策略
この小娘の相手が藤堂修二?
藤堂とは、学年こそ3つも下だが、幼稚舎から大学まで一緒だった。
元ミス日本の母親を持つ、彫刻のような容貌と優美に動く目つきの、キラキラとよく目立つ青年だ。女心を惹きつけるのに十分な美形。
それゆえ、女遊びも派手。それは有名な話だった。
しかし、どうも腑に落ちない。
先月会った政治家のパーティで、確か藤堂は別の女性を連れてきていたはず…。
あれはどうみても親密な関係。ということは、塔子はそれを黙認しているのであろうか?
「君は、ずいぶんと面食いなんだな。」
「わ、私は彼の誠実さが好きなんです!誰にでも優しくて、誠実で。彼の外見だけに惹かれているわけではありません!」
…お前は何もわかっちゃいない。
「貧しくとも心豊かな家庭がいいです」
…金の力もしらないに癖に。
「好きな人と一緒にいれば、それだけで、いいです。」
…愛は冷めるものだ。そんな事もまだわからないのか?
まったく随分とお子様な。イライラする。
「ねえ、塔子ちゃん。もし、藤堂が浮気したらどうする?」
「相手が自分と別れたいと思うのであれば、それを尊重します。人を想うということは、けして自分の気持ちを押し付けることだけではないと思うんです。悲しいけど、相手がそう望むのであれば…受け止めます。それくらいの強さはもってるつもりです。」
小娘が、生意気に何を言ってやがる。
何から何まで癇に障る。祖父もなんでこんな娘を見合い相手に選んだのか、さっぱりわからない…!いくら俺が遊び歩いてるからと言って、こんな純粋ぶった小娘に多少なりでも引かれるとでも?
「あの…、緋川さん?こうして一度お会いした事ですし、お断りの返事をしていただけないでしょうか?」
主導権はお前ではない、この俺だ。思い知らせてやる…。
「ちょっと待って。ところで、君は今の藤堂の現状、知ってるのかい?」