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神葬具 †AVENGE WEAPON†  作者: 神楽友一@今日も遅執筆
2章【絶対零度蒼炎の担い手~the blue flame performer~】
19/44

18『パフェスプーンは凶器』

 【小波 楓SIDE】

 神葬具の解放は使用者に膨大な体力、精神力を要求する。その代わり、通常の神葬具とは桁違いの力量を引き出す事が可能。諸刃の剣とは正にこの事。

 授業中に教師から呆れられるほど爆睡して、やっと頭が働くようになった。

 元々攻撃力が無いあたしの脚鎧の神葬具は、戦闘時に確実と言って良い程、解放の使用を迫られる。戦闘=解放なんて図が出来上がったら、流石に身が持たない。

 解放した事に加え、近接格闘へ持ち込む運動があるから尚更。

 疲労除去の為には睡眠と食事が一番効果的なのだが、こんな事を繰り返していたら確実に生活リズムが狂うこと請け合い。


「楓、大丈夫?」


 午後のみの授業が無事終了し、軽食を買いに学内食堂へ向かう途中、隣を付き添う友人から心配そうな声を掛けられた。

 先程から何度も同じ質問をされていて、どうしたらこの友人は納得するのか、と方法に悩む。灯火は心配性過ぎなのよね。解放して疲れ果てるなんて毎度の事なのに。


「大丈夫よ。ちゃんと授業中に寝れたし、体の調子だって戻って来たし」

「その治り始めが一番大事なんだから。あんまり、無茶な運動はダメだよ?それと、寝るなとは言わないからせめて先生に見えないように隠れて寝てね……?」


 教科書で顔を隠そうにも、寝ている間に教科書が倒れて結局丸見え。だったら下手に隠すよりも潔く睡眠摂取していた方が先生も諦めがつくんじゃなかろうか。

 それと、灯火は神葬具使いよりも看護婦とかの介護系の職業が向いてると思う。気遣い上手だし、手当てが上手いし。きっと男子とかは、灯火みたいな子が好みって人が多いんだろう。あのバカレッヂも絶対にその部類でしょ。別にアイツの好みなんてどうでも良いんだけど……。


「でも、こんな時間に食べて、夕ご飯食べれる?」


 確かに灯火の言う通り、微妙な時間。我慢しようと思えば出来るけど、解放のせいか普段より空腹感が強い。出来れば、小さい物でも口に入れて置きたい気分。じゃないと、正直夜まで持たない。主にあたしの堪忍袋が。

 それにしても、灯火もあたし達と一緒に戦っていたのに、こんなにも疲労度に差が出ている。わかってはいたけど、後衛と前衛でここまで消耗率が違うと、不満を漏らしたくもなる。こちらは体を激しく動かす分、体力の減りが著しい。後衛はと言えば、限界まで集中力を引き絞るから精神力を主として使う。結局、どちらも使用者次第って事か。


「サンドウィッチ摘まむくらいだし、全然平気よ」

「前のダンジョン授業の後はそう言っておにぎり3個食べてたよね……晩御飯半分は残してたし」

「こ、今回は平気よ!大丈夫、ちゃんと食べても2切れにしておくから!サンドウィッチはお腹に貯まらないから!」


 おにぎりよりサンドウィッチの方が消化が早い。きっと夕食までには消化が完了している筈。いや、量を考慮したら、いっその事うどん一杯の方が効率良いかも。

 食べる物を記憶の中にある学内食堂レパートリーから検索していると、聞き覚えのある声が食堂内から聞こえて来た。何でアイツは授業に出てなかった癖にあたしの行く先にはいるのか。


「あれ、白かな?」


 レッヂがいる事に驚いている灯火を置いて、学内食堂に突き進む。

 文句を言おうにも、レッヂ本人が学内で見付からなかったし、丁度良い機会。深夜の戦闘の時に突然いなくなった事に対しての文句を、ここで晴らしてやる。



 ◆ ◆

「お前等知り合いだったのな」


 どうやら舞佳の話を聞く限り、エリーゼとは深夜の戦闘中に偶然会ってたみたいだ。

 舞佳達が天人の集団を闘技場に誘い込み、苦戦している最中に、中位の天人を蒼炎で跡形もなく焼失させ、放火魔の犯行後のように去って行ったらしい。

 エリーゼの神葬具は印象に残るしな。俺みたいな銃器ならまだしも、普通の神葬具でここまで特徴があるのも珍しい。能力で狼と猫をこしらえたり、刀の形状にして敵に斬り掛かったり。中位の天人と刷り込みしたからこその能力。

