まり、大勢で集まって、

「上をむーいてあーるこーおー、ナニカが、こぼれーないようよこーにぃ」

 などという下品な替え歌をがなりたてて駆けつけた警官に捕縛されるといった事件が発生した。

 ちなみこの件の場合、罪状は猥褻物陳列罪ではなく、迷惑防止条例が適用されたようだ。

 一部でそんな混乱は起こったものの、無被服文化への移行は当初予想されていたよりも円滑に進んで行く。

 なにより服を着ることができないという前提条件がある以上、この状況になれるしかなかた。

 それに裸体というのももったいぶって隠そうとするからエロチックに思えるのであり、誰もが公然と開陳するよいになってくると、目も頭もそれが当然であると認識するようになる。

 そもそも、男女を問わず鑑賞に耐えることができる裸身の持ち主は、実際にはかなり限られていたので、多くの人々はすぐに間近にいる相手の裸体を行儀よく無視する方法を学んだ。

 フェティッシュな興味の対象が自然とズレていくため、当初想定されていたよりは性的な問題は多くは発生しなかった。

 むしろ、衣服をまとえなくなった結果、武器や凶器を隠し持つことができず、少なくとも統計上は性犯罪を含む暴行や強盗事件は減少した。


 当然のことながら、アパレル産業は壊滅した。

 多くの企業が早々に廃業するか、それとも別種の事業に鞍替えをするのかの選択を迫られる。

 かわりに台頭して来たのがボディペイント用の顔料関連の企業で、最初のうちは裸体を隠すため、続いて純粋にファッションとして購入、消費されいった。


 別に衣服はファッションのみを目的として身につけるものではない。

 服を着れなくなって困る人々も大勢存在した。

 人間の皮膚はかなり柔な代物であり、全裸のまま野外で活動することは、場合によっては自殺行為ともいえた。

 それに、建築現場や工場内などでも、体を防護するための存在として衣服は必要だった。

 さらに深刻なのは、日差しの強い地域や寒冷地に居住する人々への対策で、こうした問題に関してはそれこそ全世界規模で対策を講じる必要があった。

 どの問題をとっても、放置すればそれこそ世界経済に負の影響を与えかねないわけで、各国各宗派の垣根を越えて協力体制を構築して問題の解決にあたるしか選択肢がなかった。

 現在、すべての問題が解決したわけではない。

 が、大量移住やドローンやボットの開発など、おそらく人類史上はじめて全世界が一丸となって各種の問題に取り組みはじめている。

 いまだ課題は多いが、はじめての全人類統一政体を準備することになる全裸の時代はこうして幕をあけた。



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