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三十話
温かな陽光に、暖簾が照らされる。
縁庵は客で賑わっていた。
携帯越しに新作スイーツを見せる天狗の男性。
女性を伴って、ココアをゆっくりと飲む河童の青年。
獏の女性の前でうっとりとしながら恋する男性のことを語る狸の少女。
そんな彼女に隣に座られている青年が苦笑いをしているのを、剃髪の老人が微笑ましく見つめている。
カウンターでふんわりとした狐がくわぁ、と欠伸をした。
神饌を食べ終え、満足したようだ。
カラ……
店の戸が開く。
新しい客だ。
品格のある抹茶とコーヒーの香りが漂い、心を和ませる。
鬼の店主と人間の店員が、同時に挨拶をする。
「いらっしゃいませ、ようこそ。縁庵へ」




