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二十七話

次の瞬間、窓から生暖かい風が飛び出してきた。

一瞬、大勢の人が組み合わさったかのような塊が見えたが、大志は目を開けられず顔を覆った。


「う……っ」


だが閃光がカッと走り、重苦しい空気が消えていった。

再び目を開けると大志は驚いた。

複数の人間が混ざり合った、どす黒い塊。

その前に織部と金色に輝く狐がいた。

狐は大志の知るそれよりも大きく、大型犬よりも一回りある体躯をしていた。

大志にはそれが自分がよく知るコンの本来の姿だとわかった。

そして、そのコンの側にいる織部。

彼の右手は青い炎が燃え、額からは鋭い角が生えていた。

その姿に、大志は思わず声を漏らした。


「鬼……?」


大志の言葉に、織部はいつもの調子で返す。


「うん。俺、鬼なんだ。だから祓えるんだよ」


そう言いながら、首元に飛んできた塊の手を払った。

その手は青い炎に燃やされ灰も残さずに消えていった。


「詳しい話は後にせい。行くぞ」

「はい」


コンに従うように、織部は吹き溜まりの攻撃を避けていく。

彼らの狙いである愛助をその背に庇って。

愛助はただ目を閉じて経を唱えている。

彼は今まで、こうして孤独に耐えてきたのだろう。


(何も出来なくても、寄り添うって、そう決めたんだ)


自分だけ何も出来ないことに嫌悪しながらも、大志は自分の言葉を思い出す。

そして自分の意志に従い、彼もまた愛助の前に立った。

今度は目を背けない。

この戦いの行く末を最後まで見届ける。そう決めたのだ。


「あともう少しだ! さすればわしが焼き尽くす!」

「わかりました! お頼みします!」


残像を残して悪霊を薙ぎ払うと、コンは織部の背を登った。

織部の体を踏み台に吹き溜まりへと飛び掛かると、口を大きく開けた。

瞬間、辺りを緋色の炎が包んだ。

熱さはない。

代わりに全てが浄化されるような、晴れやかな心になる炎だった。

視界が戻り辺りが確認できる。

もう、重い空気はない。

吹き溜まりがいなくなったのだ。


「終わった、のか」


長年の悪夢が消えたことに驚愕しているのか、愛助はそう呟いた。

腕も額も通常に戻った織部は、サムズアップをして彼に笑った。


「はい。もう大丈夫ですよ」

「……そう、なのか」


普段は表情の変わらない愛助の顔。

それが穏やかに、柔らかく笑った。

まるで本当に憑きものが落ちた、ようだった。


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