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掌編集  作者: (=`ω´=)


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戦果

 半ば放し飼いにしているせいか、うちの飼い猫のシュレーディンガーはときおり採ってきた獲物をおれに見せびらかしに来る。ちなみ去勢済みでトイレトレーニングもきちんとしているから、ご近所にはさほど迷惑をかけていない……はずである。少なくとも、これまでにクレームが来たことはない。

 そのシュレーディンガーの戦果だが、ヤモリやイモリ、蜘蛛、ゴキブリなどを自信満々な表情でおれの枕元に置いていくわけだ。スズメなどの鳥類はもとより、大物としては丸まると太ったアオダイショウがいたこともある。

 指摘される前にうちあけておくと、家はいわゆる緑豊かな田舎に属しており、そうした小動物には事欠かないのである。

 悪気はないのだろうが、朝一番に見るのが虫や小動物の死体とシュレーディンガーのどや顔というのは飼い主であるおれの心臓に悪い。

 かといって、記録力の悪いことでは定評のある猫を躾ようとしても無駄であることはこれまでの経験で心得ている。

 第一、猫が獲物を狩るのは本能のなせる技、止めようったって止められるものでもないだろう。

 お猫様の下僕としては、下賜された死体をゴム手袋で掴んで裏庭に埋めるくらいのことしかできなかった。

 さて、そのお猫様であるシュレーディンガーは、ある朝、いつものようにおれの枕元に獲物を置いてくださった。

 いつもと違っていたのは、その獲物が生物ですらなく、銀色に輝く金属でできていたこととくらいなものだ。

 金属……というか、機械の一種なんだろうな。一応、あれも。

 直径三十センチ、高さ二十センチほどの……典型的なアダムスキー型円盤を前にして、お猫様たるシュレーディンガーはおれと目を合わせながら、「にゃあ」と自慢気に鳴いた。

 その円盤は、玩具にしては精巧で、とても偽物にはみえないような不思議な存在感を放っている。

 さて、どうするか……としばし思案した末、おれは着替えてゴム手袋をつけてその円盤を掴み、原チャリのカゴにそいつを放り込んで家から五分ほどの距離にある河原へと移動した。

 そして、

「……そおぃっ!」

 というかけ声とともに、円盤を川の中に放り込む。

 幸いなことに、銀色の円盤はそのまま素直に川の底へと沈んでいった。

 あれが精巧なだけの玩具なのか、それとも別のなにかなのかは知らないが、週末に畑を耕すこともある独身サラリーマンの生活には、そうした非日常的な要素が入り込む隙間はないのである。否、入り込んできてはおれが困るのである。

 そして出勤時間が気になっていたおれは、そのまま原チャリに飛び乗り家路をたどるのであった。

 かくして……世はすべて事もなし。


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