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先生 攻略法  作者: 桜桃
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先生の過去




「俺たちね、もともと中学からの友達なのよ」


「え?」


「俺が1年生のとき、相沢さんが2年生で

 なっちゃんと幸さんが3年生だった。

 バスケ部の相沢さんとサッカー部の幸さんは

 運動部だったけど、かけもちで

 帰宅部だった俺となっちゃん。

 の4人で研究部入ってたんだよ。」


「研究部?」


「そ。

 なんの研究かは、成り行きで。

 とりあえず、待ったりした居場所がほしかったんだ。

 

 ま、そんなこんなでさ。

 俺らはお互いに先輩後輩関係なく仲良くなって。

 

 そんなとき、幸さんが教師になる。って言って

 んじゃあ俺も。俺も・・・

 

 って、そんときはなりたいもんとかなかったし

 とりあえず、公務員でいっかー程度だった。


 んで、そのまま教師になった。」


「なりゆきで教師になれるって・・・」


「あのなっちゃんでさえ、まじめに勉強して

 教師になった。


 んで、俺が養護教諭として

 この学校に来た1年目のこと。

 何の縁か、そのときのメンバーがこの高校で

 教師をやっていた。

 

 なっちゃんは美術、幸さんは数学、相沢さんが体育。


 それぞれ教科も、持ってるクラスも違ったけれど

 それでも、同じ高校に勤めてることに喜んだ。

 

 んで、まあ皆で飲みに行ったときかな・・・

 

 なっちゃんが、俺らに告白してくれたんだ。


 生徒を、好きになった・・・って」





「え・・・・」






澤田凛さわだりん

 綺麗な黒髪に、白い頬。

 すっごい綺麗な子でさ。

 

 成績もよくて、なっちゃんのクラスの生徒だった。」




ズキンと胸が痛くなるのを感じた





「運動神経もよくて、優しくて・・・

 

 両親が共働きで、妹もまだ小学生だったから

 その子が家事とかしてて、

 家族思いで家庭的な子。

 

 こんな非の打ち所のない女の子、

 なかなかいねえぞ!

 

 みたいな。


 その子を好きになった、っていうんだ。


 もともとさ、なっちゃんって恋愛系とか

 そういうタイプじゃなくてさ。

 俺らの知る限り、そんな浮いた話しも聞いたことなかったし

 付き合った人なんていなかった。

 

 だからこそ、すごい驚いた。


 もちろん、生徒だってことにも。

 でも、どこか納得してたんだ。


 たしかに、あの子なら好きになってもおかしくないって。


 んで、それから数ヶ月たって、

 なっちゃんから報告受けたの。


 付き合うことになった。って。」




段々と、息苦しくなる。



時々、咲楽先生の「大丈夫?」を聞きながら


無言で頷いた







「まあ、昔からなっちゃんモテたし。

 若かったし・・・


 付き合うことになったんだけど・・・


 1年も経つ前に、死んだんだ。

 

 澤田凛は。」




「え?」




目を見開くと、和兄は静かに


頬をぬらしていた





「元々・・・体が弱い子だったんだ。」




変わりに、咲楽先生が口を開く





「心臓が弱い子でね。

 学校のほうも、一応知ってたんだけど

 手術も成功してたし、

 本人も元気そうだったし、

 そこまで気にとめてなかったんだ。


 だけど、本当は無理してたんだよ。


 学校でも終始笑顔で対応して

 周りの皆に弱い姿は見せまいと

 ずっと、強がってた。


 でも、ある日電池が切れたように


 亡くなったんだ。」


「凛ちゃんが亡くなったとき、

 傍にいたのはなるちゃんだったんだよ。」


「えっ」


「2人は、出かけてたんだ。

 クリスマスの、夜。


 凛ちゃんが大好きなイルミネーションを見に。


 なるちゃん、急いで病院に連れてったんだけど

 病院について、すぐ・・・亡くなったんだ。」





目からあふれ出す雫が

何度も何度も、私の頬をぬらした。



気づけば、3人とも泣いてて・・・



保健室の中で


教師3人、生徒1人が大号泣してて・・・







「そのとき、澤田の両親は何度もなっちゃんを責めた。」


「あなたの、せいだ。

 って・・・蒼くん、何度も浴びせられる罵声に

 涙一つ流さずに、謝ってた。」


「・・・っ多分、なるちゃんは泣けなかったんだと思う。

 あまりに、あっけない凛ちゃんの死。

 自分の無力さ。」


「澤田を亡くした蒼くんは、

 なにもかも、空っぽになってて・・・」


「実はさ、なっちゃん・・・

 両親を小さいころに亡くしてんだよ。

 

 親戚は、誰もなっちゃんを引き取ってくれなくて・・・

 

 親の愛情がないまま・・・

 育ったんだ。


 親からの愛情を受けず、愛情をそそぐこともなくて・・・

 澤田が、なっちゃんにとっての救いだったんだ。


 全てだったんだ。


 そんな彼女を亡くしたなっちゃんは

 変わったんだよ。」


「大宮も知ってるだろ?

 蒼くんの女生徒遊び。」


「うん。」


「蒼くんが遊ぶ女生徒はさ・・・

 みんな、茶髪で巻き髪だんだよ。」




そういえば・・・


先生にひっつく子たちは皆・・・


茶髪で、化粧もしてて


ウエーブがかかった・・・


着飾った、人たちばかり。





「澤田と正反対の女生徒ばかり。

 んでもって、上っ面しか見てないような・・・


 あとくされもない、めんどくさくない女。


 つまり、なっちゃんは心に澤田を思いながら

 行き場のない感情を

 そいつらで埋めてるんだよ。


 澤田と正反対の相手を選ぶことによって

 遊び相手にすることによって

 

 なっちゃんは、澤田への罪の意識をもって

 自分を苦しめて・・・罰を与えて・・・


 好きになる相手を作らず、

 幸せになってはいけないと思ってる。」



「だけど、俺たちは思うんだ。

 蒼くんは解放されていい。


 幸せになって良い。って」




「そんなときに現れたのは、大宮ちゃんなんだよ。」



「わた・・・し?」



「そう。

 なるちゃん、大宮ちゃんに会ってから

 すごく、楽しそうに笑うんだ。


 心から、すごく・・・幸せそうに。


 なるちゃん、気づいてたと思う。

 自分の変化に。


 きっと、自分の中で葛藤してたと思う。

 凛ちゃんへの思いと大宮ちゃんへの思い。

 そして、罪の意識・・・」




「解放してやれんのは、はるのだけなんじゃねぇの?」




「わたし・・・だけ?」





力強く頷く和兄。



私は、最後の涙を流した





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