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先生 攻略法  作者: 桜桃
33/44

思い





ガラッ



「せ、んせい・・・」




美術準備室は日が当たらないこともあって

薄暗い。


なんだか、さっきまでの私みたい。


悲しいくらいに静かな準備室は


先生の心みたいだった。





「大宮?」


「先生っ」




目を丸くしてこちらを見る先生。



なんて言おう


どんな顔をしよう


なにから始めよう



さっきまで考えていたことは全て吹っ飛んで


先生の姿を見ただけで


心が温かくなって


胸がいっぱいになって



"思い"が溢れ出す




「先生・・・っ」


「おわっどうした?」




前と変わらない、先生の笑顔



私が抱きついても

動じなくて



いつもの先生に、ちょっとだけ傷ついて




少しだけ、不安が広がって




「行って来い」


和兄の言葉を呪文のように

何度も心の中で唱えた





「先生・・・」


「ん?」


「和兄たちから、聞きました。

 澤田凛さんのこと。」




ピクッ


と先生の眉が動いて


体がこわばったのがわかった





「先生、もう自分を追い詰めないでください。

 澤田さんとのこと、忘れられないことわかります。

 辛いことも、苦しんでることも。

 だけど、それじゃあ先生は・・・」


「大宮。

 そういう話なら、悪いけど出てってくれ。」


「先生っ!」


「出てけっ!」




初めて聞いた先生の怒鳴り声に

思わずひるんでしまう。


落ち着いて。


さっきまでの覚悟はどうしたの?私。


先生を、救いたいんでしょ?





「嫌です。出て行きません。

 先生が何度怒鳴ろうと私は何度だって言います。

 先生が苦しんでて1番苦しいのは誰だと思います?

 澤田さんです!

 大好きな先生が、自分のせいで苦しんでたら・・・

 澤田さんが悲しみます。

 それを1番よくわかってるのは先生じゃないんですか?

 

 澤田さんを大切に思ってるから・・・・

 今でも、好きだから・・・


 だから、澤田さんとは正反対のタイプの

 女生徒と、遊んでるんじゃないですか?

 澤田さんへの罪滅ぼしのために、

 誰も好きにならず、澤田さんだけを愛するんですか?

 先生だけ苦しんだって、澤田さんは帰ってきません!」


「お前になにが・・・」


「わかりますっ

 言ったじゃないですか。

 私、先生が好きなんです。


 何度も、何度も諦めようと思いました。


 女遊びはひどいし、女ったらしかと思ったら

 繊細だし・・・

 女の子に負けないくらい、可愛くて

 でもかっこよくて。

 いつだって先生はずるくて・・・


 他の女生徒とは遊ぶのに私は相手にしてくれなくて

 辛くて・・・悲しくて・・・

 何で先生なんだろ。って。

 違う人を好きになれたら、って何度も思いました。」


「だったら・・・」


「でも、だめだったんです!

 先生が好きなんです・・・

 

 だから、わかるんです。

 澤田さんの気持ちが。

 私も、澤田さんと同じく先生が好きだから。


 好きな人には幸せになってほしい。

 自分のせいで苦しんでたら

 嫌ですもん。


 先生は違うんですか?

 もし、逆の立場だったら・・・

 同じ事を思いませんか?」



畳み掛けるように話す私を


先生は目をそらすことなく、聞く




「先生、は・・・

 まだ澤田さんが好きなんですよね。


 だけど、女生徒遊びは・・・

 自分だけでなく澤田さんも苦しめてる。


 それだけは、間違ってます。


 澤田さんは病気だったんです。

 先生のせいじゃないです。」



「だけど、あのとき俺が・・・

 俺が誘ってなかったら・・・」




「それは、違いますよ先生。」


「え?」



「澤田さんは、幸せだったと思います。

 最後に、先生といられて。

 先生と、イルミネーションが見られて・・・


 きっと、澤田さんは気づいてたと思います。

 

 自分が、長くないこと。」


「え?

 だけど、あいつは・・・」



「先生に心配かけたくなかった。

 優しい澤田さんのことだから・・・

 きっと、周りに迷惑かけることを嫌って

 言わなかったんだと思います。


 それに、女の子は好きな人ほど

 弱みを見せたがりません。


 きっと、先生の中に強い女性として

 残りたかったんだと思います。

 あくまで、思い出の一つとして。」




気が付いたら、私は泣いていて


先生も、泣いていて




あぁ、先生は本当に澤田さんが好きなんだな

って思ったら


胸が痛くて


澤田さんがうらやましくて




「でも、俺・・・ほんとに・・・」


「蒼くん、しつこいよ。

 そんなに自虐にはしらないでよ。

 そんな蒼くん見たら、お姉ちゃんが報われないじゃない。」




先生の後ろで

ドアにもたれていたのは


柚先輩だった




「柚・・・」


「ふふっ

 久しぶりだね、蒼くんから名前呼ばれるの。

 お姉ちゃんのお葬式、以来か。」


「えっお姉ちゃんって?」


「和先生、そこまでは言ってなかったのか・・・

 あのね、はるのちゃんがさっき言ってた

 澤田凛は私の姉なの。」


「え?え・・・」


「歳の離れた姉。」



そういえば、当時小学生の妹がいたって・・・




「綺麗で、優しくて・・・

 私の自慢の姉だった。

 好きな人ができたって、蒼くんをつれてきたときは

 すごくびっくりしたけど・・・

 私も同じだけ、蒼くんが好きだったから・・・


 蒼くん、当時まだ小さかった私は

 話すべきかすごく迷った・・・

 だけど、話すべきだった。」



そう言って、柚先輩は

ノートを一冊、先生に手渡す。




「お姉ちゃんの日記。

 三日坊主のお姉ちゃんが

 珍しくて・・・長続きして書いたやつよ。」



先生は、ペラッとめくった




「本当に、蒼くんが好きだったんだね。

 その中には、蒼くんについてがビッシリ書いてる。」




中身が気になったけど

それは、きっと私が見るべきものじゃない。


それに、彼女の思いを見たら


きっと、私は立ち直れなくなる。


私は、彼女の思いに勝てるのかな?

先生を好きだという思いは



彼女に勝てるのか・・・わからなかった。




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