星詠み
代々星を読み未来を占う家系に生まれた男がいた。
何世代にも渡って研鑽されてきた占星の術はたいしたもので、伝家の秘術を使えば特にそちらの才能があるとも思えなかったその星詠みにも、未来のことがありありと読みとることができた。
それが王室から課せられた役割であったため、星詠みは逐一読みとった未来のことを詩の形にして定期的に奏上した。
星詠みは、いずれ大地震が起こること、日照りがあること、天から降ってくる星のことなどの天変地異を予言した。それ以外にも、未来の政変や戦争など、人為的な災害についても多く言及し、警鐘を鳴らした。そうした大きな災害についてだけではなく、市井の細々とした出来事についても占いで予見したままの形で詩の形にし、お上へと奏上し続けた。
祖先から伝えられた秘術に絶対の自信を持つ星詠みにしてみれば、それら、未来の出来事がいずれ現実に起こるであろうことは確定的に思えるのだが、他の者たちもそうした考えを持っているとは限らず、それどころか、星詠みの家門すらも役立たずの無長の長物として陰で嘲笑しているようだった。
なにしろ、星詠みがお上に奏上する未来では何百年も先のことである。その占いの正否が判明するときには、星詠み自身も星詠みをあざ笑う人々もこの世にはいないだろう。
確かに自分は、役立たずの穀潰しではあるのかも知れないな、と、自嘲混じりに星詠みは思う。
今のこの世では、自分の予言はなんの役にも立たないのだから。
しかし、幼い頃より星を読む術以外の知識を与えられてこなかった星詠みは、今さら別の生き方を模索する方法も思いつかないのだった。
父や祖父、あるいはもっと遠い祖先たちがそうして来たように、その星詠みもどこか釈然としない気分を抱え込んだまま、粛々と自分の職務と人生をまっとうした。




