二十四話
「なあ、お主はこれからどうしたい?」
コンは淡々と愛助に尋ねた。
「わしは『どんな仕打ちを受けたとしても尊属を恨むな』など甘ったれたことは言わぬ。アレを吹き溜まりの者ごと調伏することも可能だ。さすればお主とアレの縁も切れるだろう。まあ、だがだいぶ魂を食われておるからな、人としての生は望めないだろう」
つまり、完全に除霊するつもりなら、生霊を飛ばしていた愛助の父の命はないという事だ。
愛助はしばらく黙って、答えた。
「俺一人で、抱えていきます」
小さく乾いた声だった。
「俺のせいでああなったんです。だから何もしなくて構いません。一生、アイツを背負っていきます」
「油断すれば連れていかれるぞ」
「その時は……その時です」
ドクン。
心臓が鳴る。
愛助の姿が大志の母親に重なった。
病にかかったことを息子に黙って、最期は末期になって亡くなった、母親が。
「ふざけんなよ……っ」
大志は気づけば二人の前に出ていた。
なりふりなど構ってられなかった。
「愛助さんっ。俺は、霊とかに対してなにか出来るわけじゃねえ。アンタの話聞いたって、解決出来ることなんて一つもねえ。でもなあ! そんなこと出来なくたって、アンタの苦しみを一緒に背負う事くらいは出来るじゃねえか!」
いつの間にか大志の瞳からはボロボロと涙が溢れていた。
「だから、一人でいなくなるなんて……そんな選択肢選ばないで下さいよ……」
そういって、深々と頭を下げる。
昔彼にそうしたように。
沈黙が流れる。
ぽん、と肩に手を置かれる。
「……ありがとう、柿花。俺を想ってくれるやつがいるなんて、考えもしなかった」
顔をあげると、愛助の顔があった。
彼の顔は先程より穏やかに見えた。
コンはふん、と鼻を鳴らして大志を叱る。
「小童がでしゃばりよって。お前が出ずともわしがなんとかする予定であったわ」
「え? そ、そうだったんすか?」
「ああ、順鶴にも言われたからの」
「……和尚が」
コンの言葉に、愛助の目に光が宿る。
そしてコンは伸びをすると、くわ、と欠伸をする。
「で、改めて聞こう愛助。父親の生霊をどうしたい?」
しばらく黙ってから愛助は答えた。
「……吹き溜まりの悪霊を調伏したいです。そうすればアイツは一人になるでしょう? もう、何も出来ませんよ」
「ふむ……妥当じゃな」
コンはこくんと頷く。
そして前足を上げていった。
「では、作戦はこうじゃ。生霊を呼んで、わしらが悪霊を取り除く。それでいいの?」
コンの言葉に大志は引っかかる。
「わしら、って、他に霊をなんとかできる人がいるんですか?」
「まあ、愛助にも手伝ってもらうがの……みどりにも来てもらうぞ?」
「オーナーに? な、なんで?」
「お主知らんのか……ま、よいわ。当日見ればわかる故な」
そう言って縁庵に向かうコンの背を大志は追うしかなかった。




