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「あっ!」
外出中、唐突に背後から、
「あっ!」
という声が聞こえた。
思わず振り返ると、妙に見覚えがある、しかしそこには居るはずがない顔が見えた。
さて、誰だったかな……と数秒思い返してあることに思い当たる。
見覚えもあるはずだ。
毎日鏡の中で顔を合わせている、つまりはこのおれ自身の顔だった。
そのことに思い当たったおれは、
「あっ!」
と小さな叫び声をあげた。
その瞬間、おれの視界がざっと流れる。
気づくとおれは、数秒前のおれの後ろ姿を見ていた。
おれがあげた声に驚いて、数秒前のおれが振り返り、おれの顔をまじまじと見たあと、驚愕に目を見開いたあと、唐突に姿を消した。
一人残されたおれは、
「こんなこと、誰かにはなしても信じて貰えないだろうな」
とか思いつつ、
「……あーあ……」
とか詠嘆する夏の夕暮れなのであった。




