十八話
ジュースを一口すするほどの沈黙が流れる。
「愛助さんには注意するように言ったんだよな?」
「ああ。勿論」
「そうか……なら、気を付けるくらいしか出来ることはないね」
結局解決策を見つけられなかった。
まだ、赤星がこちらに危害を加えるという証拠も、事実もないのだ。
自分達が気を配るしか出来ないだろう。
「ま、安心しなって。コン様の力もあるし、俺も結構力強いから」
「まあ……コン様は神様だからわかるけど」
「うん。だからさ、オーナーの俺に任せとけって」
そういうと、屈託なく織部は笑う。
いつもの彼の笑顔だ。
「そうだ。不公平だし、俺の過去も教えるよ」
「別にいいのに」
「いいからいいから」
そして改まって座ると、織部は言う。
「俺はここから離れた田舎の山の中で産まれたんだ。コン様もそこにいた」
「へえ。一緒に暮らしてたんだ」
「うん。俺の一族が管理してた神様だからさ」
織部は暫く笑みを浮かべていたが、ふと、目を伏せる。
「でさ……ちょっと災害があって、そこで暮らせなくなって、で、都会に来たんだ。コン様も一緒に」
「大変だったな」
「立て直すまでは結構苦労したなあ……」
「でもそんな男が今や喫茶店のオーナーだぜ? すごいじゃねえか」
大志の言葉に、織部は目を見開いた。
彼の人懐っこい瞳が細められいつもより柔らかく笑う。
「……ありがと」
「こちらこそだよ。アンタのおかげで、俺は救われたんだ。ここに来たお陰で笑顔になったお客さんだっている。立派だよ。オーナーは」
もう、大志には不安はなかった。
代わりに彼にあるのは、この場所を誰にも傷つけさせないという決意だ。
「一緒に守っていこう。縁庵を」
「うん。そうだな」
そう言って二人で紙コップを傾けた。




