会長の思考
「会長はなっちゃんの事が好きなんですよね?」
最近お気に入りの後輩を映画に連れ出し、楽しい時間を過ごしていた。
そんな俺の目の前で、真面目な顔で後輩はよく分からない事を言い出した。
この後輩、瑞希とは2か月程前に出会った。
放課後に保健の授業をしていた(未遂)のを見られたのがきっかけだ。
いやこの言い方、自分でもどうかと思うが…
保健室の先生、夏目先生はなかなか綺麗な顔をしていて生徒に人気らしい。
でも、俺のタイプじゃない。というか俺と同じ匂いがするから嫌だ。
人のよさそうな顔をして、全然良い先生ではないと断言できる。
そんな先生に、本心が分からないような顔で迫られ、まぁいいかという軽い気持ちで俺も遊び相手になろうとした。俺もお年頃だし?
まぁつまり俺は最低な男だったのかもしれない。
しかし、急に先生に呼び出しがかかりお預け状態。
先生が保健室からいなくなった後、先生と二人きりだと思っていたそこに瑞希がいた。
あー、ベットにはカーテンが引いてあって気づかなかったと、ちゃんと周りを見ていなかったことに後悔した。
ぐぅ~という音で俺に見つかってしまった瑞希は、熱があるのか顔が赤かった。
いや、今のお腹の音が恥ずかしいのか?
お腹を押さえて顔を真っ赤にした瑞希は、目に見えて慌てていた。
「見てた?」と聞くと、真っ赤だった顔がどんどん青くなっていく。
その驚いた顔が面白くて、かわいかった。
その後、逃げるようにして出ていった瑞希を生徒会に無理やり引き込み今に至る。
瑞希は思った以上に面白い奴だった。からかえば、律儀に反応を返してくれる。
何を考えているのか表情にすぐ出るところを本人は気付いてないのだろう。
その顔を見ているだけで面白い。幼馴染の馨も瑞希の事は気に入っているようだ。
俺と同じ気持ちでの気に入っているなら許さないけど。
そんな瑞希は、時々思考が理解できないときがある。まぁ面白いからいいのだが。
瑞希には、保健室での事は先生に迫られて仕方なく―なんて説明したけれど、伝わっていなかったようだ。
「会長はなっちゃんの事が好きなんですよね?」なんて聞いてきた。
なっちゃんとは夏目先生の事だよな。普段の俺を見てたら、遊びで相手をしていた事なんか分かりそうだが。いや、自分で言ってて悲しいな。
瑞希のその言葉に「なんでそう思う?」と聞いてみた。
「なんでって…だってあんな場面見てしまったし。会長は、なっちゃんに迫られてなんていってたけど、もしかして本気で好きなのを誤魔化すために言ったのかなって。それに、なっちゃんと会長、会長の性格はどうかと思いますが、お似合いですし。」
私、応援します!なんて言ってくる。
そりゃ、あんな場面見られたんだからしょうがないけど、今まで結構分かりやすく瑞希に好意を伝えてたんだけどなー。
瑞希には全く伝わっていなかったらしい。ちょっとへこむ。
まぁ今まで適当にやってきたことのバツだと思って、この鈍感な後輩を相手に頑張ろう。