 それと舞佳は、やっぱりこいつの知り合いか、みたいな視線を止めろ。わりと傷付くから。


「白様白様、はい、あ~ん」


 お前は空気を読め。パフェを掬い上げたスプーンをこっちに寄越すな。

 折角授業をサボってまで学内の食堂で静かに飯を食そうと画策したのに台無し。眠気は抑えられても苛立ちは限界があると知れ。

 コーヒーを啜りながらの俺の拒否にむくれながら、頭の上に陣取っているケルビンにパフェを与えるエリーゼ。動物に甘い物はダメだろ常識的に。糖尿病にもなるし――ってこいつ等にそんな心配は野暮か。きっと腐った肉とか与えてもピンピンしてる。


『姫しゃま、甘いでしゅ~』

「良かったわねケルビン。……わたくしも白様にして頂けたらどんなに良いか……ぶつぶつ」

『お嬢様ッ。腕をし、絞めるのは苦しいでござる…ッ』


 秘儀、聞こえない振り。

 夜に集まる食堂より、一回り小さな学食堂は、放課後になったばかりなこともあって、俺達以外空席のみ。思いの外、ここが小さな造りなのは、弁当を学内に持ち込む生徒が多いせいだろう。朝食、昼食は、夕食時と違い自己出費だし、食堂よりも弁当を持参した方が安値で済む。

 国の援助も変だよな。何で学費免除で飯を補助する癖して朝、昼飯は省くのか。


「ってか舞佳、お前ぼろぼろだな。解放したのか?」


 腕や脚に包帯を巻いて、頭にも何時ものカチューシャ代わりに包帯を巻き付けている。少しばかり赤く染まった血の痕が痛々しい。神葬具に回復系の能力があれば良いのだが、天人に対抗出来ているだけでも贅沢な物言いか。

 俺達と別の場所で戦っていたのもあって、被害の大きさは窺えない。舞佳だけが神葬具の制御を誤って傷を負ったのかも知れないし。

 ただまぁ、緊急時に闘技場という囲み込める場所にまで誘い出した作戦は見事。案を閃いたのはこの手の事態に慣れている3年生だろう。突然出現陣が町のど真ん中に出現しても可笑しくないのが現状だしな。臨機応変な態度は必要不可欠。


「いや……してねぇけど、双剣の方が言う事聞かなくてな。振り回されてる時に、ちと攻撃貰ったりした。掠り傷ばっかだから、そんなに痛くねぇけど」


 本人が言うならこれ以上の追求は止めておこう。舞佳も双剣を使いこなせない事に不安を抱いているようだし、余り深追いすると追い込みに成りかねない。距離感が大切だ。楓とかエリーゼなんかは気にせず土足で押し入るだろうが。

 教室に戻るのも面倒になったようで、舞佳は担任の願いそっちのけで購入したメロンパンを貪っている。哀れな教師は、生徒の残っている微妙な空気の教室で、舞佳とエリーゼの到着を待っているに違いない。舞佳の性格知っていて本気で頼み事をしたなら狂気の沙汰だな。

 未だに不満を呟き続けているエリーゼを無視してコーヒーを飲み干そうとすると、


「レッヂ、アンタ今までどこ行ってたのよ!」


 金髪が文句と共にやって来た。あぁ、更に俺の休息現場が崩壊していく。もう確実に休めない。放課後に突入したんだからこういう可能性も想定出来たのに、何故場所を移さなかったのか。起こった物は仕方ないが悔いは残る。

 きっと楓が言った「今まで」というのは戦いの後の消息か。確かにエリーゼの事で手一杯だったしな。

 場に金髪が二人いるという緊急事態。にも関わらず落ち着いていられるのはマスコット舞佳と癒し系灯火がいるお陰だ。さっさとこの場を捨てて逃げ出したい気分は変化無しだが。


「ちょっと貴女、白様を馴れ馴れしく呼ぶのはお止めなさい」


 席から立ち上がり、憤りを隠せない様子の楓と対面するエリーゼ。同じ金髪でも並んでみると全然違うな。楓が正統派の金髪で、エリーゼがプラチナブロンド。ややこしい金髪事情は止めてくれ。混乱する奴が出て来る。主に俺とか。

 コーヒーだけに視線を向けていたいが、それだとエリーゼ対楓が本格的に勃発した際に割って入るのが遅れてしまうので、嫌々ながら振り返る。

 パフェスプーンを細剣(レイピア)のように楓へ向けるエリーゼ。傍目からだと可笑しな金髪達って題名を付けたくなる光景だ。直ぐに寮へ帰りたい。


「何よアンタ、あたしはレッヂに用があるの」

「白様を馴れ馴れしく呼ぶ事を止めなさい、と言ったのですわ」


 あぁ~、徹夜明けの身としては学内食堂に差し込む日差しがきついぜ。現実逃避で乗り切りたい。しかし目の前の金髪2人がそれを許してくれない。

 この学園に来てから面倒事としか遭遇してない俺が、平和展開の要求をするのは間違っているだろうか。癒しが欲しい。お色気も可としておこう。

少し遅れてしまいましたね

少しの間、バトル回はお休みです。

エリーゼが馴染むまで、このままの進行状態でいこうと思います

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